第20話
収穫祭最終日、ユートは下からの朝ご飯のよいにおいで目を覚ました。この三日間とても楽しかったが、正直少し疲れていた。頭もぼーっとしている。しかし
「今日でこっちの世界にきて、半年ぐらいたったかな……」
ユートはそう言って呟いた。半年も過ごしているがこの町の全体像をまだ把握できていない。ただ、ユートがめんどくさくて歩いていないだけなのだが。
壁にはカレンダーがかかっている。ユートは日にちが経過するたびにバツ印記入していた。これは
どうせすぐにリヒスに呼ばれるだろうと思い、ユートは下に降りた。クレイドとルミアは今日の夜に帰ってくる予定だ。リヒスは毎朝通りに調理室で料理をしているらしい。ユートがふとソファーの方をむくと、イビルとナハト、そしてエウロペが座っていて机の上に置いてある紙を凝視していた。
「どうしたの?」
ユートが三人に向かっていうと、イビルが少し左にずれてソファーの上をポンポンと叩いた。ここに座れということなのだろう。
「ありがとう」
ユートはソファーにすわって三人が凝視していた紙を見た。紙にはギルド対抗競技会エントリー用紙、と書いてあった。
「どうしたの?これ」
ユートがそういうと、リヒスが出てきた。
「収穫祭最終日、つまり今日ですねギルド対抗で勝負するみたいですよ。ギルマスたちの世界で一番近い言葉は体育祭でしょうか」
ユートはリヒスに向けていた目を紙の方に戻した。紙には注意点などが書いておりその下には、競技名とその横には名前を書く欄があった。
注意点の欄にはー1競技出場できるのは3人まで、その場合一番ポイントの高い人のポイントとなる。同じ人が複数の競技出場は不可ーそうかかれている。
「で、誰がどれに出場するとつもりなんですか?」
ユートが一通り紙を見終えたあと、リヒスが言った。
競技欄には5つかかれている。1スティーパル・チェース 2ローリング・スティール 3スリープ・トレジャー 4 5の欄にはなにもかかれておらず、ギルドマスター用とかかれている。
もうすでに話し合いをしていたようで、ナハトはスティーパル・チェースにイビルはスリープ・トレジャーにエウロパはローリング・スティールの欄に記入されていた。
「まあ、俺はここしか無いとして。リヒスは4でいいの?」
ユートがリヒスにむかって言うと、リヒスは首を横に振った。
「私は運営の方を任されているので無理なんです」
「え~リヒスちゃんでれないの~じゃあ4どうする?」
ナハトがリヒスにむかって言った。
「自分……」
「イビルが自分の魔物を使えばいいっていってるゼ」
さすがにそういうわけにもいかない。どうやっても許されないだろう。
「ん~?」
ーーどうしようか
ユートが悩んでいるとクレイドから連絡が入った。
「もしもし?」
「今日、開催されるギルド対抗競技会に私も出場しますよ。4があいているようなので4でお願いします」
「何で知ってるの?」
ユートは驚きながらもクレイドに聞いた。
「先ほど、エウロパさんから話をききました。こちらは、私の国にいたメイドの人たちが応援にきてくださっているので大丈夫です」
そこまでいわれでイヤとはいえない。
「わかった」
ユートはそういった後連絡を切った。
「クレイドが4にでるってさ」
ユートはそういってクレイドの名前を4の欄に記入した。
「相談したかいがあったっすね」
エウロパはそういって笑った。
「私、これに参加するの初めてっすから誰かルールを教えてほしいっす」
エウロパが言った。
「ナハトちゃん知らないよ~」
「イビル……もぉ……」
二人がそう言ってユートの方を向いたがユートも知っているわけではない。
「リヒス知ってる?」
ユートが聞くリヒスはため息をついた。
ーーあ、俺何かやらかしたな
「三人が知らないのは、仕方ないとしてもギルマスは知ってますよね。前、紙が渡されてきましたよね」
ユートはリヒスにいわれて、記憶をさかのぼり始めた。
