第2話
「長治さんも祐造君が生まれた頃はまだまだ暴れてたのよ?」
噂好きの近所のおばさんに捕まったのは葬儀が終わり、来客も落ち着いた頃だった。
「はあ…そうなんですか」
初めての喪主としてのあいさつやら次から次へとくる弔問者の応対で疲れていたので抜けた返事を返すが、ふと気になって尋ねる。
「父は若い頃はどんな人だったんですか?」
「もう、手のつけられない暴れぶりでね…祐造君が生まれてからも頻繁におばさんが奥さんからあなたを預かってあやしていたのよ?」
「それは……ありがとうございます」
言われてみれば、確かに自分が幼児の時によくおばさんの家で過ごしていたな。
どうも実家に帰ってからは忘れていた記憶が思い出しやすくなっているらしい。
それにしても、この近所のおばさんが話す父の所業はゾッとするものばかりだ。
曰く、喧嘩相手を橋の上から突き落としただの、当時近所に住んでいたアル中を白昼堂々木刀で半殺しにしたあとにガソリンかけて火をつけようとしただの……。
息子である自分ですら背中が冷たくなってしまうほどに父は凶暴であった。
よく……そんな人間と一緒にいたな……母さんは。
「……だから、あまりにお父さんがひどいから一度お母さんはあなたを置いてパチンコ屋の店員と逃げたこともあるのよ?」
「えっ?」
「おい!お前それは…」
隣に居たおばさんの旦那さんが慌てて注意をするが、それを制止して俺は話を促す。
「おばさん……それは俺が何歳くらいの時ですか?」
「そ、そうね……あなたが三歳くらいのときかしら」
口が過ぎたのに気づいておばさんの舌が重くなるが、俺は居住まいを正し、
「おばさん…自分はもう子供ではないです。よかったら詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
話してくれるようお願いする。
「そこまで…言うのなら」
元来お喋り好きの彼女はそう言って自分が知っていることを事細かく、かつ臨場感たっぷりと話してくれた。
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