第7話

<KBR><KBR>  ルミアが冒険者の国であるマトリックスに来た翌日、ユートは四つ紋議会に呼ばれて、――四つ紋議会とはこの国マトリックスの色々なことをを決めている会議のことだ。開発、商業、戦闘、中小、三つの大手ギルドと一つの中小ギルドから成り立っている――大本部三階へと足を向けた。

 ユートは横のリヒスに話しかけた。イビルとナハトは連れて行くとろくな事にならないのは分かっているので、ルミアとクレイドと共にディスタント・スカイで待機してもらっている。


 ユートは横にいるリヒスに向かって話しかけた。


 「なあ、リヒス俺何かしたかな?」


 リヒスはため息をつきながらこう答えた。


 「はぁ、一国のお姫様を連れてきておいて何言ってるんですか」

 「だよな~」


 ユートはそう言って天井を見上げた。とてもきれいなのだがそんなことはユートにはどうでもよかった。


 「ほら、ギルマス着きましたよ」


 リヒスはユートに向かって言った。目の前には大きな扉があった.

 ユートは覚悟を決めて中に入った。

 そこには真ん中に大きな丸い机があり、その周りに四人の冒険者が座っていた。一人はフィーナだ。

 部屋の周りには各ギルド二ずつ付き添いとして立っていた。そのためこの中には二十人ほどの冒険者がいることになる。そして、真ん中に座っている老人が口を開いた。


 「とりあえず、挨拶から始めようかの、わしの名前はアンプール。戦闘系ギルド陽光騎士団のギルドマスターをしておる」



 陽光騎士団とはこの町で一番大きな戦闘系ギルドだ。そのためこのギルドに入りたがっている冒険者も多いらしい。

 次に髭が毛むくじゃらのおじさんが口を開いた。

 

 「俺の名前は、ゴンドウだ。研究、開発何でもござれ循環機関のギルドマスターをやってる。よろしくな」


 循環機関とはこの町で一番大きな開発系ギルドであり変人が多いことで有名だ。市場の品物の多くはこのギルドのおかげで供給が安定している。

 そして、その隣の若い男の人口を開いた。


 「僕の名前は、アリオスです。商業系ギルド、ハイリターンのギルマスやってます。よろしく」


 ハイリターンとは商業系ギルドでこのギルドに掛かればつばだけの剣ですら売ることができるらしい。

 最後にティーナが口を開いた。


 「知ってると思うけどギルドグリーン・ヒルのギルマスティーナです」

 「名前は……」

 「別に大丈夫じゃ、全員知っておる。ギルドディスタント・スカイのギルドマスターのユートじゃろ。ひょこっと現れてすぐにそこの森をめちゃくちゃにした」


 ユートも自己紹介しようとしたがアンプールに止められた。


――やっぱり、駄目だったか。


 おそらく、アンプールは死の決闘者デス・モルディガイが壊した後、そのままほったらかして帰った森のことを言っているのだろう。


 「すいません」

 「まあ、それは良いが取り合えずエアフ=ドルトムントの姫、ルミア=ミュレッドを何故この国に連れてきた理由を聞かせてもらおうか」


ーーここからはおれのしごとかな


ユートはそう思って大きく深呼吸をして前を向いた。


 「実は……」


 ユートは四人に向かって説明を始めた――。



 「……というわけで、外の世界が見たいというので連れてきたしだいです」

 「なるほどのぉ」

 「そう言うことか!」

 「ふ~ん」

 「そう言うことやったんやね」


 ユートが説明を終えた後四人のギルドマスターはいっせいに頷いた。悪い反応ではないのでユートは胸を撫で下ろした。どうにか最悪は免れたようだ。


 「よく分かった。さて、今後どうするかじゃが……。ゴンドウどう思う?」

 「俺は良いと思うぜ! 大歓迎だ!」


 アンプールはため息をついた後アリオスに向かって問い掛けた。いつもこういう人なのだろう。


 「そう言うことを聞いているのではないのじゃが。アリオスはどうじゃ?」

 「そうですね、僕的には商売の利益さえ出れば良いです。同じく大歓迎ですね」

 「そうか、最後にフィーナどうじゃ?」

 「私も、新しい人が増えるのには歓迎ですよ~」


 ユートは四人のギルドマスターがルミアがこの町に来たことに肯定的な意見のため安心した。そして、アンプールが言った。


 「まあ、わしもルミア嬢がこの町に来ることに否定的ではない。この町にも新しい時期が来たんじゃろう」

 「ということは……」

 「じゃが」


 ユートは期待をこめて返答を進めたが途中で遮られた。そしてアンプールは言葉を続けた。目には意地悪な光が宿っている。


 「じゃが、外交官をするとなると、やはり担当を作らなくてはいけないのぉ~」

 「そうだな。適任は……」

 「連れてきた人が……」

 「そうやな。じゃあ……」


 四人の顔がユートの方に向いたのでユートから冷たい汗が流れ落ちた。


 ――まさか……


 「では、今からユートを四つ紋議会の外交担当とする。それにより四つ紋議会を五つ紋議会とする! 以上解散じゃ」

 「妥当な決定ですね」


 リヒスはユートに向かってそう言った。ユートはため息をついてその返答に答えた。


 「俺もそう思う」


 そして、ユートは帰ろうとしているゴンドウを呼び止めた。

 

