一杯の水
住宅街の中を、一人の若い僧が歩いている。その僧の名は、専信である。その両手には、買い物袋が携えられている。彼は今、師、照信から頼まれた買い出しからの帰りなのである。
「糞、あの爺さん自分が面倒だからっていっぺんに大量の買い物を頼みやがる。買いに行くこっちの身にもなってみろってんだ……。」
専信はぶつぶつと不満を口にしながら歩いている。
やがて専信は、疲れを覚えて公園に立ち寄った。
公園には、木製のベンチがある。専信はその方へと近づいていった。すると、そのベンチには既に先客がいた。十五、十六位の若い娘であった。肌は黒く日焼けしており、近くの高校の制服を着ている。彼女はぼんやりと空を眺めていた。
専信は気にせず、彼女の隣に腰を下ろした。専信はふぅと一息つき、それから隣の娘と同じように空を眺めた。
空は吸い込まれそうな深い青色をしている。その青色の中を、大きな白い雲が流れて行く。
落ち着いた専信は、ふと娘の事が気になった。このような平日の昼間から、彼女は一体何をしているのだろうか。学校はどうしたというのだろうか。
専信は娘に声を掛けた。
「お嬢さん、このような昼間から、何をされているのですか。学校はどうしたのです。」
「え、ああ。サボりよ、サボり。」
「それはいけませんね。ご両親や先生方に怒られますよ。」
「いいのよ、親なんて。どうせ何をやっても怒られるのだし……。」
そう言って彼女は遠い目をした。
「……何かお悩みで?」
「貴方、お坊さん?」
「そうですけど。」
「……いいわ、話してあげる。」
彼女の話によれば、彼女の父は時代遅れの人間であるらしい。彼女の父の主張は、即ち、女は女らしくなければいけないというものであるようだ。故に、彼女は履きたくもないスカートを履かされ、習いたくもないヴァイオリン等を習わされるのだという。一方彼女はその様な女らしさなど捨て、外で他の男達に混じって走り回りたい性質の様である。故に彼女と父は反目し合い、事あるごとにぶつかり合うのだという。
この様な対立を横目で見し彼女の母は、どちらかと言えば父の味方であり、父に口添えする事はあっても、自分の娘である彼女を助けるなどという事は一切ないようである。
また彼女には幾人か兄弟姉妹がいるようであるが、彼らは父を恐れているようで全く口を出したりなどしない。
彼女は完全に一人で、父に立ち向かっているようだ。
目下の悩みは、高校に入学し彼女が新しく陸上部に入ろうとした事を、父に止められたことであるようだ。
話終えると、娘は一つ溜息をついた。
「酷い家族でしょ。」
「ううむ。」
「どうすればいいと思う?」
「分からぬ。分からぬなあ。」
「まあ、そうでしょうね。」
彼女はまた溜息をついた。
「あーあ。もっと優しい親に生んで欲しかったなぁ。」
「もう少し、貴方の心も尊重してくれれば良いのですが……。」
専信もまた彼女に同調するように溜息をついた。
「……貴方、名前は?」
「あ、申しておりませんでしたな。専信と申します。専ら信じると書いて専信です。」
「私は篠原香澄よ。澄んだ香りと書いて香澄よ。」
名を名乗ると、彼女は立ち上がった。
「私、もう行くわ。貴方も早く帰らないと、その買い物袋の中身が腐るわよ。」
「あ、そうですね。私もそろそろ帰ります。」
そう言って専信も立ち上がった。
二人は公園の出口に向かって歩き出した。
「香澄さん、貴方はよくこの公園に来るのですか。」
「ええ。偶に、何かムカつくことがあったらね。」
「じゃあ、私も偶にここへ来てみましょう。少し話すだけでも、楽になるでしょう?」
「確かに、貴方に話して少し楽になった気がするわ。」
二人は公園の出口に着いた。
「それじゃあ。また会いましょう。」
「はい、また会いましょう。」
