第6話 真剣でいるのはしんどい

ぬるく生きてきました。ずっと恵まれた環境にいて、今もそうです。


ここにはいろんな境遇の方がいますね。幼少の頃から厳しい環境に置かれていたり、ハードな人生経験が満載の方達。


作家という人種ならば、不遇ですらもアドバンテージに思えてしまいます。

決してご本人たちが願ってそうなったわけではないとしても。

恵まれて生きてきた私がコンプレックスを覚えるのはお門違いだとしても。

私だったらきっと生き抜けなかったのでしょうが。


苦労知らずとは言いませんが、ぬるく、ぬる~く生きてきました。

自分でそう言い切れるほど、けっこうなぬるま湯でした。

人並みの能力もないのに、運だけは人一倍恵まれていて。


文化系、帰宅部。学歴社会のストレスもなかった田舎育ち。

ラクな方、ラクな方をひょいっと選びながら。

それでも普通以上の幸せを与えられて。

勝負事は好きじゃなくて、勝負する必要もなくて。


時には何かを得るために努力し、勝ち取ったこともありましたが、それほど多い機会ではありませんでした。


でも書くことだけは。

長年逃げ続けて、今になってとうとう、向き合いたくて。


真剣になるのは怖い。

本気でも、必死でも、なんの結果も出せないのが怖い。

傷つくに違いないから。


でも作家ならば、傷つくことすら肥やしなんですよね。

奇妙なパラドックス。

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