第8話 女の子は魔法使い
一時間目の授業が終わった。
「起立!礼!着席!」
僕の席よりも後ろの生徒は、しっかりと起立しないで中腰の姿勢だった。
どうやら他の部分が起立しているのだろう。
可愛い!
さあ、二時間目は体育だ。
僕は教室の後ろにあるロッカーから体操着の入ったバッグを出して、代わりに畳んだジャケットとネクタイを入れた。
僕の格好は、ネクタイを外し、ブラウスを第二ボタンまで外した状態になっていた。
僕の露出が増える度に男子たちは反応した。
僕はストリッパーの気持ちが分かった。
自分の魅力に男たちが反応する事は楽しい事だ。
僕は体操着の入ったバッグを持って教室を出た。
廊下ですれ違う他のクラスの男子たちの視線が僕に突き刺さる。
気持いい!
やがて、目的地の事務室に到着した。
「失礼します。一年四組の柏木です」
「ああ、聞いているよ。はい、これが二階の奥の鍵だよ」
事務員さんは壁に貼られた平面図の一室を指差しながら、一年四組の隣の教室の鍵を渡してくれた。
僕専用の更衣室は隣の教室なんだ。
女子生徒として男子校に通う事になった僕に、学校は僕専用の更衣室を用意してくれる事になっていた。
僕のクラスの隣は空き部屋になっていたので、学校は一つの教室をまるごと僕専用の更衣室にしてくれたようだ。
男子校には女子更衣室なんてないから仕方ないか。
「毎日、取りに来るのも大変だから、その鍵は、週末まで持っていていいよ」
事務員さんは、僕の胸元を見ながら、今まで見た事のない笑顔でそう言った。
「ありがとうございます」
僕が笑顔でお辞儀をすると、事務員さんは、前屈みになった僕の胸元に釘付けになっていた。
僕の女の魅力は、大人の男性にも有効なんだ。
僕は自分の教室を素通りして、隣の教室の鍵を開け中に入った。
当たり前だが、隣の教室は普通の教室で、机や椅子が整然と並べられていた。
普通の教室と違う点は、内側から鍵が掛けられるようになっている事だった。
普通の教室は、内側から鍵を掛けられないように改造されていた。
きっと悪戯防止の為だろう。
一応、更衣室として使えるように配慮してくれたんだ。
僕は体操着に着替える事にした。
当初は、体を隠す為に長袖のジャージを着るつもりでいたが、一時間目の経験から、僕はTシャツとハーフパンツに着替える事にした。
僕って露出狂なのかな?
あっ、駄目だ…。
僕の体は、体毛がほとんど生えていなかったが、唯一、スネ毛だけが僅かに生えていた。
スネ毛を見られるのは恥ずかしい…。
スネ毛を見られる恥ずかしさは、ブラジャーを見られる恥ずかしさとは違った種類の恥ずかしさで、絶対に見られたくないものだった。
スネ毛を見られるくらいなら、おっぱいを見られた方がマシだ…。
そうか!女性が見られる事を嫌がるのは自信がないからなんだ!
確かに、グラビアで水着やヌードになっている女性は、痩せてスタイルの良い人ばかりだ。
当然、彼女たちはムダ毛の処理も完璧で、誌面に載るのは写りの良い写真だけなのだろう。
結局、僕はTシャツとジャージの下を穿いた状態のオーソドックスなスタイルで体育の授業に臨む事にした。
体操着で廊下を歩いていると、他のクラスの男子たちの視線を感じる。
やっぱり、見られるのは気持いい。
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