若き僧と若き娘は別れた。
しかし、三歩歩いて専信が気付いた。
「学校へは行くのですよ。」
篠原香澄は振り返らず、片手を振って専信に応えた。
爾来、専信は暇を見つけて公園に出向くようになった。すると、稀に篠原香澄と出会うのである。
大抵、ただ専信が彼女の悩みを聞き、それだけで二人は別れていった。何か、具体的な対策を講じるとか、そういう事は一切しない。ただ専信が話を聞き、娘が愚痴を零す、それだけであった。
しかし、その様な逢瀬を重ねていると、今度は専信の方が辛い思いをし始めた。目の前で娘が困っている。しかし、己はその娘に対して何かしてやることが出来ないでいる。そのようなもどかしさが、専信の身に染み入り始めた。
いつの間にか、専信も元気を失い始めた。
すると、そんな弟子の様子を見兼ねたのか、専信の師、照信が、彼と娘の話をどこからか聞きつけてきて、彼に直接娘の事を尋ねるという事があった。
専信が照信の寝室の掃除をしていると、照信がやって来て、言った。
「おい、専信よ。近頃世俗の娘と交わっているそうではないか。」
「は、師匠。修行中の身でありながら申し訳ありません。」
「いや謝らずともよい。そんな事より、その娘は可愛いのか。」
「は?」
「その娘は可愛いのかと聞いておるのじゃ。」
「はあ、可愛いと申せば可愛いと思いまするが……。む、師匠、何を聞いているのですか。」
「いや真面目なお前にも、遂にそういう時期が来たのかと思っての。」
「師匠、私を馬鹿にしないで下さい。私は師匠の様に何でもかんでもそういう事に結び付ける様な、浮ついた心は持ち合わしておりません。」
「はっはっは、そうかそうか。それで、その娘は何を抱えておるのかの。」
照信は急に真面目な顔になった。
「は、それが――。」
専信は娘の身の上を、ありのまま照信に話した。
すると照信は神妙な顔つきをして、言った。
「わしはその娘の父を悪と断ずることは出来ぬ。その父にも、その父の言い分があろう。娘に女らしさを押し付けるというのも、わしは理解できる。その女らしさというのは、父の理想なのであろう。だが、やはり娘が苦しむという事も当然理解できる。ううむ、やるせなき事よのう……。」
照信は言い終えると、天井を見上げて何かを考え始めた。専信は黙って、師が何か言うのをじっと待った。
やがて、照信が口を開く。
「専信よ、少し待っておれ。」
そう言って、照信は何処かに行ったかと思うと、また直ぐに戻って来た。
照信はお盆の上にコップを一つ置き、それを運んで来た。
「おい専信よ、これを持て。」
「はい。」
専信はお盆を受け取った。お盆は黒塗りのもので、その表には一羽の鶴が描かれている。そのお盆の上に乗せられた一つのコップは、ガラス製の、無色透明なコップである。その中身は空である。
「よいか、専信よ。この寺の裏に池があろう。あの滝が注ぐ池じゃ。お前はその池に行き、手桶を使ってそのコップを池の水で一杯にせよ。水の量は、このコップの縁より水面が上に来るようにせよ。表面張力というやつで縁を超えても、水面が丸くなって水が零れるという事はないじゃろ。コップから水面が出るようにするのじゃ。そしてそれから、わしの元に来い。そして、水で一杯になったコップを、わしの前に差し出せ。わかったね。」
「は、はぁ。」
照信は専信の元から去って行った。
専信は、一旦師から受け取った盆とコップを棚の上に置き、手早く師の寝室の掃除を済ませた。
それから彼は、盆の上にコップを乗せ、それを持って寺の裏に向かった。
寺の裏には少し小さな林があり、その中に照信が言いし件の池があった。寺からその池までは、三十メートル程の、短き道程である。
池に向かって一本の滝が注ぎ、轟轟と音を立てている。
