第17話
翌日に昼飯も終わらした、ユートとリヒスが相変わらずの書類仕事をしていると、自室のドアからノックが聞こえ聞き覚えのある声が聞こえた。
「ギルマスゥ~だれかきたよ~」
「はーい」
ーーゴンドウさんかな? 今日、あの話をしたいって言っていたし。
ユートはそう思いながら玄関までいき玄関のドアを開けたーギルドホールの設定によりギルドマスターが登録した人以外は入れないようになっているーそこにはコンドウがたっていた。
「おう、鉱石の件はお世話になったな」
「いえいえ、こちらこそとても面白かったです」
そういってユートはゴンドウをギルドホールに招き入れた。ギルドホールにはルミアとクレイド、そしてリヒスがソファーに座っていた。
ーーあれ? ほかの三人はどこ行ったんだろう?
「三人なら暇だって言って|朽ちた竜(ボーンドラゴン)に乗って外に遊びに行きましたよ」
「ああそういうこと」
リヒスがお茶とクレイドお手製のクッキーを持ってきた。そしてここにいる全員がソファーに座った。
ーーなるべくこういう話をするときには、自分の部屋を使いたいんだけど⋯⋯
そしてルミアが口を開いた。
「もうすぐこの町で収穫祭が行われます。その話を我が国の王であるモナーク国王にしたところ、我が国でも出店をしたい商人が多くこちらとしてもここまでの道を開拓していました。しかしこの町の前すぐには大きな森がありそこで開拓が止まってしまったのです」
「そんな森一つで止まるものなのか? 森といってもあそこには最大でもレベル20までしか出現しないはずだ」
ルミアが話した後ゴンドウが口をはさんだ。
「冒険者の基準で考えないでください。いくらレベル20までしか出現しないとはいえ、一般の人々の作業をしているところを守りながら開拓するのはとても危険なのです」
「なるほどな、多少の話は聞いていたがそういう事情があったのか。ユートお前はどうするつもりだ?」
ゴンドウがユートのほうを向いていった。
「まあ、あちらの商人達がこちらに来て商売をするということであればこちら側にはなかった情報やアイテムが入ってきたり、こちらとの親交も深くなるのでなるべく作ってあげたいですけどね」
ゴンドウはユートの話を聞くとルミアのほうを向いた。
「地図はあるのか?」
「あります」
ゴンドウがそう聞くとクレイドがカバンの中から地図を出した。そこには道路の様子も記入されていた。
「ふむ、ということはこの町にいる少数の商人たちは森を周ってきているわけか」
「はいそうなります」
ゴンドウの疑問にルミアが答えた。
地図を見ると森の端に少しだけ地面が見えるところがあるおそらくそこから入ってきているのだろう。
「まあ多くの人が来ると俺のギルドも収入が増えるだろうしな。いいぜ道路づくりに協力してやる」
ーーよかった
ルミアは心の中でそう思った。ルミアがこの頼みを実現させる方向にもっていかなければ、ルミアがこの町と国との橋渡しである必要がない。
「費用はどうなってるんだ? 期限は? 道幅は?」
ゴンドウは畳みかけるようにルミアに質問した。
「費用は我が国と半々にしたいようです。期限は今日から二週間ぐらい。道幅は⋯⋯」
「道幅は見に行けばいいんじゃないか?」
話そうとしていたルミアを遮ってユートが言った。
「それもそうだな」
「僕らが連れていきますよ」
ユートはそういうとリヒスに目配せをした。
「そういうことならほかのやつも呼んできてもいいか?」
ゴンドウがユートに聞いた
「いいですよ」
その後ゴンドウがギルドから立ち去って行った。そして、出て行ったあとすぐに|朽ちた竜(ボーンドラゴン)に乗った三人が帰ってきた。
「ただぁ⋯⋯」
「おかえりリヒスから聞いた?」
「もちぃ⋯⋯」
イビルはそういってうなずいた。
「ナハトもいく~」
「もちろん私も行くっスよ」
ーーまあそうなるだろうと思ってたよどうせこうなったら断り切れないから⋯⋯
ユートはそう思って全員で行くことに決めた。
