第7話 あっという間

「では、販売開始しまーす!」

その声とともにお客さんが列に並び始めた。


「いらっしゃいませ!」

「これと、これと、これください!」

「こちらが1点と、こちらが1点、こちらが

1点でお間違いないでしょうか?」

「はい。大丈夫です。」


指さされたものを後ろの箱から取り出し、

机の上に並べていく。


「650円が1点、500円が1点、800円が1点」

と会計をしていく。


トラベラーズのグッズ販売ではPOSと

呼ばれる機械を使って会計を行う。


バーコードを読み取ると金額を計算して

くれる便利な機械だ。


「合計1950円です!2000円ちょうだいしましたので、お返しは50円です!」


POSに貰った金額を入力すると、お釣りまで

表示してくれる優れものだ。


「グッズは不良品以外、返品や交換ができないのでご了承ください!ありがとうございました!」


これが一連の流れだ。


これをひたすら繰り返す。

グッズ販売開始が9時で、グッズ販売が

終わるのが、ライブが終演してお客さんが

はけるまで。


トラベラーズのライブは開演が18時、終演が21時予定だったので、グッズ販売時間は

短くて9時から21時。


こんなに長くグッズ販売が行われるもの

だなんて知らなかった。


この時に初めて気づいた。


バイトって、「シフト」というものがある

って思ってたけど、シフトってなんだっけ。


そう頭の片隅で思いながら、ひたすら

グッズを販売し続けた。


これが初めての音楽の仕事だった。

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