専信は、池の近くの岩の上に、無造作に置かれた手桶を拾った。そして彼は、池の縁に立ち、一旦盆を地面に置き、右手に手桶を、左手にコップを持った。彼は池の縁にしゃがみ込み、邪魔な草花を手桶で払ってから、手桶で水をすくった。そしてその水を、コップの中へと注ぐ。直ぐにコップは一杯となった。専信は師に言われた通り、その水面がコップの縁を超える程に水を注いだ。
彼は手桶を地面に置き、水で一杯となったコップを盆の上に置いた。そして彼は、その盆を持ってゆっくりと立ち上がった。
しかし、その時の事である。立ち上がる振動でコップの水面が揺れ、コップから水が零れてしまった。すると、コップの中の水は僅かに減り、その水面はコップの内に入ってしまった。
専信は、ああやってしまったと思いながら、先の手順を繰り返し、また水の入ったコップを盆の上に置いた。そして今度は、出来るだけゆっくり盆を持ち上げた。今度は零れなかった。
所が、寺に帰るまでの短き道の間には、幾つもの小石が転がっており、平衡を保ったまま歩くのは至難の業であった。専信はそれでも諦めずに寺へと向かったが、案の定、彼は途中で少し体を傾けてしまった。また水が零れ、やり直しとなった。
その後専信は、何度も何度もこの過程を繰り返した。しかし、彼が幾ら慎重に、また幾ら穏やかに歩みを進ませようと、何れ彼は小石を踏み、泥濘に嵌り、草花に足を捕られ、そして水を零してしまった。むしろ、何度も失敗し、彼が心の平衡を失うにつれ、彼は体の平衡をも失ってしまった。
幾らやろうと寺まで辿りつけぬ。僅かな道程は、今の専信には、無限に長き道程であるように思われた。もし、寺まで辿りつこうとも、そこから更に照信がいる場所に至るまで、室内のあらゆる起伏が専信を襲うであろう。この盆を、水を零さずに照信の元へ運ぶのは、専信にとって不可能であるように思われた。
数日後の日曜日。
専信は未だ師から与えられた問題を解けずにいた。石をどけてみたり、またコップを盆に置かずにそのまま運んでみたりと様々な工夫を凝らそうと、溢れんばかりの水は、何処かでコップから零れてしまうのである。
専信は弱った。師が与えし問題にどのような意味があるのかもさっぱりわからない。このような事をしていようとも、娘を助ける事にもならないのに。
どうにも、池の前にいたのでは妙案は思いつきそうにない。昼、専信は街に出てみた。
ふらふらと歩いていると、やがて専信は娘と会いし公園の前に辿り着いた。
専信が公園の中を見ると、篠原香澄がベンチに一人で座っていた。専信は彼女の方へと歩いて行った。
娘が専信の顔を見る。
「あらお坊さん。今日は何だか貴方の方が暗いわね。どうしたの?」
「ううむ。それが……。」
専信は娘に師から与えられた難問の事を話した。
「ふーん。貴方のお師匠さん、難しい事を言うのね。」
「ええ。まあ何時もの事なんですけども。」
「……ねえ。私、貴方のお寺に行ってみていい?」
「それは構いませんが。」
「じゃあ、連れて行って。」
「え、今からですか。」
「そうよ。」
娘が立ち上がる。
「……分かりました。付いて来て下さい。」
専信は、自分の寺へと娘を連れて帰った。
寺に帰ると、専信はまず師の元へ娘を連れて行った。
照信は、茶の間でお茶をすすっていた。
「師匠、例の娘を連れて参りました。」
「ほぉ、そちらのお嬢さんがお前が言っていた娘か。」
娘は照信に軽く一礼した。
「ふむ、可愛い娘じゃの。それで、何か御用かな?」
「いえ別に用があると言うわけでは……。」
「ちょっと見に来ただけよ。」
「そうかそうか。まあ、何も無い所だが、ゆっくりしていきなさい。」
照信はまたお茶をすすり始めた。
香澄は専信に突っつき、小声で囁いた。
「ねえ、例の池は何処にあるの?」
「ああ、こっちです。」
専信は寺の裏の池へと、娘を案内した。
