第9話兄

ベッドに横たわる山田。

花のハンカチを顔に乗せる。

ドンドンとノックされ、慌ててハンカチを枕の下に隠す。

「は、はい」

弟のリツが顔を出す。

「おいっす。飯は食ったの?」

「あぁ、済ませてきた」

「じゃ、コレ」

缶ビールを差し出す。

「なんだよ…」

「いいじゃん、たまには」

椅子にまたがり、缶ビールを飲むリツ。

「で、さっきの何?」

「何って?」

山田もベッドに腰掛け、ビールを開ける。

「ハンカチだよ。誰の?借りたの?」

「誰でもいいだろ」

「彼女できたの?」

「違うよ!」

「じゃ、何なの?」

「何でもいいだろ」

「親父に言っちゃうよ」

「なんだよ!ほっとけよ!」

「ほっとけるわけないだろ!彼女いない歴

年齢の兄貴に女の影なんて」

「お、俺だってなぁ!あれ、あれだよ…」

「ん?」


「レンタルおばさん?」

「うん」

「おばさんなの?」

「花さんは違うよ!」

「若いの?」

「俺より少し上くらいかな…」

「ふーん、独身?」

「主婦…」

「人妻なの!?」

「うん…」

「ダメじゃん」

「べ、別に付き合う訳じゃないから…」

「うーん…そっかぁ。じゃあ

一回会わせてよ」

「な、なんでだよ!」

「オレもランチしたい」

「だからなんでだよ!」

「だって、オレ兄貴にそんな豪華なランチ連れてってもらったことないよ!」

「そ、そうだけど…」

「おにーちゃあん!」

腕にしがみつく。

「なんだよ、やめろよ!」

「おにいちゃあん!」

抱きつき、キスしようとする。

「わかった、わかったから!」

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