第16片 見送り
友人と夜ご飯を共にしたことにより、彼と喧嘩したこともすっかり忘れていた。すっかりアルコールが入り、気分が良くなって帰宅したところで彼から電話がかかってきた。
「もしもし」
「もしもし。俺だけど」
「うん」
「この間のこと、謝りたくて。俺は夢を応援してもらったのに、お前の夢を喜ばないなんておかしいよな。ごめん。本当はすっげー応援してる。俺なんて英語喋れないから英語喋れるお前を凄く羨ましいと思うし、カナダでも頑張ってきてほしい」
「ありがとう」
「あと1ヶ月ちょっとしか一緒にいられねーけど、精一杯楽しもうぜ?」
「うん。そうしよう」
「それじゃあ、また大学で」
「うん、バイバイ」
こうして私たちは和解を果たし、これまで通りの「日常」を取り戻した。そして、冬休みに入り、クリスマスや正月を通り越していよいよ留学する日がやってきた。
空港には彼氏と友人ら何人かが見送りにやってきた。「本当に寂しいよ〜!電話してね!」と泣きながらアルバムを渡してくれる友人もいれば「いじめられたら俺に電話しろ!俺が締めてやる」なんて暴力的な発言をする友人もいた。私はそれぞれとハグを交わし、感謝の気持ちを伝えた。そして彼氏と最後に向き合った。
「今日は来てくれてありがとう」
「10ヶ月後、日本で会おうな」
「うん。それまでに絶対成長してくる。だから、日本で頑張って」
「ありがとう。……好きだよ」
彼はそう言って私に軽くキスをした。周りが囃し立てたが、私はそれに構っていられないくらい顔が真っ赤になった。
「じゃあな、気をつけて」
彼が私の背中を押した。私はそれに後押しされるようにして、スーツケースを引きながら搭乗口へと向かった。
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