今日も、滝は涸れずに池に注いでいる。
「へえ、これが。で、お盆とコップは?」
「取ってきます。」
専信は走ってコップと盆を取りに行った。そして、それらを持って直ぐに戻って来た。
「これです。」
「……私、やってみてもいい?」
「え、貴方が?」
「ちょっとよ、ちょっと。」
そう言って娘は手桶を取ると、専信と同じようにコップに水を注いだ。
「この位?」
専信が娘の横からコップを覗く。
まだ、水面はコップの縁を超えていない。
「もう少しですね。」
「わかった。」
娘が水を加える。
「この位?」
水面はコップの縁を超え、丸くなっている。
「そうですね。」
娘はゆっくりと、盆の上にコップを戻した。
そして彼女は盆を持ち、ゆっくりと立ち上がった。
しかし、彼女が歩き始めた瞬間である。少しの揺れが加わり、コップから水が零れた。
「あー。」
「駄目でしたね。」
「こりゃ無理だわ。」
早々に彼女は諦めてしまった。娘はコップに残った水も池に捨ててしまった。
「うーん。貴方のお師匠さんはいじわるするような人じゃあないのよね。」
「え、ええまあそうだと思います。色欲には塗れておりますが、私を無駄に苦しめるような事はしない人だと思っております。」
「そうよねえ……。ねえ、もう一度お師匠さんが何と命じたか、教えてくれる?」
「分かりました。ええと、よいか、専信よ。お前は池に行き、手桶を使ってコップを水で一杯にせよ。水の量は、このコップの縁より水面が上に来るようにせよ。そしてそれから、水で一杯になったコップを、わしの前に差し出せ、とこの様な事を言っておりました。」
「成程……。」
娘は悩むかのように天を仰いだ。
そして一、二分経って娘が口を開いた。
「……そうだわ。専信、もう一つコップを持って来て。」
「はあ、分かりました。」
専信はまた走ってコップを取りに行った。そしてやはり直ぐに戻って来た。
専信は、娘に一つコップを差し出した。そのコップは、照信から専信が受け取ったものと同じ形をしている。
「これでいいですか。」
「いいわ。」
娘がコップを受け取り、先の盆の上に置いた。盆の上に、二つのコップが並んだ。
「いい、よく見ててね。」
そう言って、娘は手桶とコップを一つ取り、また先と同じようにコップの中へ水を注いだ。そして、そのコップを盆の上に置く。
「これで、コップは水で一杯になったわね。」
「ええ、はい。」
「それじゃあ……。」
娘は一杯になったコップをそろりと持ち上げた。そして彼女は、そのコップをもう一つのコップに向かって傾けた。もう一つのコップに水が注がれた。
「これ位でいいかな。」
彼女は水を注ぐのを止め、持っているコップを盆の上に置いた。二つのコップに、それぞれ半分程の量の水が入っている。
「うーん、ちょっと零しちゃったかな。」
娘は手桶を取り、池で水をすくって、コップの一つに少し水を継ぎ足した。
「これでよし。」
盆の上に、三分の二程水が入ったコップと、半分程水が入ったコップが並んだ。
「さ、行くわよ。」
「……何処へ?」
「貴方のお師匠さんの所に決まっているじゃない。」
「はあ。」
娘は盆を専信に渡し、寺に向かって歩いていく。専信も後に続く。
今度は幾ら水面が揺れようと、コップから水が零れる気配は無かった。
歩きながら、専信が尋ねた。
「あの、一体何を。」
「あんた鈍感ね。まあその内わかるわ。」
やがて、二人は照信の前に立った。
「おお、どうしたのじゃ、二人とも。」
「専信、盆を彼の前に置いて。」
「はあ。」
専信は娘に言われるまま、盆を照信の前に置いた。
「ふむ、二杯のコップが並んでおるな。しかし、これでは満杯とは言えんな。」
娘が照信の前に進み出る。
「ようし、見てなさいよ。」
