第11話
「やった~海だ~」
ナハトはそう言って
遠くのほうには海がきらきらと光って見えるがさすがに距離があるため詳しい事はわからなかった。
クレイドとルミアは一足先に近くに町があったため挨拶をしにその町に向かった。
ユート達は先に走って行ってしまったナハトの後ろを追いかけるように砂浜へと向かった。そしてティーナに言われたとおりに
「どうしたんですか?」
リヒスは不思議そうに、手を止めたユートに聞いた。
「この後どうするんだろう?」
「はぁ、このままこの巻物に魔力をこめるんですよ」
「なるほど」
リヒスはため息をついて説明した。そしてユートはその巻物の真ん中に手を開いておき魔力をこめ始めた。その後しばらく時間がたつと黒い玉が巻物の上に出来た。すると……
「いや~やっと着いた着いた」
その言葉を先頭に黒い玉の中からグリーン・ヒルのギルドメンバーが出てきた。みんな水着を着ている。
「着いたって、ティーナさん何かしましたっけ?」
「まあまあ、そこらへんは気にしないで」
ユート達とグリーン・ヒルのメンバーはは砂浜の上で色々なキャンプのための準備をし始めた。周りにはテントが次々と立てられている。その中でも一番目立つのは海水がなみなみ入った大きな釜だ。そして準備が終わった頃クレイドと共にルミアが脱力した顔で町から戻ってきた。
「どうしたの?」
「挨拶をしにいったら、皆さんに握手を求められて……」
「まあそれは仕方ないよ」
ユートはその言葉にたいして苦笑した。そして海のほうを指差していった。
「ルミアも遊んできていいよ」
ユートがそう言うとルミアは海に向かって走って行った。クレイドは料理の手伝いをしに行った。
「ギルマスはこの後どうしますか?」
「俺は、とりあえず休憩」」
ユートはそう言って砂浜に座り込んだ。すでにユートは重厚な鎧から水着になっている。水着は装備扱いのため一瞬で着脱をする事が出来る。
目の前ではイビルが水着でイビルより大きな蟹を追いかけている。そして倒した蟹は青い光になって消えることなくその場に横たわった。
「もてぇ……いくぅ……」
そう言ってイビルは大きな釜のところまで蟹を引きずって持っていった。そしてそこにいたグリーン・ヒルのクウジがその蟹をなべの中に放り込んだ。
ユートはクウジのことをグリーン・ヒルの料理人をやっていると前料理をおすそ分けに来たフィナから聞いた事があった。人当たりも良い好青年だ。
そして、イビルは持って来た蟹が鍋に放り込まれたのを確認するともう一度蟹を捕まえに走った。他にも何名かが蟹を追いかけている。
「ほら、二人もそんな所でぼっーとしとらんとこっちに来たら」
ユートとリヒスは両手に蟹の足を持っているティーナに呼ばれ大きな鎌がある方向に向かった。二人が砂浜を歩くたびサクッサクッと心地よい音が聞こえる。そして、釜の横に着くとクレイドが大きな蟹の足をざるいっぱいに持っていた。
なぜかクレイドは手袋をつけていたが、ユートは別に何も言わなかった。
「一本どうぞ」
ユートはクレイドが渡して来た蟹の足を殻をを向いてかぶりついた。横では同じようにリヒスがかぶりついている。
「美味しいなこれ」
「そうですね」
ユートはティーナが来たがっていた理由が良くわかった気がした。確かに美味しい。
そしてユートは座って海のほうに目を向けた。そこには海の上を走っているナハトと宙に浮いているエウロパが二人で鬼ごっこをしている。辺りには水がきらきら光っていて綺麗だった。
「なにあれ、どうなってんの?」
ユートは思わずナハトを見て呟いた。
「
「それは見たらわかるよ」
ユートの呟きにリヒスが答えた。
「お~な~か~すいた!」
ユートがリヒスとの会話も終わり、空を見上げながらぼーっとしているとナハトが胸に飛び込んできた。ナハトの後ろから遊んでた人たちがこちらに向かってきている。みんな楽しそうな顔をしている。
すでにここに到着して時間がたっており太陽も空高く上がっていた。
