第14話 女の子になって…二日目

 火曜日の朝がやって来た。


 今日も僕は早起きをして、シャワーを浴びていた。


 しかし、昨日の僕と今日の僕とは、別人と言っていい程に変化していた。


 まず、顔の印象が全く違っていて、輪郭や表情が女性的になり、肌は透き通るように白く、何より眉毛が整えられていて、僕の顔からは男らしさがなくなっていた。


 これで、前髪で眉を隠さなくても大丈夫だ。


 そして、体全体が白くスベスベした肌になり、体毛が一切生えてない状態だった。


 更に、一番変化したのは乳房だった。


 僕の乳房は、かなり柔らかくなっていて、触ると痛かった乳首の痛みがなくなっていた。


 これなら触られても大丈夫だ。


 って誰に触られせるんだよ…。


 きっと、あのエステは相当高価な物だったのだろう。


 僕はエステが終わった後、伯母に感謝したが、伯母も僕の変化に驚き、費用対効果の高さに満足した様子だった。


 これからは、この状態をなるべく長くキープしなくては…。


 僕は昨日買ってもらった化粧水と乳液を顔に塗った。


 そして、保湿と紫外線カットの効果のあるボディクリームを全身に塗る事にした。


 三日坊主にならないように気を付けないと。


 すると、突然洗面所のドアが開いた。


「あっ!ごめん!」


 弟の遥斗だ。


 遥斗は驚いた表情でドアを閉めた。


「顔を洗うんでしょ?洗面台は使ってないから入って来なよ」


 僕が廊下にいる遥斗に言うと、遥斗は

「いいよ!後で洗うから…」

と言って逃げて行った。


 おかしな奴だ、先週までは一緒に並んで歯を磨いていたのに…。


 ダメだ…背中にクリームが塗れない…遥斗に頼めば良かった。


 でも、いいか…背中は露出しないし。


 僕は、改めて鏡に映った顔を確認した。


 スッピンでも女の子に見える!


 これなら、朝の忙しい母に頼まなくても、自分でメイクが出来そうだ。


 そして、僕がブラジャーを付けると、カップから乳房が溢れていた。


 えっ!ブラが小さい?…おっぱいが大きくなってる?!


 マッサージをされたから?


 僕はブラジャーを外して、カップの裏からパッドを抜き、もう一度、ブラジャーを装着してみた。


 ぴったりだ!僕の乳房は正真正銘のDカップになってる!


 エステって凄い!


 嬉しくなった僕は、ガードルを穿いてキッチンに向かった。


「母さん、凄いよ!エステって!見て、大きくなってる!」


 僕は大きくなった胸と、ブラジャーから抜いたパッドを見せながら、母におっぱいが大きくなった事を報告していた。


 何だろう…この感覚、母親にこんな話をするのは初めてだ。


 母との距離感が縮まってる…?


 すると、母は僕のブラジャーの肩紐の長さを調節しながら

「本当ね!でも、日によって大きさが変わるから、パッドは捨てちゃダメよ」

と言ってくれた。


 おっぱいの大きさって、日によって変動するのか…そうだ、生理の周期で大きさが変わるって話を聞いた事がある…一生、生理の来ない僕でも、毎日大きさが変わるのかな?


 あっ、忙しい母の手を止めてしまった…。


「母さん、メイクは自分でするよ!」


「大丈夫なの?」


「うん!自分で出来るようにならないとね」


「そう、分かった」


 すると、リビングに遥斗がいたので

「遥斗、洗面所空いたよ!」

と声を掛けると、遥斗は僕と目も合わさずに

「母さんとの会話を聞いてたから、そんな事、言われなくても分かるよ!それに、そんな格好でウロウロするなよ!」

と言い返して来た。


 何を怒ってるんだ?反抗期だな。


 僕は二階の自分の部屋に戻りメイクをした。


 問題は学校に着て行く服だ…。


 昨日はクラスメイトたちに、スカートをリクエストされたけど、どうしよう…。


 僕のワードローブは、昨日、伯母から貰った従姉妹たちのお下がりで爆発的に増えていた。


 ダンボール3箱分の洋服は多すぎて、まだ一箱分しか整理出来ていなかった。


 また、お下がりのほとんどが、女子大に通う長女の理絵の物だった。


 理絵は洋服を多く持っているようで、お下がりなのに数回しか着ていない洋服ばかりで、中にはタグが付いたままの新品まであった。


 やっぱり、社長令嬢は違うな。


 僕と理絵とは身長差が20センチ程あり、その身長差のほとんどが脚の長さだったので、パンツ類はサイズ的にアウトだった。


 因みに、手足が長く成長するクラインフェルター症候群の僕は、股下のサイズが88センチもあり、同じ身長の男子と比較しても股下が10センチくらい長かった。


 また、靴のサイズも小さすぎたので、全て母の物になってしまった。


 しかし、それでも洋服の量は膨大で、登校までの短時間で一着だけを選ぶ事は困難だった。


 トップスは、胸元にリボンがある半袖のブラウスで良いとして、問題はボトムスだ…。


 あっ、このタイトスカートは良いかもしれない。


 でも、やっぱりスカートには違和感がある…ズボンと同じように足を通すけど、スカスカで何かを空振りした感じだ。


 う~ん…悪くないけど、これじゃあ生徒と言うより先生だな。


 それに、合わせる靴がない…この格好に学校指定の靴や靴下はダサ過ぎる。


 僕は学校から登校時の服装は自由にして良いと言われていたが、靴下だけは自由にしてはいけない気がしていた。


 それは、生徒指導の渡辺先生が、やたらと靴下にうるさいからだった。


 きっと、クラスメイトのリクエストはミニスカートなんだろうな…。


 となると、このフレアスカートか…うわっ、短い…きっと理絵には丁度いい長さのミニスカートなんだろうけど、僕が穿くとマイクロミニになってしまう…。


 うっ…パンツが丸見えだ…可愛いショーツだったら見られても平気だけど、ショーツを穿くと股間がもっこりして可愛くないし、もっこりした股間を見られるのは絶対に嫌だ。


 と言って、このベージュのガードルを見られるのも嫌だし…。


 あっ、あれを穿けばイケるかも…あった、黒のペチコートパンツ!


 俗に言う見せパンだ…うん!いいかも!フリルの段々が可愛い!ガードルもはみ出してないし。


 でも、制服感がないな…それにトップスとも合ってないし…。


 えっ!もう、こんな時間だ!


 僕は、やむを得ず、昨日と同じスラックスを穿く事にした。


 これなら就活中の女子大生に見えるし、昨日のネクタイとブレザーの組み合わせみたいな男装感もない、これでいいか。


 予備としてカバンにミニスカートと見せパンを入れて行こう。


 あっ、今日も体育があったんだ、昨日買って貰ったスポーツブラも忘れずに。


 僕は軽く朝食を済ませ、母にメイクの手直しをされてから家を出た。


 皆がっかりするだろうな…。

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