変わった目的

 オプリメス――略奪を是とする攻撃的な組織である。しかし、その成り立ちはもっと平和的なものであった。最初は、両親の宇宙そらへの引っ越しについていかざるをえなかった、など地球に未練を強く感じる若者たちの寄り合いだった。いつかは地球に帰りたいと互いに話し合うだけのような組織だった。当時、世界統一政府は宇宙そらを経済、政治、人口の中心とするため、地球への帰還の便を非常に高額に設定していたので、一般家庭の収入では帰還は望めるものではなかった。もっとも今では地球行きの便すら存在しないが。

 年月を経る中で、宇宙そら生まれの者も参加するようになり、地球への行き来の再開を政府に訴える組織となった。その宇宙そら生まれの参加者の中で頭角を現すものが出てきた。

 その者は過激な思想をしており、月を支配すれば、地球行きの便の復活も自由自在だと主張していた。組織の古参の一部もその思想を支持しており、すさまじい勢いで浸透していった。

 その頃から、その者の手引きで多くの過激思想を支持する者が組織に出入りするようになった。

 その内に手段に過ぎないはずの月の支配が目的に置き換わり、「我々は月を支配するべき選ばれた民だ」などと主張しはじめた。武器商人が出入りするようになり、組織は武装化の一途をたどった。



 オプリメスによるモルス襲撃前夜――

 今やオプリメスは様変わりしてしまった。いまだに大きな規模の闘争が起こっていないのは、創設者である男が反対しているためだった。

 男は組織の施設に設けられた自身の執務室で椅子に座り、覚悟の表情を浮かべる。男は政府と平和的な対話をするべきとしたが、組織で耳を貸すのは、ほんの一部に過ぎなくなった。その者たちも次々と姿を消していく。危機感を感じた残りの者は組織を立ち去るか、月支配の思想に賛同した。がらっ、と男が執務机の引き出しを開けると、そこにあったのは一丁の拳銃。西暦時代の古いものだが、それでも男のありとあらゆる伝手を駆使して手に入れたものだ。男は自身を鼓舞するように独り言を言う。

「今や、あいつを殺さなければ、戦争は避けられないものになる。そうなれば、暗黒の時代が始まる。それだけは、それだけは阻止しなければならない」

 男は銃を握りしめ、執務室の扉を開けた――。


 男は死体となって見つかり、オプリメスはこれをモルスの謀略だとし、モルス所有の鉱山に襲撃を行った。

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