第7話蕾



午前10時シャンテ前

喪服姿で待つ山田。


山田を見つけ、一瞬立ち止まる。

花を見つけ、手を振っている。

「どなたかご不幸があったんですか?」

「あっ、いや、気にしないで下さい」

上着を脱ぎ、ネクタイをはずす。


座席に座り、映画泥棒のCM

花が山田寄りに座るので、距離が近い。

映画が始まり、ふと山田を見る。

汗がすごい…。

「大丈夫ですか?具合が悪いなら、外に出ますか?」

「あっ、いえ、大丈夫です…

は、ハンカチ忘れちゃったな…」

「これ使って下さい」とハンカチを差し出す

「いえ、それは…」

「大丈夫です。もう一枚ありますから」

「すみません、ありがとうございます」

ハンカチを受け取り、額の汗を押さえて

コッソリ匂いを嗅ぐ。

映画が進み、涙を拭う花。

それをじっと横目で見つめる。


映画が終わり、いつもの料亭へ。

「映画、素敵でしたね」

「気に入ってもらえて良かったです」

「いい映画を選んでくださって、ありがとうございます。なんか久しぶりにドキドキしちゃったなぁ」

「そ、そうですね…」

「そういえば、私、何も考えずに一緒に映画観たいなんて言っちゃったけど、山田さん、彼女がいたらまずかったかなって…」

「大丈夫です。いませんから」

「そうなんですか?山田さん、真面目そうだし優しい方なのに、もったいないですね」

「そ、そんなこと無いですよ…」

「山田さんは、結婚タイプですね。

山田さんと結婚した人は幸せになれそうな気がします。」

「いやぁ、どうなんだろ…?」

ふふっと笑って箸を運ぶ花。

やはり食べている姿から目が離せない。




「喪服のままで来るなよ」

「すみません、そのまま来たもんで」

「仕事、溜まってるよ~」

いつもの倍ほどの書類が

デスクに積まれている。


夕方、夕飯の支度を終えて庭へ

花を愛でる。

芍薬に蕾がついていた。


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