M町の努力

M町は周辺のグループの中で唯一、畜産に成功したグループである。その点において他グループに対する優位性を持ち、肉と他の物品を物々交換して暮らしている。

畜産に成功したのはM町の人々の努力が背景にある。

もともとの牛や鶏、豚といった家畜は寄付されたものだった。M町のグループは宇宙そらにすべての中心が移る以前に設立されていた。地球に残ることを決めた人々の集まりとして、これから必要となるものなどを日々議論する場であった。そこに家畜と牧場となる土地が寄付されたのである。それをなしたのは、とある奇特な金持ちであった。もっとも本人は地球に残る気などなく、その後、宇宙そらに移住した。その行いは憐みによるものだったかもしれないが、今に至っては大きな一助であった。

最初は苦労の連続であった。

M町に所属していた人々に畜産関係の人などいなかったため、畜産に関する資料を読み、実践し、反省する。その繰り返しで、一歩一歩前進していった。

家畜が飼料を十分に食べているのに対し、人の食料が不足気味になることもあった。そのことに、不満を訴える何人かはグループを抜けていった。

畜産が軌道に乗り、グループ内では十分に肉やミルクなどを行き渡らせることができるようになったころ、牛たちに異変が起こった。新しい世代の牛たちには病弱なものが多く、成長が悪かった。慌てて資料を調べると、血が濃くなりすぎたのかもしれない、という結論に至った。それから、周辺を駆けずり回り野生化した家畜を集めて、今後、血が濃くなり過ぎないように繁殖計画を見直すなどした。

結果、完全に畜産は軌道に乗り、貿易品となった。


M町では、皆が今日も誇りをもって家畜の世話をしている――

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