第37話 予期せぬ訪問者
仕方ない…取り敢えずリビングで話をするか…。
あっ、ダメだ…リビングからは洗濯物が丸見えだ!僕の下着も干されてる!
「じゃあ、私の部屋で…」
僕の後ろをゾロゾロと四人の男がついて来た。
あっ、ダメだ!階段を先に上ったらパンツが丸見えだ!
「私の部屋は、階段を上がって右のドアだから先に入っていて、飲み物を持って行くから」
ヤバかった…気付くのが遅かったらスカートの中を覗かれるところだった…学校で見られていたのは見せパンだったけど、今穿いてるのは、ガチの下着で、しかもかなりエロいヤツだ。
「だったら、僕も手伝うよ」
やはり前田は優しい…まあ、前田なら洗濯物を見られてもいいか。
僕と一緒にリビングに入った前田は、干されている僕の下着を発見したが目を背けてくれた。
「あっ、ノートを持っていたら運べないだろ?…僕が全部運ぶよ」
前田はコップが五個も載っているトレイを一人で持ってくれた…優しいな。
前田ならスカートの中を覗く事はないから、先に階段を上がってドアを開いてあげよう。
僕が自分の部屋のドアを開くと、部屋の中が地獄絵図になっていた。
宮崎がクローゼットの中を覗いていて、田中はドレッサーを漁ってる、そして、大島は僕のブラとショーツを両手に持っていた…。
「何してるの!」
「えっ!クローゼットの扉が開けっ放しになってたから…」
「ドレッサーの椅子に座ってるだけだよ」
「ベッドの上に置いてあったから、退かそうと思って…」
………。
僕は取り合えず、大島から下着を奪い返し、宮崎を退かしてクローゼットの中に下着を仕舞い扉を閉めた。
流石、プロのむっつりスケベだ…田中には何も出来ない…。
「お前ら、勝手に僕について来て、何してるんだ!」
前田が真っ赤な顔で、僕に代わって大島たちを叱ってくれた。
ありが…えっ…両手でトレイを持っている前田の股間が膨らんでいる…。
お前も、階段を上る僕のスカートの中を覗いていたのか…。
前田の言葉から説得力が喪失した。
もう、怒る気力がなくなった…玄関で用事を済まそう思っていた僕が、クローゼットを開けっ放しにしていたり、脱いだ下着をベッドの上に置きっ放しにしていた事が悪かったんだ…。
と言うか、お前ら僕の胸を見過ぎだよ。
「取り合えず、ノートありがとう…ところで、三人は何しに来たの?」
「前田がゆきり…いや、みかりんの家に行こうか迷っていて相談してきたから…」
「そうそう、月曜でいいって言われたって聞いたから、それは、みかりんが遠慮してるだけだって…なあ」
「そう!」
相談する相手が悪い…と言うか、僕のあだ名は「みかりん」になったのか…ゆきりんの「りん」は残すんだ…。
「でも、わざわざ来てくれたんだから、ジュースくらい飲んで帰って」
僕は勉強机の椅子に腰掛けた。
そして、三人がベッドに座ると、何故かドレッサーの椅子に座っていた田中もベッドに座り直した。
大きな男が四人並んでシングルベッドに座る光景は滑稽だ…まるで、電線に止まっているカラスだ…んっ…皆の視線が僕の下半身に集中している。
えっ!キャミワンピのスカートがずり上がって、パンツがモロに見えてる!
僕は慌てて、前田から借りたノートを太ももの上に置いてパンツを隠した。
四人の男子は一斉に僕から目を反らせた。
恥ずかしい…だから、田中はわざわざベッドに座り直したのか…。
動きがスムーズ過ぎて、気づかなかった…流石、プロのむっつりスケベだ。
「ところで、そのカツラは学校に着けていくのか?」
田中が何もなかったかのように話題を変えた。
「うん、こっちのショートボブの方を着けて行くつもりだけど」
「へえ、じゃあ、つけたところを見せてくれよ」
「面倒臭いから、嫌だよ…それに、月曜になれば見れるんだから」
「えー、いいじゃん!」
もう、面倒臭いな…でも、ドレッサーの椅子に座り直すチャンスかも。
「分かったよ」
僕はスカートの中を見られないように注意しながらドレッサーの椅子に移動し、男子たちに背を向けて座った。
まず、地毛をブラッシングして、ヘアピンで前髪を留めて、ウィッグを専用のブラシで梳かしてから、前髪の位置を合わせて被る、そして、最後にブラシで整えて…出来た!
「こんな感じだけど…どう?…あんまり変わらないでしょ?」
僕はパンツを見られないように上半身だけを彼らの方に向けると、男子たちは驚いた表情のまま固まっていた。
「うわっ!急に可愛くなった!」
「凄い!凄く似合ってるよ!みかりん!」
「うん!絶対そっちの方が良いよ!」
「昔の橋本奈々未にそっくりだ!て言うか、ななみんより可愛いかも!」
男子たちは僕のウィッグ姿を大絶賛してくれた。
面と向かって褒められると恥ずかしい…。
「そっちのロングの方も見てみたい!」
褒められると弱い…。
僕は被っていたショートボブのウィッグを脱いで、専用のウィッグスタンドに被せ、セミロングのウィッグを被った。
「凄い!全然別人になった!」
「こっちの方が良いよ!」
「いや、短い方が似合ってると思うけどな…」
「女優の何とかさんに似てる…えー…思い出せない…」
誰に似ているんだよ、宮崎…。
「ピンポーン!」
また、誰かが来たようだ…。
「美花音!中学のお友達が来たわよ!」
えっ、誰だ?全く心当たりがない…。
「はーい!」
「部屋を出て行くけど、何処にも触っちゃダメだからね!」
僕は男子たちに釘を刺してから部屋を出た。
誰だろう?
玄関には、昨日ドーナツ屋さんで話をした中田さんと仲川さんと松原さんと中谷さんが立っていた。
「キャー!可愛い!」
四人の女子たちは、昨日会ったばかりなのに、初めて会った時と同じリアクションで興奮していた。
「いらっしゃい…何か約束してた?」
「違うの、昨日別れた後、誰も美花音ちゃんの連絡先を知らなかったら、直接聞こうって話になって…」
あっ、そうか、中三の頃の僕は女子を遠ざけていたので、IDとかアカウントを全部変えて、新しいのを家族と一部の男子にしか教えていなかった。
当時の僕は、受験や女子の事や体の女性化の事で精神的に病んでいたんだ。
でも、丁度良かった、あいつらを帰す口実が出来た。
「ちょと待っててね、今、お客さんが来ていて」
「ごめんなさい!突然、来ちゃって!」
「大丈夫!丁度、帰るところだから」
僕は直ぐに自分の部屋に戻った。
「ごめん!中学の友達と約束してたんだ!今日はノートを持って来てくれてありがとう!」
僕は一方的に感謝を述べて、男子たちを部屋から追い出す事に成功した。
すると、玄関で男子と女子の四人組同士が鉢合わせをした。
何だ?この空気は?…あっ、紹介しろって事か…。
面倒臭い…。
僕は合コンの幹事のように、それぞれのメンバーを紹介した…あっ、勿論、僕は合コンに参加した事も幹事になったこともなかったが…。
「じゃあ、上がって!…それじゃあ、また月曜日…今日はありがとう!」
やっと、男子たちを追い払えた…。
「おじゃまします」
今度は女子か…。
「狭いけど、私の部屋でいい?」
「もちろん!」
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