第8話弟

真っ暗なオフィスに山田が浮かび上がる。

深くため息をついて、つっぷす。

カバンを覗く。

花のハンカチが入っている。

取り出して、匂いを嗅ぐ。

傍らに置き、仕事をはじめる。


風呂上がり、ソファーでビールを飲む花。

すっぴんメガネ。

夫がやってきて、ソファーに横たわり

花の膝の上に足を乗せる。

花も反対に横たわり

夫の体の上に足を投げ出す。

お互いが足つぼマッサージをする。

二人、無言でテレビを見ながらマッサージ。

夫が痛がる。

花は、んふふーと笑いながら

さらに強く押す。


山田、自宅に帰る。

玄関を開けると

弟が階段に座って電話している。

「あっ、はいはい、ちょっと待って」

「ペンある?」

カバンを探り、ペンを渡す。

「サンキュ」

「いいよ、あー、はいはい、了解。じゃね」

「ありがと。おかえり」

「あぁ」

山田がペンをカバンに戻すときに、チラッと見えたものをつまみ上げる弟。

「これなに?」

ジップロックに入った花のハンカチだった。

「やめろよ!」

慌てて取り返し、カバンにしまう。

「だから、なにそれ?パンティ?」

「違うよ!」

「じゃあなに?まさか盗んだ?」

「そんなわけないだろ。ハンカチだよ。借りたものだよ!」

階段をかけあがり、自室に入る。

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