第6話 見えない労働

朝の7時過ぎ。

待ち合わせの、ドーム前に着いた。


先週のサッカーのバイトの時よりも、

たくさんの人がいた。

もちろん、この人達全員、バイトの人だ。


「これから点呼するので集まってください」

そう叫ぶ声が聞こえ、僕も向かった。


点呼されるとパスを渡された。

ライブでよく見る「エリアパス」だ。

これがないと、会場に入れないらしい。


例のごとく更衣室に案内され、着替える。

そしてミーティングだ。


今日の僕の仕事は、グッズ販売らしい。


「それでは今から販売所に向かいます」

そう言われ、グッズを販売する場所に

向かった。


びっくりした。


なんと、グッズ販売所は1つではなかった!


あまりの人気さに、グッズ販売所が2ヶ所

もうけられ、売場も40窓口ほど作られていた。


やっぱり彼らは人気なんだ、と改めて

思った。


さて、グッズ販売とは名の如く、グッズを

販売する仕事だ。


ただし、それだけじゃない。

グッズを販売する準備も必要だ。


まず、グッズは当日、早ければ数日前に会場に運び込まれる。

今回のトラベラーズはとても人気で、しかも

数日間に渡りライブがあったので、既に

グッズは運び込まれていた。


僕らがまず初めにするのは、運び込まれ、

保管されているグッズを売場に運ぶこと。


保管場所は7階の倉庫で、売場は1階だ。

その間はエレベーターを使うけれど、

運ぶ時は台車か、もしくは素手で運ぶ。


正直に言おう。

イベントスタッフは、力仕事だ...。


グッズ販売開始前に、息が切れた。

何往復しただろうか。

と思っていると

「それでは今から検品をします!」

との声が聞こえた。


グッズを販売する前に、「検品」という

作業が必要になる。


あらかじめ、タオルやペンライトなどの

グッズが販売前に何個あったかを数えて

納品数が間違っていないかを調べるのだ。


検品をする理由はそれだけじゃない。


グッズ販売後に再度検品して、どれだけ

売れたかを計算することで売上が出るし、

もし実際手元にある売上金と、グッズの

販売数から算出した売上金が違えば、

色々と面倒なことになる。


その話はおいおいするとして、


とにかく、グッズ販売の前にやることが

死ぬほどある。音を上げるくらいに。


そうしてついに準備が整い、開始時間に

なった。


ここからが、グッズ販売の本番。


初めてお客さんと接して販売を行う、

ものすごく怖くて、緊張していた。


その不安が杞憂だった事に気づくのに

そう時間はかからなかった────


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