「釜の前でみんなお昼ご飯食べてるよ」
ユートはナハトを引き剥がしながら言った。お昼ご飯といっても地べたに座ってここら辺で乱獲した蟹にかぶりついていただけなのだが……
「じゃあギルマスゥもリヒスも行こうよ」
ユートはさっき沢山ティーナに蟹を食べさせられたので、もう食べたくは無かったがとりあえず着いて行く事にした。
「二人ともまだ食べたりないん? いっぱいいる?」
着くやいなや、ティーナが蟹を渡してきたがユートは丁重に断った。リヒスも嫌というほど首を横に振っている。
ユートとリヒスがイビルとエウロパの所で座り込むと直ぐにナハトが両手いっぱいに蟹を持って向かって来た。
「イビルちゃんとエウロパちゃんにもあげる~」
ナハトはそう言ってかにの足を渡した。
「ありぃ……」
「ありがとうっす」
そう言って受け取るやいなや蟹は直ぐに無くなった。
「さ~て、お昼ごはんが終わった所で恒例の~」
「昼寝」
「まだ食べる~」
ティーナがそう言うと他の人が次々に答えた。
「皆はずれ~正解はスイカ割りでした」
ティーナはそう言って鞄からスイカを取り出した。
――にしてもなんでこんなに文化が日本っぽいんだろう?
ユートはふと疑問に思ったが今考えても答えが出なさそうだったので、一生懸命準備をしているティーナを手伝う事にした。一人でスイカを出しては並べる作業を続けている。
「にしても沢山持ってきましたね」
「人数多いからね~」
ユート達がそう話している間に準備が終わった。
「じゃあ始めるよ~」
「ナハトちゃんやってみたい~」
ティーナがそう言うとナハトが真っ先に手を上げた。
「それじゃあナハト、ルールを説明するぞ」
ユートは、目を輝かして飛び跳ねているナハトに向かって言った。
「はーい」
「スイカ割りっていうのはこの棒でスイカを割るんだ」
「こんな風に?」
ユートがそう言うとナハトがユートの手から棒を取り縦に振り下ろした。すると振り下ろした所からスイカに向かって綺麗な一本の直線が砂浜に引かれていった。そしてその線がスイカにあたるとスイカが綺麗に半分に分かれて倒れた。
――ただの木の棒なのにこんな事まで出来るんだ……
「どう? できたでしょ」
ユートがそんな事を考えているとナハトがユートの服のすそを引っ張って言った。
「ナハトもう一階説明するぞ」
「はーい」
そしてユートはしっかりとナハトに説明を始めた。
「スイカは美味しいっすね」
「あまぁ……」
「ナハトちゃんも食べる~」
スイカが割られていくそばからこの三人は直ぐに、割られたスイカを食べている。そのため三人の身体はスイカの果汁でべとべとになっている。それを見かねたのかリヒスが自分の鞄からタオルを三枚取り出して水につけて三人に渡した。
「ほら、これで少しは拭いてください」
「はーい」
「わかぁ……」
「了解っす」
ユートは、お母さんのような役目をしているリヒスを眺めていたが後ろからクレイドにふと声を掛けられた。
「どうした?」
「夜ご飯の用意をするために枝が沢山いるのですが一人では手が足りないので手伝ってもらえないでしょうか?」
それぐらいならいいよと、ユートはクレイドに向かって言った。するとその声を聞いたのかちょうどスイカ割りを終えたルミアが危なっかしく走って、こちらに向かって来た。
「私も行きたいです」
「どこに何をしに行くか知ってる?」
「もちろんです。小枝を集めに行くんですよね。私も何かお手伝いしたいんです」
そう言うことならと二人はルミアが一緒に行く事を了承した。
「じゃあ、ちょっと行って来る。リヒスあの三人の面倒頼むな」
ユートは現在進行形で三人の顔を拭いているリヒスに向かって言った。
「わかりました。大丈夫だと思いますけど一応気をつけてくださいね。山賊とか出るらしいですから」
「お、おう」
――これはもしかしてフラグ?
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