第18話
「ギルマスぅ~早く行こう」
今日は収穫祭当日、ユートはナハトと二人で収穫祭を回ることになった。
「わかった。わかった」
ユートはナハトとの横に並んだ。何故こうなったのかは前日にさかのぼる。
「どうすぅ⋯⋯]
ルミアとクレイドそしてエウロパを抜いた四人では話しているときに不意にイビルがユートに言った。
「どうするって⋯⋯何が?」
いくらずっと冒険していたとはいえこの一言で何が言いたいかを察せるほどユートはすごい人間ではない。
「ギルマスは察しが悪いナ」
「ああそうだナ、なにって明日のことに決まってるだロ」
イビルに抱きかかえられている、ゴズとメズがイビルが言いたいことを説明した。しかしユートはまだわからない。
「ふたりぃ⋯⋯一緒⋯⋯」
そこまで言われてtユートは言いたいことが分かった。
「俺と一緒に収穫祭周りたいってこと?」
ユートがそういうとイビルがうれしそうにうなずいた。
「ちょっと待って! それならナハトちゃんも一緒に行きたいよ」
ユートとイビルが二人で納得していると、ナハトが立ち上がって言った。
「収穫祭は四日間あるから、いっしょに行けますよ」
最初のほうのことはナハトに後半のセリフはユートに対してリヒスが言った。
「いいよ」
ユートがそう答えるとナハトの目が輝いた。
「何日目に行きたい?」
ユートは全員に聞いた。
「ナハトちゃんは一日目がいいな」
手を挙げてそう答えた。
「二日⋯⋯」
次にイビルが答えた。
「じゃあ三日目は私ですね」
リヒスが最後に答えて順番が決まった。
ユートがそんなことを思い出しているとナハトの裾を引っ張られ我に返った。
「なんで、ぼぉ~としてるの?」
ナハトはユートを見上げていた。
「ごめんごめん」
ユートはナハトに謝った。ナハトも機嫌を直したようで、ユートの横を歩いている。
ユートはあたりを見渡した。今二人が通っている道沿いには多くの店が出店していた。その中で一番多いのは食べものを売っている店でユートが元々いた世界では見かけないような食材やその食材を調理した店が多かった。
--水龍のから揚げって、どんな味するんだろう?
ユートは帰りに買っていこうと心に決めてその店の前を通り過ぎた。
次に多い店は|魔法道具(マジック・アイテム)などを打っている店で一緒に食材を売っているところもあった。ユートも通りすがりにちらちらと覗いていたが金貨30枚というものまで売っていて少々驚いた。
「ギルマスぅついたよ」
イビルはそういってある店の前で立ち止まった。さっき通った道からは離れており少し寂しい感じがしている。看板にはそっけない文字で武具屋と書いてあった。
「なにここ?」
ユートはナハトに聞いた。
「有名な武具屋らしいよ」
ユートは嘘だと思ったがナハトがそういうのならそうなのだろう。
「だれから聞いたの?」
「ナハトちゃんが散歩しているときに見つけたんだ~」
ユートがそう聞くとナハトはうれしそうに答えた。そして二人はドアを開けて中に入っていった。
「いらっしゃい」
低い声がユートたちに向かって聞こえた。カウンターにはサングラスをかけたおじいさんが座っている。内装はコンクリートに武器や防具がかかっているというそっけないものだった。ここの管理者がおいているものを持つ事が出来ないようにしているため防犯に関しては問題なく、こちらも装備の詳細が見えるので問題ない
「で、ナハトは何を買いに来たの?」
ユートは、いろいろな剣に目を光らせているナハトに言った。確かに腕利きの人が作っているんだろう。良い品物ばかりが陳列してある。
「これだよ」
ナハトはそういって、ユートを引っ張っていった。そして二人の目の前には鞘に赤と黒の線が入った剣がおいてあった。ユートはその剣の上をなでるように指をスライドさせてステータス画面を見た。
「なに、これ」
