第5話 ツリーランド秘密のパーティ その5
「与一先輩お願いします」
「お願いの時だけ先輩かよ、しかし二百何十キロ浮かぶのか」
「与一君の分、引かなきゃ、それに今日は船をガスで膨らませているから、一人分くらい浮力が有るから、正味三人よ、ガンバレ与一」
「ちっ今度は呼び捨てか、行くぞいさよ」
与一君が右腕を下から上に振り上げる、風が巻き上がり船が十センチくらい浮き上がる、それで十分。
「フタギ、ハーフパワー」
船の最後尾で背を支柱に固定し真後ろを向いている私。
風使いの
じゃなくて、スピードに乗ったところで一気に上昇そのまま円弧を描いて大きく上方にターン、後転で一回転して与一君の手前で体を正面に向け、逆噴射でスピードを落とす。
「黄昏さん、与一君を引っ張り上げて」
最前列にいる黄昏さんが舟から身を乗り出し、与一君の腕を掴む。
「影、黄昏さんごと与一君を引き上げて」
「か弱い私にそんな事できる筈ないでしょ」
などと言いながら黄昏さんの肩をむんずと掴み「とりゃー」掛け声一発、与一君が舟に飛び込んできた。
「もっとそっと飛び込んで来なさいよ」私が言うと、
「俺のせいじゃない、まるでカツオの一本釣り、いえ何でも御座いません」
「伊佐宵、落ちてしまいます!」
ヒカルが慌てて言う。
「そうだった」
後ろを向き「フタギハイパワー」
低空だったので草や木をなぎ倒し舟は水平に進む、体を前に倒すと舟の前方が上がり急上昇。
「ハアハア、パワーを落として、フー」
300mを全力疾走をしたような息使い、これだけの風を起こすと体力が消耗する。
「伊佐宵」ヒカルが私の背中に手を当てる。背中がジーンと痺れるが一気に体がシャンとする。
ヒカルが体力をわたしに与えてくれたのだ、代わりにヒカルが疲れた顔になる。
「ごめん、油断した、夕日とマイナスイオンどちらがいいの」
「夕日で御座います」
「太陽の子だもんね」
夕日が当たる高さで飛行を続ける。
それ以外にも空気中の電荷(+や-の電気)、静電気、地磁気などもエネルギーとして体に取り込むことが出来るとても便利な子。
ただしこの妖しい力、私の傍に居ないと発揮できないらしい、そして溜め込んだエネルギーは私が頂く、何とも申し訳ない限りだ。
と感謝していたら突然辺りが暗くなった。
(天気の急変?それにしては雲に気付かなかったけど)
空舟 ツリーランドの秘密のパーティ 一葉(いちよう) @Ichi-you
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