第22話開花

待ち合わせ場所に戻る車。

「寝てしまってすみませんでした…」

「いえ、山田さんとゆっくりした時間が過ごせて良かったです」

「ぼ、僕も良かったです。花さんと過ごせて」

車から降りる山田。

「じゃあ、また」手を振る。

やっぱり角を曲がるまで見送る。

そして

やっぱり、帰れない。


夜、風呂上がりに庭に出る花。

月を見上げ、涼んでいる。

「あ、咲いてる」

芍薬がほころんでいる。

芍薬を摘んで、花瓶に生ける。

部屋中に甘い香りが立ち込める。


翌朝

偶然見つけた小さな貝殻をポケットから出す

「夢じゃなかった」

いつもの仕事風景

突然、上司に呼び出される。

会社の屋上で上司と二人きり。

「お前、会社やめろ」

「えっ、なんでですか?」

ゆ、有給とったからですか?」

「ここで働いてて楽しいか?」

「…楽しくはないですけど…仕事ってそんなもんかなって」

「なに言ってんだよ若いのに。もっとギラギラしろよ!俺の同期が新しく事業を立ち上げる。お前、そこへ行け」

「え、なんで?なんでですか?」

「だから、ここに居たって周りに消費されるだけだろ!お前は仕事ができる。うまく使ってくれる会社に行ったほうがいい」

「あ、ありがとうございます」

「俺も近々辞めてそこへ行く」

「え!?」

「お前も後から来い。連絡する」

「誰にも言うなよ!」

「わ、分かりました」

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