第26話 雲のベッド

「お疲れ様です。

金曜は山田さんと会う予定だったの?

連絡入りました。池袋の東口に10時待ち合わせです」

「わかりました。ありがとうございます」


改札を抜けると、すぐに山田がいた。

「すみません、お待たせしましたか?」

「いえ、大丈夫です。行きましょう」

「山田さん、髪切りました?素敵」

「あ、はい…」照れくさそうに笑う。


「今日はどこに行くんですか?」

「プラネタリウムです」

「わぁ、嬉しい!プラネタリウム好きです」

「良かった。花さんと夜空を見ることは出来ないから…擬似的に…」

「そうですね。楽しみ」


プラネタリウムの中に入る二人。

雲のベッドのようなシートに座る。

「すごい!こんな席があるんですね」

「はは…」誤魔化すように笑う山田。

星が輝き、隣にいる花の体温を感じる。

山田、意を決して、花の手を握る。

すると、花が指を絡めて握り返してきた。

アドレナリンが溢れ出す。

もう、星など見ていない。

花から目が逸らせない。

花と目が合う。

ゆっくりと唇を重ねる。


電話をする山田

「急にすみません

今から伺ってもいいですか?」

「はい、ありがとうございます」

ワンフロアの開けた明るいオフィス。

元上司の佐藤がやってくる。

「おぅ、久しぶり」

「今日は急にすみません」

「いや、いつでもかまわんよ」

「なんか、うちの会社とは雰囲気全然違いますね」

「あぁ、イマドキだろ?」

「みんな元気にしてるか?」

「それが…」


上司が辞めた日

「黒田がマネージャー!?マジかよ!」

「ありえねー」

「じゃあ今から昇進祝いしてもらおっかな」

「はぁ?」

「まじありえねー」

「じゃ、おつかれ!」

「おつかれさまー」

「え?」

黒田を残し、全員帰って行く。

一人残される黒田。

ドアが開き、山田が戻ってくる。

「あ、黒田くん、昇進だね。おめでとう」

「うるせーよ」

吐き捨てるように言い、出ていく黒田。


「黒田くん、来なくなっちゃって…」

「そうか…あいつには本当の人望を築いて欲しかったんだけどな…」

「おまたせ」

「おっ、オレの友人でここの代表だ」

「は、はじめまして、山田です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る