娘は片方のコップを持ち上げ、また片方のコップへと傾け水を注ぎなおした。ちょろちょろと音が鳴り、一つのコップが水で満たされていく。やがてそこには、その内の水面が、縁を超えしコップが現れた。
「これでいい?」
「よしよし、娘さん。お前さんは合格じゃ。」
照信は娘の頭を撫でた。娘は無邪気に喜んでいる。
一方、専信は呆然としていた。
「……おい専信よ。お前さんはまだ分からぬか。」
「……分かりませぬ。これで良いのですか?」
「これで良いのじゃ。別にわしは、どのように運んで来ようと駄目などとは言っておらぬじゃろ。」
「はあ、確かに。」
専信は狐につままれた様な気分であった。
「納得しておらんようじゃな。」
「はい、何だかずるをした様な気がします。」
「お前は真面目じゃな。では、お前はこの水を何と見る?」
「……ただの水かと。」
「ふむ、そうかの。では、ここ数日お前は何をしておった?」
「水を、運ぼうとしておりました。」
「一度も運べなかったな。」
「運べませんでした。」
「ならばその試みの最中、この水を憎たらしく思ったことは?」
「……ありました。この水がもう少し揺れに強ければ、師の元まで運べるのにと、考えておりました。」
「ではただの水ではなかろう。これはお主を苦しめた水じゃ。苦痛の水じゃ。」
「……。」
「だがの、専信よ。この水も、分ければ大したことは無かったろう。」
「……成程。分けよと申すのですね。」
「うむ。まあこれも一つの答えじゃ。彼のデカルトも難問は分割せよというような事を言っておられる。無理なものは無理なのじゃ。ならば逃げるもよし、分けるもよしじゃ。専信よ、お前の器はまだ一杯ではなかろう。少し貰った位が丁度良い。それにな、専信よ、お前がしている事はこういう事ではないのかね。」
専信はそれで合点がいった。彼の顔は、急に晴れやかになった。照信は専信を諭したのだ。それで良いのだと。
しかし、今度は娘が難しい顔をしていた。
「あのう、途中から何が何やら分からないのですが。」
「む、そうか。よいか、こういう事じゃ。」
そう言って照信は、池の水で一杯になったコップを手に取り、一息に水を飲み干した。
「あ、師匠。そのような水を飲んでは……。」
「良いのじゃ良いのじゃ。良いか娘よ、お主の水は、この暇な老人や、そこの元気な青年に注ぎなされ。」
そう言って照信は立ち上がり、何処かに行ってしまった。
後に残された娘は、未だ釈然としないようであった。専信に尋ねた。
「あれはどういう意味?」
「この寺に、何時でも来ていいということですよ。」
「はあ。」
娘は暫く首を傾げていたが、やがて日が傾くのを見て、元気に帰って行った。
「また来るね。」
そう専信に言い残して。
以来、娘はよく専信と照信がいる寺に、遊びに来るようになった。
やはり何をするという訳でもない。娘が愚痴を零す。専信がそれを聞く。そこへ偶に照信が二人の輪に入り、冗談を言って娘を笑わせた。照信の介入、変化したのはただそれだけであった。
しかし、このような生活は長くは続かず、思わぬ決着を見せた。
これまた何処から聞いたのか。香澄の父が、娘が寺に通っている事を知ったらしい。すると彼女の父は、このまま出家でもされたらたまらないと思ったようだ。父は彼女に陸上部に入る事を許した。
すると今度は、その練習で忙しくなる。寺に彼女はあまり来なくなった。
専信は少し寂しい思いをした。しかし、これで良かったのだと思った。
また彼は、苦痛の池が再び現れたら、もう一度、その水を少しでも掬うてやろう。もし現れなければ池が枯れたとみてそれもよしと、その様な泰然とした気持ちに至ることが出来た。
2016/10/17
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