第8話

――もうすぐつくっすね。

 

 考古学者のエウロパは考古学研究のためにある洞窟にもぐっていた。

 すると突然横からスケルトンが現れてエウロパに襲い掛かってきた。


 「めんどくさいっすね。ウィンドブレイカー!」


 エウロパがそう言うと風が刃となってスケルトンたちに襲い掛かり、スケルトンの身体を引き裂いた。


――さーて、先に進むっすよ。


 そう思ったティーレが足を一歩先に踏み出したとたんにこけて前に倒れこんだ。エウロパは不思議そうな顔をして考えた。


――あれ? 足腰に力が入らないっす。そういえば前に食事したのは・・・・・・


 ティーレはこのとき三日間近く水以外口にしていなかった。それなのにずっと探索していたのだからこうなるのは仕方ないだろう。

 ティーレは魔物が出現しないエリアまではって行った。そしてじわじわ減っているHPゲージを見た。


――これは一回死んで町で生き返るしかないっすね。もう体動かないっすし。


 エウロパはそう思って寝転がって目をつぶった。体が浮いていくようだった。



*  *  *  *  *



 ユート達は頼まれた鉱石のマドライトを取りに行くため朽ちた竜ボーンドラゴンに乗って洞窟へと向かっていた。

 すると、周りの景色を眺めていたナハトがユートに向いて口を開いた。


 「ギルマスゥ、マドライトって何?」

 「んー? 聞いた話だとマドライトにに加わったエネルギーをマドライトの質量に変換するらしいよ」

 「へぇ~よく分かんない」

 

 ナハトとユートがそんな話をしていると、リヒスが二人に向かって言った。


 「そろそろ着きますよ」

 『はーい』

  

 二人が返事をすると朽ちた竜ボーンドラゴンが下降をはじめ洞窟の前にとまった。そして、ユート達が降りると朽ちた竜ボーンドラゴンはどこかへ飛び去った。

 ユート達は洞窟に入った。そこには初心者の冒険者達が鉱石を採掘をしに来ていた。

 

 「ギルマス、こんなに冒険者いるのに鉱石採集頼まれたんですか?」

 

 リヒスは洞窟を進んでいるユートに対して聞いた。


 「ゴンドウさんから聞いた話によると、取りに行きたい鉱石がある所までには罠が多すぎて行きたい人が居ないんだって」

 「そう言うことですか」


 リヒスは納得したようにうなづいて足を進めた。まえではしゃいでいるナハトが曲がり角を曲がった。すると……


 「何かいっぱい来た~」

 

 そう言ってナハトが戻ってきた。


――なんでこんなにスケルトンが!


 ユートは心の中でそう叫んだ。

 ナハトの後ろには十五体ほどのスケルトンが道いっぱいに並んでいた。そしてスケルトン達はカタカタ音を立てながら追いかけて来ている。


 「ナハト、どうしてこうなった!?」

 「なんか~スイッチあってポチって押したらこうなった」

 

――さすがギルド一の問題児。


 ユートはため息をついて剣を抜いた。別にこの量ならユート達が苦戦することは無い。すぐに片がついた。


 「もう、これから変なスイッチ押すなよ」

 「わかった~」


 ナハトがそう返事をしたためユートは安心して足を先に進めようとした。しかし


 「おすぅ……」

 「ナハトは押したって言ってるゼ」

 「……え?」


 と言うゴズとイビルの声がするユートがイビルの方を見るとイビルは確かにスイッチをを押していた。そしてまたスケルトンの大群がどこからとも無く現れてまたもやユート達に襲い掛かった。


――またか!


 しかしさっきと同じように一瞬で片がついた。しかし、何回も戦闘をするのはめんどくさい。


 「イビルもこれから変なスイッチおすなよ」

 「わかぁ……」

 「イビルはわかったって言ってるゼ」


 ユートは今度こそ安心して足を前に進めた。ナハトとイビルはリヒスがしっかりと見張っている。


 「リヒスちょっと怖いよ~」

 「こわぁ……」

 「問答無用です!」


――本当にリヒスが居てよかった。


 その後罠もあったが何事も無くユート達は目的の場所にたどり着いた。すると一番前を歩いていたユートが急に立ち止まった。


 「ギルマスどうし……」


 ユートにそう尋ねようとしたリヒスも言葉を失った。目の前には女の人が倒れていた。


 「リヒスこれって罠かな?」

 

 ユートがそう言って後ろにいるリヒスのほうを振り向いた。すると、人影が顔を上げて言った。顔には眼鏡をかけている。


 「罠じゃないっす~それよりも何か食べ物を恵んでくださいっす」


 ユート達は罠じゃないことを確認しカバンの中の食べ物を渡した。すると、ユートが渡した食べ物をすごい早さでかっさらい口に放り込んだ。そして、口の中がなくなった頃に口を開いた。


