第25話 女の子になって…三日目
水曜日の朝がやって来た。
今日はシャワーをやめておこう…。
悠斗に今朝も背中にボディクリームを塗るようにお願いしてしまった…。
ボディクリームを塗っても、おっぱいを触らせないと言ったけど、今日も触らせてくれって言われたらどうしよう…。
しかし、僕の心配は杞憂に終わった…洗顔とスキンケアが済んでも悠斗が洗面所にやってくる事はなかった。
現金な奴だ…おっぱいが触れないと分かれば僕には用がないようだ…でも、良かった、昨日みたいに胸を揉まれてエッチのスイッチが入ったら大変だ。
自分の部屋に戻った僕は、着て行く洋服に迷っていた。
毎朝の恒例行事だな…。
昨日、先生から
「女子事務員の格好で通学してもらって助かる」
と言われていた僕は、今日も普通のOLさんっぽい洋服を着るつもりだった。
しかし、昨日、従姉妹たちの前でしたファッションショーで、自分には可愛い系の洋服が似合わない事に気付かされていた。
それに、履いて行く靴はローファーしかない…。
ローファーとベリーショートの髪型に合うコーディネートって何だろう?
色々と悩んだ結果、僕にはパンツスタイルや制服のような、かっちりとした洋服しか似合わない事に気づいた。
せめて、女らしい靴を持っていれば、バリエーションも増えるのに…。
結果的に僕は、昨日とよく似た格好で登校する事にした。
うん!いいかも!大人な感じだ、少なくとも女子高生には見えない。
あれっ、股間が痛い…。
僕は精巣に激痛を感じ、穿いていたパンツを一旦脱いで、下半身裸になった。
下着の締め付けから解放された事で、精巣からの激痛はなくなっていた。
やっぱり、毎日ガードルで股間を潰すのは体に悪いのかも…。
でも、ガードルで股間を潰さないと、女物のパンツは穿けないし…。
僕はゆっくりとガードルを穿いてみた。
うん、痛みはない…たまたま金玉の位置が悪かっただけだな…。
僕は小嶋先輩にプレゼントする洋服を紙袋に入れ家を出た。
女の格好で外を歩くのも、今日で三日目だ…慣れとは怖いな…全然、緊張しなくなった。
校門で、生徒指導の渡辺先生と目が合った…あれっ、今日は僕に話しかけて来た。
「柏木君、今日の昼休みに職員室まで来てくれないか」
呼び出しだ…恐らく、昨日の尾崎先生の件だ…。
「はい…」
僕が神妙な顔で返事をすると、渡辺先生は柔らかい表情で
「昼食が終わってからでいいから」
と言葉を付け足した。
尾崎先生の件じゃないのかも…新しい制服の件かな?
僕がエントランスホールに入ると、女子事務員さんたちが笑顔で挨拶をしてくれた。
僕は彼女たちのヒーローになっていた…あっ、僕は女だからヒロインかな?
そして、上履きに履き替える為に下駄箱を開けると、昨日と同様に封筒が五通も入っていた。
今日は事務封筒じゃないんだ。
どうか、告白の手紙じゃありませんように…。
僕は封筒をバッグに仕舞い、教室に入るとクラスメイトたちが寄って来た。
「ゆきりん!大変だ!変な噂が立ってるよ!」
大島が真剣な表情で言ってきた。
僕には、性転換手術を受けたという変な噂が立っていたが、僕の新しい噂は更にとんでもない物だった。
何と、僕が尾崎先生にレイプされた事になっていた。
昨日の昼休みに、僕専用の更衣室になった空き教室で、僕が尾崎先生にレイプされたという内容だった。
根も葉もない噂だったが、泣き顔の僕が更衣室から出て来た事と、尾崎先生が辞職した事を結び付けた噂だった。
確かに、セクハラをしただけで先生が辞職するのは、男性社会の日本では不自然な事だった。
クラスメイトたちは、噂を否定してくれたそうだが、他のクラスの男子たちは噂の方を信じている様子だった。
噂を必死に否定すれば、余計に信憑性が出てくる…。
僕は噂を無視する事にした。
しかし、通学時のパンツスタイルのまま授業を受けている僕を見た他のクラスの男子たちは
「レイプのショックでズボンしか穿けないんだ…」
と噂した。
面倒くさい…。
僕は噂を否定する為に、女子の制服に着替える事にした。
僕の手元には、今日も女子の制服が集まっていた。
そして、何故か今日も水着が何着も紛れ込んでいた。
誰か知らないが、僕に水着姿で授業を受けさせようとしている奴がいるようだ。
僕は水着を無視して、制服だけを検品した。
昨日は二着しか、着られる制服がなかったが、今日集まった制服はレベルの高い物が多かった。
でも、サイズが違う…。
僕が呟くと、男子たちは
「だって、サイズが分からないから仕方ないよ!」
と言って、僕の服のサイズを確認してきた。
確かに、男子たちのプレゼントしてくれた制服の中には、お下がりではなく新たに購入したと思われる物も多くあり、彼らに無駄遣いをさせるのも悪い気がした。
僕は、やむを得ず自分の体のサイズを公表した。
宮崎!ニヤニヤしながらメモるなよ!
男子たちは、僕のバストとヒップのサイズに盛り上がったが、ウエストと股下のサイズには関心がないようだった。
女性と真逆の反応だ。
「それで、胸は何カップなんだ?」
どさくさに紛れて、田中が真剣な表情で聞いてきた。
洋服を買うのにブラジャーのカップ数は関係ないし、もし、ブラジャーを買ってくれるならアンダーバストのサイズが分からないと正しいサイズのブラジャーは買えない。
そんな真剣な顔をするなよ…田中…。
しかし、こいつのエロに対する真摯な姿勢は逆に好感が持てる。
いつまでも胸の大きさを隠す必要もないか…。
「一応、Dカップだけど…」
「うおーー!」「当たった!」「凄い!85でDカップか!」「白石麻衣と一緒だ!」
僕の正解発表に男子たちは盛り上がった。
と言うか、白石麻衣ってDカップだったのか!
結局、みんな僕の胸のサイズが知りたかっただけか…でも、犬みたいに喜んでる男子たちは可愛いから許してあげよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます