第2話

ユート達は戦闘用の装備に着替えて外へと出た。

 外には綺麗な川が流れ、空には雲が悠々と流れているーー。

 それを目の当たりにしたユートは感歎の息を漏らした。他の三人はゲームのころに見慣れているらしく、そこまで驚いていないようだ。ユートには電信柱の林だっため物珍しい景色だ。周りには駆け出しの冒険者達が、大きな鼠のようなモンスターと戦って苦戦をしていた。あればサンドラットだろう


ーーやっぱり、自然っていいよな。俺の家の近くは自然なんてなかったからな。


 ユートはそのままボーっと周りを見ていたかったが、ナハトが早く行きたいと手を引っ張ってせかしてくるので先を急ぐことにした。

 今回は☆3ランクのドレイン・アイビーを討伐する依頼だ。討伐場所も近く、生えている場所を動かないというので、ユートはこれを選んだ。最初の依頼でわざわざ難しい物を受ける必要はない。

 ユート達は依頼とともに張ってあった地図を頼りに目的の場所へと向かっていた。その場所までは、1時間も歩けばつく予定だ。


 「そういえばさ、ギルマスって守護神ゴッド・ガーディアンだから鎧着てるけど重くないの?」


 ユートの職業は守護神ゴッド・ガーディアン

守護神ゴッド・ガーディアンとは<メトロポリス>の主な職業の一つで、一番前に出て敵の攻撃を惹き付け、味方を守る職業だそのために、大きな鎧を着ている。そのため日本で普通に過ごしている大学生が持てる様な物ではない。


 「いや、ぜんぜん重くないよ」


 ユートはそう言って足から首まで鎧で覆われている自分の体を眺めた。


ーー実際、ぜんぜん重くないんだよな。かなりの重量あると思うんだけど。冒険者だから身体能力もあがってるのかな?


 途中で魔物を何匹か見たが、どれもユート達に攻撃を仕掛けてくる者はいなかった。魔物達も、ユート達が強者なのを本能的に感じ取っていたらしい。おかげで、ユート達は立ち止まることなく目的のいるところまでたどり着く事ができた。



 そこには、大きな蔓とその上に大きな口のついた花が地面から生えていた。辺りにはなんとも言えない臭いが漂っており。その異様な見た目とその臭いにユートは少し怖気づいた。


ーーやばい……


 ユートの視界はどんどん狭まり、呼吸も荒くなっていった。そして、足がガクガクふるえはじめた。

 しかし、残りの三人はゲームのころに見なれているため、驚いていなかった。そして、ユートに心配そうな目を向けていた。そんな三人を見てユートは三人にこんな目をさせてはならないと思い、そして気持ちを落ち着かせた。


ーーそうか、俺はギルマスなんだ。こんな事で怖じ気づいていたら駄目だ。


 そして、ユートは覚悟を決めみんなを見渡し言った。ユートの顔は先ほどとはうってかわってしっかりとした表情だった。


 「みんな、もう大丈夫。行くか」

 「もっちろん」

 「わかりました」

 「わかぁ……」

 「行くかゴズ」

 「そうだなメズ」


 そして、異世界に転生して最初の戦いが始まった。ドレイン・アイビーもユート達を敵だと認識したようだ。


 「ヘイトコネクト!」


 ユートがゲームのときに良く使っていた、そしてこれからもお世話になるであろうスキルの名前を叫んだ。


――よし、スキルもしっかりと発動するみたいだ。


 ユートが安心した次の瞬間。


 キシャァァァァ!


 そう叫んだドレイン・アイビーの蔦が、すごいスピード飛んできた。しかしユートは、現実世界であれば有り得ないような反射神経で蔦を盾で防いだ。


 ガキィィィィン!


 ユートが防いだ盾とドレイン・アイビーの蔦がぶつかり合う音が響いた。

 ユートは、少しダメージをくらったが、すぐさまリヒスが回復魔法を放ち、ユートの体を温かい緑色の光が包み込んだ。他の3人も光に包まれている。


――危ない、戦闘に集中しないと。でも、身体能力が格段に上がってるな。痛みもそんなに感じないし。

 ユートが顔に受けた傷はもう直っていた。

 ユートがドレイン・アイビーのを刺激して他の三人を守っていると、後ろからゴズメズが現れ、手に持っている棍で敵の頭を殴りつけた。敵はひるんだが倒れる様子は全く見れない。

 ――ゴズメズはイビルが連れていたゴズとメズが合体した姿だ――イビルは新しい死霊を召喚するために呪文を唱えた。


 「下級モンスター……召喚……スケルトン」


 イビルの下の地面から十体ほどの骸骨の騎士達が這い上がってきた。手には錆びれた剣を持っている。そしてドレイン・アイビーに突進していった。

 ドレイン・アイビーが、スケルトンを振り這うかのように地面すれすれに蔦をなぎ払った。ユートは横からの攻撃のため盾で防ぐのが遅れた。


――当たる!


 ユートはそう思った。だが、ユートに当たる直前に蔦が根元から断ち切られ、飛んでいった。


 「ギルマスゥ、もっと気を付けないと」

 「ごめん」


 そういってナハトは消えた。正確には、ユートが見えないほどの速さで移動したのだ。次の瞬間にはナハトがもう一本、蔦を根元から吹き飛ばしていた。血のような緑色の液体が出ていたが、VRゲームの中でも血などは表現されていたため、ユートは気にしなかった。


 キシャァァァ!  


 ドレイン・アイビーは体力の限界を感じて最後の叫び声を上げた。そして、発狂したように、辺りかまわず蔦を振り回しはじめた。


 「うる……さい……上級モンスター……死の決闘者デス・モルディガイ召喚……」


 その様子を後ろから見ていたイビルは死の決闘者デス・モルディガイを召喚した。

 そして。またもやイビルの下から骸骨の騎士が這い上がってきた。さっきのスケルトンとは違い、多くの戦いを切り抜けたような装備を身に付けており、どこか威厳を感じる風貌だった。そしてイビルの前に跪づきイビルに問いかけた。


 「イビル様、ゴヨウケンヲ」


 そして、死の決闘者デス・モルディガイを、イビルが呼び出したとき、ユートはナハトに言った。


 「ナハト、離れといたほうが良いぞ」

 「何で?」


 とナハトは問いかけたがイビルの前に跪いている死の決闘者デス・モルディガイを見て全てを察した。


 「わかった」


 そう言ってナハトはドレイン・アイビーのそばを離れた。

 ナハトが離れるのを確認した後、イビルはドレイン・アイビーを指差した。そして、ドレイン・アイビーを見た死の決闘者デス・モルディガイの目に赤い光が宿った。


 「あいつ……倒す……」

 「ショウチイタシマシタ」


 そして、てスケルトンの残骸が散らばっている所まで行くと、スケルトンの残骸に向かって言った。


 「オイ、オマエタチヨ、イツマデネテイルツモリダ?」


 そうすると、ドレイン・アイビーによって倒されたスケルトン達が、起き上がった。そしてに向かって突進した。

 そして、その後ろからゆっくりと死の決闘者デス・モルディガイはドレイン・アイビーに近づい行き、ドレイン・アイビーに向かって言った。


 「イビル様ノ、メイレイニヨリオマエヲタオス。オマエハツヨイモノカ?」


 そう言って死の決闘者デス・モルディガイは引きずっていた剣を振り下ろした。

 振り下ろした際、すごい風と衝撃がほとばしった、そして辺りの木が音を立てて折れた。

 ユートは思わず目をつぶった……そして、目を開けるとドレイン・アイビーは根本から真っ二つにわかれていた。


 「アッケナカッタナ」


 そう言って死の決闘者デス・モルディガイは土の中へと消えていった。


ーーやっぱり、三恐の強さは伊達じゃないな。


 ーー三恐とは、ユートが付けた名前で、イビルが従えているモンスターの中で、特に強いモンスターのことだ。従えさせるには特別なクエストをクリアしなければならず、その難易度はとても高めに設定されている。しかし、従えたときの強さは他のモンスターと比較にならない程のステータスになっている。そのため、ユートはその三体を三恐と呼んでいるのだーー





 ユート達は依頼の報告も終えて、買い物をしていた。そこでさっき大本部の場所を教えてくれた女性に出会った。


 「さっきの子達やん。どうやった? 依頼はうけれた?」

 「はい。おかげで何とかなりました」

 「それなら良かった~。そうや、今から君達の歓迎会を私のギルドでやろうと思って来てくれる? お隣やし、仲良くしたいしね」

 「そうなんですか! 行きます」

 「ナハトも行きた~い」

 「行くぅ…」

 「行きたいよナ。ゴズ」

 「ああ、そうだナ。メズ」

 「もちろん、私も」

 「わかった~全員参加だね~」


 全員で参加することになった。




 歓迎会が始まり、このギルドについての説明を受けた。

 このギルドは中堅ギルドでメンバーは15人。さっき、歓迎会に誘ってくれた女性がギルマスで名前ティーナ。ギルマスなだけあって最高レベルの90で職業は精霊使い。この企画もこの人がたてたらしい。


 「はじめまして。私はギルマスの秘書官をしているフィナです」


 そう言って、綺麗な女性がユートに話しかけて来た。


 「はじめまして、ギルド、ディスタンス・スカイのギルマスユートです。よろしくお願いします」


 そう言って挨拶をしているとフィナが何かを言いたそうにもじもじしているので、ユートはフィナに理由を聞いた。すると……


 「すいませんその、ナハトちゃんとイビルさんをすこしお借りしても良いですか?」

 「別に、いいですけど」 


 ユートが答えきるよりも早くフィナは二人を連れて、扉の向こうに行ってしまった。


 「あら~かわいそうに。フィナに捕まっちゃった」


 ティーナがそう言うのでユートはたずねた。


 「どうしてですか?」

 「フィナは優秀で良い子なんやけど可愛い娘に目が無くて。今頃はいろんな服を着せられてるんと違うんかな」


 ユートは申し訳ないことをしたと思った。しかしもうどうしようもないので頭を切り替えた。


 そのまま、夜になって歓迎会はお開きになった。


 「ギルマス~もっと飲みましょうよ」 


 リヒスが酒に弱いのをすっかり忘れていたユートがリヒスをかついで帰った。


ーー重いし、胸が背中に当たるし、ヤバイ。


 二人に助けを求めたがまださっきのことを気にしているらしくユートを無視し先にギルドへ帰ってしまった。

 ユートは仕方なくひとりでリヒスを担いで帰り、ベッドに寝かしつけた後、自分のベッドに入った。


ーーとりあえずこの世界で生きていこう。元の世界には……一応方法を探しとくか。


 そして、眠りに着いた……

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