 「ゴンドウさん」

 「ん? どうした?」

 「ゴンドウさんのギルドにディスタント・スカイの増築をお願いしたいんですけど……」


 ユートがここに来た目的の八割はゴンドウにディスタント・スカイの増築をお願いするためだ。

 ルミアとクレイドがギルドに来たので部屋数が足りない。そのためにギルドの部屋数を増やしたいがユート達の中にはそれが出来るものはいなかった。

 ユートはゴンドウの名前だけは他の冒険者から聞いて知っていた。


 「ゴンドウで良いぞ。ギルドの増築か。任せろ」


 二言で返事をしたゴンドウをユートは自分のギルドのディスタント・スカイに連れて行った。



 「なるほどここだな」


 ゴンドウはディスタント・スカイの中にはいって呟いた。他の四人は買い物にいってここには三人しかいない。

  一回にキッチンとリビングがあり、二階にイビルとナハトの部屋が三階にはリヒスとユートの部屋がある。その上は屋上になっているため、ユートはクレイドと二人一部屋になってしまう。さらに外交担当になってしまったため来客用に部屋が欲しかった。


 「どうですか?」


 ユートはなんだか悩んでいそうなガイドに問いかけた。


 「ん~とりあえず、部屋がお前達の六部屋と来客があったときに一部屋欲しいんだよな」

 「そうですね」

 「それだと少しバランスが悪いからもう一つ部屋が出来るけど問題ないか?」

 「いいですよ」


 ユートがそう答えたとき玄関のドアが開いて四人が帰ってきた。


 「おかえり」

 「邪魔してるぜ」


 ユートとゴンドウは四人に向かって言った。みんなにゴンドウが来る事は伝えてあるのでそこまで驚く様子は無かった。

 四人は挨拶を返した後、ゴンドウはユートに向かって言った。


 「増築費用の代わりに依頼をお願いしたいんだがいいか?」

 「良いですけど……内容は?」

 「洞窟に行ってある鉱石を取ってきて欲しいんだ。最近人手が足りなくてな。どうせ増築に一日掛かるからその間に頼む」

 「良いですよ」


 そう言うことなら、とユートはゴンドウに返事を返した。すると詳しい話を聞いていたユートに、ナハトは乗っかっていった。


 「何面白そうな話してるの~ナハトちゃんも行きたいな」

 「行くのは良いんだけど、おりて」


 ユートはナハトにそう言ったが、ナハトは聞こえない振りをしている。ユートは諦めてイビルとリヒスに向かって言った。


 「二人はどうする?」

 「私も行きたいです」

 「わたぁ……もぉ……」

 「イビルは行きたいって言ってるゼ」


 二人がそう言うので四人で鉱石を取りに行くことにした。


 「二人はどうしますか?」


 リヒスは二人に向かって言った。洞窟で万が一のことがあったら困るため、さすがににルミアを連れて行く事は出来ない。そのことをルミアは良くわかっていた。

 

 「どうします? クレイド」

 「そうですね、ルミアはどうしたいんですか?」


 ルミアは頭をうならせた。このまま街の中で待つことも出来るが、ルミアとしては一度は外で泊まってみたかった。

 その気持ちを見透かしたようにゴンドウがルミアに言った。


 「外に行きたそうな顔してるな。それなら妖精の森フェアリー・フォレストに行けば良いんじゃないか?」

 「なんですかそれ!」


 ルミアはゴンドウに向かって聞いた。とても興奮している。


 「ここから少し行った先に妖精の森フェアリー・フォレストがあるんだが、その森の中は妖精が見張っているらしく魔物が襲ってこないんだ。綺麗な湖もあるし初心者の冒険者も沢山いるしどうだ?」


 そうルミアに聞いたが最後の問いかけはユートに向かって言っていた。


 「行っても良いよ。確か倉庫にテントがあったから使って」

 「分かりました」


 クレイドがそう返事をした。ルミアはとてもうれしそうにしている。それを見ていたゴンドウが何かを思い出したように立ち上がった。


 「やべぇ! 仕事忘れ忘れてた!」


 そう言ってとても慌てた様子で出て行った。その後ろ姿をユートはポカンと眺めていた。そして


 「さて、夜ご飯でも作りましょうか」


 リヒスがみんなに対してそう言った。


 「ナハトちゃんも手伝う~」

 「イビルもぉ……」

 「もちろん私も」

 「おや、ルミアが行くのならば私も行かないと大変な事になりますね」

 「それはひどいですよ~クレイド」


 ユートはそう言うみんなを眺めていた。そして


 「それじゃあ俺も」


 そう言って手伝いに参加した。



 「じゃあ、明日、また迎えに来るから」


 ユート達はルミアとクレイドを朽ちた竜ボーンドラゴン妖精の森フェアリー・フォレストの入り口まで送った。


 「分かりました」

 

 ルミアがそう言うとユートは朽ちた竜ボーンドラゴンに乗って洞窟へと向かった。

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