窓とカーテン

怖い体験談? 馬鹿らしい。


窓くんは相変わらずだね。

コソコソ……。(ごめんね。窓くんは乗り気じゃないみたい。まぁ、僕に任せてよ)


コソコソするな。大体カーテンはいつもそうだ。フワフワ、ユラユラ、だらしない。私みたいにピシッとせんか! あの時だって……。


あれは恐ろしくて、僕には話せそうにないや。

あ、そーだ! ここには、あの話を教えてくれた本人がいたんだったよ!


いや、それは、えっとだな……。


わぁ、ありがとう、窓くん! さすが!!


し、したたか、したかた……。仕方がないなぁ!!


よっ、男前!


うるさいなぁ、カーテンは。言われなくてもわかっとるさ。やれやれ。

あ、あれは、満月の夜のことだった。家の中が静かになったというのに、外は、唸るバイクや車の音で、今夜も騒がしかった。

ああ、この街ときたら、いつもこうだ。全く連中は……。


話が脱線していない? まさか、怖くてーー。


おっほん! 今日はカーテンがよく揺れる。風が強いようだ。

ハハハ、すまないな。どこまで話したか忘……。


『今夜も騒がしかった』んだよね?


あー……。

その通り。

えっとだな。

それでだ。

私は次の瞬間、ピタリとその騒音が消えたことに気がついた。蚊の羽音すら、聞こえない。代わりに、月の青白さが増して、不気味に外を照らしていた。

すると、向こう側から、月と同じように青白い肌の女がやってくるではないか。真っ赤なハイヒールを、コツコツと響かせながら。まるで、剥き出しの心臓を見ているかのような気がした。血のような色と、一定に刻まれるリズムのせいだろう。

女は、あろうことか、私の前で、ピタリと足を止めた。静寂の中、月明かりに照らされた女の顔を、私は見た。そこには……。

刃物のように鋭い目があった。


窓くんの悲鳴で、僕は飛び起きたんだよ。でも、何にもないんだよね。


いや、でも確かに私は見たぞ! カーテンが揺れた瞬間、外にいたはずの女が消えて、部屋の奥に立って居たのを!


ーーって、いう夢ね。


おい、オチを言うな! 『 妙にリアルで怖かったな。実は夢だったのだよ』と言う為だけに、ここまで我慢したんだ!


へぇ、我慢?


え、あ、いや……。そうではなくてな。とにかく! あんなの、二度と……。


え、待ってーー静かにして!


どうした?


聞こえる。


え?


家の中から。


は?


ーーが。


























“コツコツ、コツコツ”


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る