「何かは思い出しましたか?」
「確かにそんなのが、有ったような無かったような?」
リヒスは仕方ないと思ったのか説明を始めた。わかりやすくするために紙とペンを用意している。
「ナハトがでる1のスティーパル・チェースは、簡単に言うと障害物競走みたいなやつです。スタートからゴールまで誰が一番早くたどり着くかを競います。途中には障害物があって、それをかわしてゴールまで走ります。走っている途中は死なない程度なら他のライバルを攻撃してもいいらしいですよ。ルートはその場で発表されます。
エウロパがでる2のローリング・スティールは、運動会の大玉競走みたいなやつです。でも、玉が中までマダマイトで出来ているので、そうとう重いうえに衝撃を与えると大きくなります。これも、スタートとゴールが決められていて、途中にある3つのチェックポイントを通らなければなりません。また、転がす必要もなく持てるのなら持ってもいいそうです。ライバルの攻撃は不可にはなっているみたいです。
イビルがでる3のスリープ・トレジャーはいわゆる宝探しですね。この町の端にある密林を使うようです。試合が始まると参加者全員は密林の中に入ります。外からは私たちが透明な壁を作るので、外にはでれません。でた場合は失格となります。その密林の中に小さな金貨が四枚埋められています。そのうちのどれかを見つけた人が勝ちです。その人は強制的に外に出されます。もしも見つからずに四人残ってしまった場合はその時点で終わりとなります。今まで金貨を見つけた人は少ないようですよ。
最後にクレイドがでる4はまとあてですね。これが一番ルールが簡単で、どんどん遠くなる的の真ん中にいかにぴったりと当てるかを競います。投げるものは刺されば何でもいいらしいです。他のライバルの邪魔をしてはいけません。4つの中では一番地味って言われているらしいですよ。
で、最後のギルマスがでる5ですけど。それはお楽しみにと言うことで」
そう言ってリヒスは説明を終わった。
「待って、一番大事な俺の協議の説明がはぶかれてるんだけど」
説明を終えたリヒスにいった。
「紙を、見てなかったんですから、仕方ないですよ」
「この競技は誰が考えたの?」
ユートはリヒスにむかって聞いた。
「なんでも、この町を作ってギルド本部を作った人が考えたらしいですけど」
リヒスはそう言うと調理室へ向かった。口元はほころんでいた
ーーあれは、たまにしか出ない意地悪のしたいときの顔だな。ああなると絶対教えてくれないし、諦めるか。
ユートは机においてあったエントリー用紙に目を戻した。しかし紙は無くなっていた。
「紙は?」
イビルとナハトはリヒスを手伝いにいっていたためエウロパにむかって聞いた。
「あれは、記入したら消えるらしいっすよ」
「そうなんだ」
ユートはエウロパにむかってそういったあと、目をつぶった。先ほどの競走名は全て、英語での発音だ。それに競技の名前は聞いたことがないが、競技の内容はユートはどこかで知っているような気がしていた。
ーー競技を作ったのがギルド本部を創立した人と言うことは、多分、あの銅像の人だよな。
あの銅像を思い出すたびにユートの中で何かが引っかかっていた。この競技のことでさらに引っかかりがましたが、もう少しでつながりそうで、つながらない。その、もどかしさだけが、胸の中に残っていた。
「ギルマスとエウロパ~そろそろ、ご飯の準備できたから食べますよ~」
ユートがそんな事を考えていると不意にリヒスの声が聞こえた。重なってイビルとナハトの声も聞こえてくる。
「わかったっす」
エウロパはそう言って声の方向へとはしっていった。
ーーまあいいか、今はこんなことを考えるより、リヒスが作ってくれた朝ご飯を食べよう。
ユートはそういって立ち上がりみんなの手伝いに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます