第4片 登校

 翌日、化粧も終わりそろそろ大学へ行こうと思った頃にちょうどインターホンが鳴った。今日到着予定の荷物などあっただろうか?と考えながらインターホンのカメラを覗くと彼の姿があった。本当に迎えに来るとは思っておらず心臓が跳び跳ねた。


「おはよう」

『おはよう、驚いた?』

「うん。今行くからちょっと待ってて」

『んー』


私はすぐに鍵をかけてエレベーターに飛び乗った。

地上に着くとオートロックの向こう側にこちら側を向いて彼が立っているのが見えた。私が来たことに気づいたようだ。にやにや笑っているのがわかる。

「ほんとに来るなんて」

「覚えてろって言ったろ」

「私のこと好きすぎ」

「素直に嬉しいって言えばいいのに」

「ウレシー」

「そーゆーの求めてねえ」

二人でくすくす笑いながらマンションを出る。大学までは私の借家から徒歩7分程だ。彼は電車通学なため、駅から降りてやって来たのだろう。彼は以前、一度だけ私が忘れ物を取りに帰ったときに玄関前まで来たことがあった。今日は私が1限がある唯一の日であり、それが彼と重なっている。


大学の門をくぐり抜け、1限の教室に辿り着いたとき彼が「なあ」と声をかけてきた。

「どうしたの?」

「来週からもさ、金曜日迎えにいっても?」

「え?」

私は一瞬驚いた。金曜日とは今日のことだし、毎週金曜日の1限私を迎えにくるということになる。彼の恋愛遍歴を知る限り、尽くすのが苦手で彼女への関心が薄すぎて別れるパターンばかりだったからだ。

「あ、嫌ならいいんだけど」

慌てて顔を背ける彼に私はカラカラと笑い声をあげながら「嬉しい」と答えた。

彼は耳まで真っ赤にしながら「これは反則だろ」と一人ごちていた。

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