ユート思わず声を出してつぶやいた。そこの特殊能力欄には|≪最初の持ち主によって変化する≫そう記入されていた。他の能力値は特に問題なくナハトがいつも装備しているユートが魔法(課金)で手に入れたものと遜色なかった。
「面白いでしょ~」
ナハトは笑いながら言った。確かにこんなものはゲームの時代にはなかった。ナハトが装備したらどんな効果になるのか知りたくわあった。
「確かに。で、これ買うの?」
ユートはナハトに聞いた。おそらくこんな効果が書かれている剣だ安いわけがない。
「もちろん買うよ~」
ナハトはそういって値段の欄をみた。金貨3000枚と書いている。これはかなり高い。ユートは報酬の金額は頭割りで分割しているためみんな同じような金額にはなっているが、ユートでも30000枚ほどしか持っていない。
「ギルマスも一緒に払おうよ」
ナハトがユートを見上げて言った。とてもきれいなめをしている。
ーー最初っからそれが目的か。
ユートは心の中でそうつぶやいた。まあ別に断る理由もないし、そろそろ武器を買い替えるのもいいかと思っていたのでちょうどよかった。
「わかったよ」
ユートはナハトにそういって二人で剣を買おうとした。
「おぬしら、これを買うのか」
ーーびっくりした。
ユートたちが剣を買おうとしたときに後ろから声が聞こえた。その声に驚いたユートは思わず後ろを振り向いた。そこにはさっきカウンターに座っていたおじさんが立っていた。
「買うのか、それは俺が作ったもんでな、なかなか気難しいから頑張ってくれよ」
おじさんはそれだけを述べると元の場所に戻っていった。
「よかったねー。いいものも買えたしね」
ナハトはさっきから機嫌がとてもいい。嬉しそうに歩いている。
「にしても、さっきからどこに向かってるんだ?」
自分の前を歩いているナハトに向かって言った。しばらく歩いているが一向に着く様子はない。
「まあまあ、ナハトちゃんにまっかせておいいて~」
ナハトは嬉しそうに笑ってユートの横に並んだ。
ーーなんでこんなことに。
ユートはそう思いながら口を開けた。二人がいるのはケーキバイキングをやっている店らしく、カップルのような人たちが数多くきている。
「ほら~まだまだあるよ」
ナハトがそういってユートの口にケーキを一切れ放り込んだ。先ほどからずっと自分は食べずにユートの口にケーキを放り込んでいる。周りからの視線が少し痛い。
「ナハト。ちょっと待って」
ユートはナハトを止めた。先ほどからずっと食べ続けているためもうおなかがいっぱいになっていた。
「なんで~」
ナハトが不満そうに言ったが手を止めた。そこにはケーキの4分の1が乗っている。
「さすがにおなかいっぱいだから帰らない?」
ユートがそういうと、ナハトはすぐに椅子から立ち上がった。
「いいよ~」
ユートも立ち上がって店を出た。
「今日はギルマスと一緒に回れてうれしかったな」
ボソッとつぶやき、ナハトはユートの方を向いた。
「ギルマスと最近全然話してないし、それにいつも忙しそうだったよ。少しはお休みしないと」
ナハトはユートの横に並んで手を握った。手は火照っていて暖かかった。
「ごめん」
最近ユートは自室に籠もりっぱなしで全然みんなと話をしていなかった。少し寂しい思いをさせていたのだろう。
「ありがとう」
そう言うと、ナハトはユートに向かって微笑んだ。
「いいよ、ナハトちゃんはユートの家族だから、寂しいのも我慢する。その代わり1人でどっか行ったら駄目だよ」
ナハトはナハトなりに心配させていたのだろう。
ーーこんな思いにさせるなんてギルマス失格だな。
「ああ、約束する」
そして手を強く握った。歩いていこうとする道が夕焼けに染まっていた。
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