第4話レンタルの理由

「花さんは主婦…ですか?」

「そうです。専業主婦でした」

「どうしてレンタル…を?」

「前に、記事で読んだんです。

記者の方が実際に体験してレポートされていて。赤ちゃんがいるママの買い物に同行したり、公園に一緒に行ってサポートしたり。

そういうことなら私にも出来るし

役に立てるかなと思ったんです」

「へぇ…じゃあ、まさか僕みたいなのと食事するなんて、想定外でしたよね…」

「でも、そういう想定外も面白いと思うので

この仕事しようと思ったんです」

「ご主人は賛成されたんですか?」

「最初はやっぱりやめてって言われたんですけど、変な感じだったらすぐ辞めるからって…基本的に私の好きにさせてくれる人なんです」

「いいご主人なんですね」

ふふと照れくさそうに笑った。


「美味しかった

こんな豪華なランチはじめてかも」

「あ、もう時間ですね。行かなくちゃ」

「ごちそうさまでした。ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」

足早に出ていく山田を見送る。


仕事に戻り、作業を始めるが

なかなか集中できない山田。

花は初仕事が終わり

帰り道にリリーにLINEで報告する。

「終わりました。今から帰ります」


自宅で家事をこなす花。

一段落ついて、庭へ出て花に水をやる。

「あ、出てきた」

芍薬の芽が伸びはじめている。


終業間際、仕事が手につかなかった山田は

残業することにした。

みんなが帰った後

リリーにLINEを入れる。

「今日はありがとうございました。

来週も…」

まで打って、手が止まる。

「花さんにお願いしたいです」


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