 「ありがとうっす。私は考古学者のエウロパっす」

 「ねえねえエウロパはこんな所でなにしてんの~」


 ユートがエウロパに訪ねるよりも先にナハトがエウロパに聞いた。


 「もちろん考古学者っすから遺跡を調査しにきたっすよ」

 「何があるんですか?」

 

 少し興味を持ったユートはさらにエウロパに訪ねた。


 「敬語はやめてほしいっす」

 「わかり……わかった」


 ユートが敬語を寸前の所で止めるとエウロパは続きを話し始めた。


 「ここには古代の殺戮兵器を隠れて製造していた跡地があるらしいっす」


 ユートは考え込んだ。


ーーゴンドウさんそんな事言ってたっけ?


 ユートはそう疑問に思いエウロパに尋ねた。


 「もちろん誰も知らないっすよ。私が昔の書物を解読して見つけたっすから」

 「へ~凄いね~」

 「すごぉ……」


 ナハトとイビルがティーレと話しなじめたのでユートはリヒスに話しかけた。


 「どうする? 鉱石は採集したし帰れるけど」

 「その質問は私ではなくあの二人に言った方が……」


――それもそうだな。


 ユートはそう思って、エウロパと話している二人に話しかけた。


 「イビルとナハト、この後どうする? 帰る?」

 「やだ~殺戮兵器見たい~ティーレちゃん良いよね?」

 「もちろんっすよ」


――顔と行ってる事のギャップが……


 「やだぁ……行くぅ……」

 「イビルは帰らないって言ってるゼ」

 「それぐらいはわかるよ」


 二人がそう言うので、ユートとリヒスも着いて行く事にした。


 「じゃあ、行くっすよ」


エウロパがそう言って立ち上がり歩き始めたのでユート達も後ろに着いていった。しかし、すぐに大きな壁の前で立ち止まった。


 「エウロパちゃんここ行き止まりだよ」

 

 ナハトがそう尋ねるとティーレは可愛い笑みを浮かべて言った。


 「まあまあ少し見ておくっす」


エウロパはそう言って何か言葉を唱え始めた。


 「我、世界の滅亡を目ろむ者なり。汝よ我の願いを聞きとげこの扉を開けよ。さすれば必ずや世界を滅ぼして見せよう」


 エウロパがその言葉を唱え終えた瞬間、壁に幾何学的文様が走り壁が開いた。

 そこには研究室のようなものが広がっており、真ん中にはコードに繋がれた殺戮兵器があった。外郭何かの鉱石で覆われている。


 「開いたっすよ」


 そう言うエウロパと一緒にユート達は研究室の中に入っていった。


 「色んな面白そうなのがいっぱいある~」

 「すごぉ……」


 そう言ってはしゃいでいる二人をユートとリヒスは見ていた。そして、ユートとリヒスは壁際のデスクを散策していたエウロパに呼ばれた。


 「どうしたんだ?」


 ユートはそう尋ねるとリヒスとともにエウロパの元へ向かった。

 デスクの上には日誌が広げられていた。ユートはその日誌の文字を追った。月日はかすれていて読むことが出来なかった。


「今日から兵器の制作に取り掛かる。上の考えはよくわからないがやれと言われればやるしかない」


エウロパは次に読めそうなページを見つけて開いた。

 

「今日、兵器の核であるし捨てもが完成した。完成したらどうなってしまうののか恐ろしいが、上の命令には従わなければならない」


「今日で外殻も完成してしまった。この計画を止めるようにと上に掛け合ったが聞く耳を持たなかった。私はいったいどうすれば⋯⋯」


 「今日で最終段階も終了した。しかしこれを起動してはならない、どうにかしなければ」


 「よかった。上のやつらが会議でこの兵器の運用を停止することが決まった。ようやくこいつの恐ろしさに気づいたのだろう。この部屋は閉鎖されることになった。将来のためにこの日記は置いておこうと思う。絶対にスイッチだけは押してならない」


 日誌はここで終わっていた。

 ユート達は全員で書かれているスイッチを探した。


 「あれじゃないですか?」


 リヒスがそう声を上げたのでユートとエウロパはスイッチの方向を向いた。すると遊んでいたナハトもリヒスの声が聞こえたのかスイッチの前に移動してきた。

 そして悪戯っ子の笑みを浮かべてスイッチに手を伸ばした。ユートはナハトを止める為に叫んだ。


 「ナハト! ちょっとま……」


 しかし、残念なことにユートが止めるよりも先にスイッチはナハトによって押されてしまった。


――ということは……


 ガガガガガ!


 嫌な音がしてコードにつ繋がれた殺戮兵器が動き出した。


――結局こうなるのか


 ユートは本日三回目のため息をつき、剣を抜いた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る