演説
オプリメスによるモルス襲撃のほんの数時間後、モルスの大広場にて――。
諸君!モルスの戦士諸君!我々は浅慮なオプリメスによる襲撃で、拠点の一つを失った。奴らはさらに、我々がオプリメスの重役を暗殺したなどと、ほざいている。これを放置してよいのか?断じて否だ!
我々は武器を手に取り、戦わねばならない!そして、これは聖戦である!宇宙に移民して70余年、もはや人類に未来はない!此処で人類は静かな終わりを迎えるべきなのだ!これは神の託宣といっても過言ではない!しかし、奴らは終焉に対して足掻きを重ね、生き延びることに執着してばかりだ!こんな見苦しいことを神が認めるはずがない!
賽は投げられた。遂に時が来たのだ!今こそ、汝らの日々の鍛錬を見せるときである。我々は鉄槌を下さねばならない。奴らに終わりをもたらすのだ!
正義のない奴らに付き従う者などいない。我々の兵力は奴らの優に3倍を超える。敢えて言おう、カスであると!
さぁ、神の戦士たちよ、軍靴を鳴らせ、武器を振るえ!我らの正義を示すのだ!この世に安寧を、そして静かなる終わりをもたらそうではないか!モルス万歳‼
演説を終えた、教皇は白で統一された自室に戻った。すると、すぐにコンコンとノックの音が聞こえる。
「入れ」
教皇が傲慢に言うと、入ってきたのはスーツをビシッと着こなした美丈夫。男は教皇に一礼すると、笑顔で慇懃無礼に謝辞を述べる。
「今回は、我々の兵器を購入していただき、誠にありがとうございます。聖戦を手伝わせていただけるとは、我々にとって、またとない栄誉となるでしょう」
教皇は鼻を鳴らして言う。
「名誉など、さらさら思っておらんくせに。本来なれば、薄汚い武器商人など、この場には、ふさわしくない。が、此度は仕方がない。我々では武器が用意できぬ故」
「ふふふ、でしたら、薄汚い私はそろそろ失礼させていただきたいと思います」
男は鉄壁の笑顔を固持して、そう言った。教皇は再度、鼻を鳴らす。
「ふんっ。もうよい、去れ」
男は綺麗な礼をし、部屋を去った。
「くふふ、馬鹿な奴らめ。これで確実に戦争が始まる。我々は大儲けだ」
男は廊下を歩き、周りに人がいなくなった頃、端正な顔を歪め、そう独り言ちた。
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