そんなことを思っていると、ゴンドウが男二人を連れて帰ってきた。
「こいつは副ギルドマスターのセリアス。もう一人は建築部門をまとめているギクラだ」
ゴンドウがそういうと二人は頭を下げた。それにつられてユートたちも頭を下げた。
「副ギルドマスターのセリアスです」
そういうとセリアスはほっそりとした腕ーとは言ってもゴンドウと比べるとだがーを差し伸べた。
ユートはその手を取るように握手をした。
「こちらこそ、ギルドマスターのユートです」
そのあと三人で町から出てすぐのいつも|朽ちた竜(ボーンドラゴン)を出発させるところに向かった。
いつも|朽ちた竜(ボーンドラゴン)を出発させているせいか、そこは草が生えなくなっていた。
「|朽ちた竜(ボーンドラゴン)⋯⋯召喚⋯⋯」
そういってイビルが召喚した|朽ちた竜(ボーンドラゴン)に乗って森を突っ切って完成している道の端まで向かった。
「あそこに行きたーい」
ユートが|朽ちた竜(ボーンドラゴン)に乗っているとナハトが下のほうを指さしていたがユートは|朽ちた竜(ボーンドラゴン)の羽で見ることができなかった。
その後ユートたちを乗せた|朽ちた竜(ボーンドラゴン)が道路の端まで付くと|朽ちた竜(ボーンドラゴン)からおりてあたりを見渡した。
「やっぱり空を飛べると楽だな。誰か持ってるやつうちのギルドにいないかな?」
ゴンドウはそうつぶやくと、道路を様子を見始めた。
ーー僕にはよくわからない
ユートはそう思ってゴンドウ達に声をかけてクレイドとルミア以外の四人を連れて森の中に入っていった。
「にしても、木々が生い茂っていて歩きにくいな」
ユートたちが入っていった森は地面には雑草が生い茂りとても歩きにくかった。上も気が太陽の光を邪魔しており薄暗い。まあ紅葉はきれいではあるのだが。
ーー道はあることにはあるけど獣道⋯⋯というより魔物道だな
ユートは心の中でそうつぶやいた。
「にしても魔物は現れないな。多く出てくるっていう話じゃなかったのか?」
というユートの問いに答えたのはイビルに抱きかかえられているゴズとメズだった。
「いくらここの魔物が低ランクだとは言え、さすがに敵が強いかどうかはわかるんだヨ」
「そうだな。俺たち二人のオーラにビビってるんだロ」
ーーそういうものか
そんな話をしているとナハトがしゃべりだした。
「ナハトちゃんさ~|朽ちた竜(ボーンドラゴン)の上からきれいな池みたいなものを見つけたんだ~」
ナハトはそういってユートの手を引っ張った。しかし数分歩くと立ち止まった。
「あれ~? ここどこ?」
ナハトはあたりをきょろきょろしている。
「仕方ないですね。私がここから案内します」
そういって後ろからリヒスが出てきた。
「私も見ていたので場所はわかりますよ」
「ありがと~」
ナハトはそういってリヒスの横に行った。そしてリヒスはナハトの頭をなでると目的地に向かって歩き出した。
数十分たったころ急に視界が開けて、透き通っていてきれいな池が現れた。
「きれいだな⋯⋯」
ユートはそういって池に見とれ続けていたがすぐにチャットの呼び出し音が聞こえた。
「俺たちはもう終わったから帰還呪文で先に戻っておくぞ」
「わかりました」
ユートがそう答えるとチャットは切れた。
「じゃあみんな戻ろうか」
「はーい」
というナハトの返事が聞こえた。そしてナハトを先頭にしてみんなで歩き始めた。
「ゴンドウさんたちはどうしたんですか?」
リヒスがユートに聞いた。
「もう帰ったよ。だから俺たちも二人と一緒に帰ろう。ルミアは帰還呪文使えないしね」
「そうですね⋯⋯帰ったらまた書類仕事よろしくお願いしますよ」
リヒスはユートに向かっていった。ユートは苦いものを口の中に放り込まれたような顔をしたがすぐにいつもの様子になってため息を一つこぼした。
そのため息は森の風によってかき消された。
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