精神科で清々しんか?~患者によるちょっと面白い話~

@airi-ham

精神科の医者も普通の人間……なのか?

私は精神科に通い始めて(たぶん)8年以上経つごくごく普通の女の子☆ 嘘、三十路ババァです。


年齢ゆえに昔の記憶があやふやで、通い始めた年にバンクーバー五輪のCMがバンバンやってたよなぁ…という微かな取っ掛かりから自分が8年以上通っていることに今気が付きました。


さて、8年も通ってれば、転院することもあります。


私は今までに3件…うん、たぶん3件の精神科に通いました。そのうちの1件に通院中です。


3件で担当してもらったお医者さんは計3人。カウンセラーを入れると5人。地域のカウンセラーや電話カウンセリングなどで関わってくれた人を入れるとちょっと計算できません。


でね、精神科のお医者さんって、精神科に通わないと出会わないちょっと特殊な職業の人じゃないですか。


普通の人にとってはどんなイメージなんですかね?


どんなに相手が精神的に参っていて悪態ついたりしても、笑顔でなだめてくれる海のような広い心の持ち主?

それとも、迷える子羊に預言を託してくれる神のような存在?

いやいや精神なんてわけの分からないもののスペシャリストなんだから、哲学家とか思想家とかそんな感じでしょう?


そんなあやふやなイメージに、8年、1週間に1回だとしたら400回以上精神科に通った私が答えを授けましょう。






人による。






いや、マジ、本当それ。

ぶっちゃけ人は職業でくくれません。確かに理系の人が多い職場は…とか言いますけど、精神科医って自分で独立して診療所持ってやってるところも多いんですよ。


すなわちそこは先生の城。


組織の中ではそれなりの立ち居振る舞いをしている人でも、一国一城の主となれば個性も出てくるってもんですよね。


なんで、たった3人しか先生を知りませんが、本当に個性豊かな人ばかりです。


その中でも特に面白いのが、今通っている診療所の先生。


経歴を見るととても華々しく、「いや日常生活でこんなエリートに出会うことってないよね。え、未婚? マ? ぜひおすすめの子を紹介させていただk」って感じの方なんですが、まぁ濃い。


何が濃いって、まずアドバイスや慰めの言葉が斜め上なんですよね。


例えば私が「孤独を感じる、とても寂しい」という大変メンヘラにありがちな相談をすると


「そうですね、スーパーのおばちゃんに話しかけましょう。僕は寂しいとき、いつもそうしています」(ほぼ原文ママ)


という、とても身近な解決法を教えてくれます。


例えば私が「自分など何の役にも立たない社会のクズなんだ」というこちらも大変メンヘラにありがちな相談をすると


「はぁ? 結婚してる人が何言ってるんですかぁ? 僕なんてこの年になってまだ結婚すらできてないんですよ? じゃあ僕は社会の何なんですかぁ?」(ほぼ原文ママ)(テンションもママ)


という、自身の否定に見せかけて、結婚という一点に依存しつつも患者の存在を丸ごと肯定する優しさをくれます。









……斜め上ですよね?







えっ、斜め上ですよね???








(念のためですが、私は結婚していることが大人としての条件だとは思っていません)

(むしろ義務みたいな気持ちで妥協して結婚するのはとても危険だと思っています)



正直、それまでの先生と比べてあまりに灰汁が強すぎて、最初はちょっと…いやかなり戸惑い、別の病院にした方がいいのかと迷ったんです。なんていうかこう、割と強さを感じるというか。話が合わないというか…。


でも、ドクターショッピングは良くないと思ってるし、転院も面倒くさいからという理由で通い続けたんですが


まぁ腕が良くてですね。


会話していても5割くらいの確率で声が聞き取れないし、何なら話が通じない(そういう時は大概こっちの意見を受け入れてくれる気がない)し、時々ものすごく「ふぁっ!?」ってなるようなアドバイスもらっちゃうんですが


まぁ腕が良くてですね。


あと、やっぱり誠実で、患者のことをすごくよく見てくれている。


ぶっちゃけ人としてはかなりそりが合わないんですが、信念をもってこのお仕事をやっていて、患者のために懸命に診てくださり、考えてくださっているのがどうあがいても伝わってきちゃうんです。


薬の指示もすばらしくて、訴えた症状を軽減してくれる的確な薬を、8割くらいの確率で出してくれるんです。


(先生が、私の訴えを聞いてその症状を緩和させてあげたいと思った時に限りますが)


薬なんて何種類もあって、同じ不眠であってもどの薬を出すか、そもそも薬で対処しなきゃいけない問題なのかって違うはずなんですよ。体質とか生活リズムとか、考慮しなきゃいけない問題は山ほどある。


それがまぁ本当に正答率が高い。エリートってすごいですね!


いや、きっと経歴がいいからという理由ではないことは私にもわかっています。先生が絶えず真剣に患者のことを考えてくれていて、一人ひとりのデータを蓄積し、その場で一番良いであろう答えを妥協せずに追求してくれるから、私の症状は楽になるんです。



でもね、先生。

根本的に孤独を感じている人の問題は、「スーパーのおばちゃんに話しかける」では解決しないと思うんだ。


あとね、先生。

機嫌悪い時も私の話聞いて、マジで。こっちもしんどくて来てんだからさぁ。



ということで、複雑な思いを抱えながら、今も同じ先生のもとに通い続けています。

転居して今は通うのがちょっと辛い距離になってしまったんですが、それでも転院する気は今のところはありませんね。通い続けてもう6年になるのでしょうか…。

結局、絶大なる信頼を置いていることは間違いありません。


医者と患者は友達じゃないので、人として、医者として信頼できる方に診て頂けるのであれば、その方とそりが合わなくても、多少仰ることが浮世離れしていても、そんなものは問題にならないんです。……と思うことにしています。


ということで、確かに頭脳明晰だけど、だからといって完璧超人なわけでもなく、普通の人たちと同じように(?)個性にあふれた精神科医や、精神科で実際に起こったちょっと面白いエピソードを、また機会があったらご紹介したいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精神科で清々しんか?~患者によるちょっと面白い話~ @airi-ham

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る