第7話 男から見られるのって…
一週間ぶりの教室…クラスメイトたちは、いつも通りに接してくれた。
ただ、みんな少しだけテンションが高い気がするけど…。
やがて、担任の高橋先生が教室に入って来て、ホームルームが始まった。
高橋先生は僕の状況を説明してくれた。
「先週の全校集会でも話があったが、柏木は女子生徒として、この学校に通う事になった。色々あると思うが、皆、柏木を助けてやってくれ!」
「は~い!」
「よし!じゃあ柏木!お前からも一言!」
えっ!僕が喋るの!
「え~…あの~…色々と迷惑をかけると思うけど、よろしくお願いします」
あっ!声を低くするのを忘れた!
僕は声変わりをしていなかったので、普段は低い声で話すように心掛けていたが、緊張して地声で喋ってしまった。
「大丈夫!任せとけ!」
教室から拍手が起こった。
良かった…皆、僕を受け入れてくれた!
やがて、ホームルームが終わり、高橋先生は僕を呼び寄せ、僕の為に学校が用意してくれたトイレと更衣室の説明をしてくれた。
僕はエントランスホールにある来客者用のトイレを使用する事になり、更衣室については、僕専用の更衣室が用意されているとの事で、事務室まで鍵を取りに行くように言われた。
そして、一時間目の古文の先生が教室に入って来た。
暑い…。
僕は緊張で体が熱くなっていたので、季節外れのブレザーを脱いで、椅子の背もたれをハンガーにしてブレザーを掛けた。
すると、教室に緊張が走った。
あっ!しまった!ブラウスになったらブラジャーが透けて見えるんだった!
僕は、もう一度ブレザーを着ようと思った…が、思い留まった。
今、ブレザーを着たら、露骨に体を隠そうとしているみたいだ。
皆、僕に協力してくれるって言ってくれたばかりなのに…。
僕はブラウスのまま着席した。
すると、周りの男子たちが僕を横目で見ている気がした。
きっと、気のせいだ…でも、熱い視線を感じる…。
僕は改めて自分の胸元に目をやった。
えっ!ブラウスが体に張り付いて、ブラジャーのデザインが分かる程透けてる!それに、おっぱいの形が浮き出てる!
僕は慌ててブラウスを摘み、汗で張り付いたブラウスと皮膚の間に空気を入れた。
すると、クラスメイトたちは咳払いをしながら、僕から視線を外してくれた。
ふ~…こんな事なら、ベストを着てくれば良かった。
やがて、古文の授業が始まった。
しかし、クラスには異様な緊張感が漂っていて、誰も授業に集中していなかった。
僕が男の格好で通学していた頃、男子たちは通学路で見かけた女性に対し
「見ろよ!あの女、ブラが透けてる!」とか
「肩からブラ紐が見えてる!」
と言って、盛り上がっていた事を思い出した。
やっぱり、皆、僕を見ている!
僕が顔を上げて黒板を見る度に、クラスメイトたちはガサガサと動いた。
まるで「だるまさんが転んだ」をしているみたいだ。
すると、僕の視界の端で、隣に座っている前田が、自分の股間を触る動作が目に入った。
それは、男なら誰でもする動作…チンポジを直す仕草だった。
えっ!勃起してるの?
僕は前田に気づかれないように彼の股間を見ると、彼の盛り上がった股間部分が触ってもいないのに「ビクン」と動いた。
これは、前田のペニスが勃起しているか、ポルターガイスト現象かのどちらかだが、この場合、ポルターガイスト現象である可能性は限りなくゼロに近い…。
えっ…僕を見て興奮してるの?
駄目だ!授業に集中しよう…。
でも…何だろう…この感覚…嫌じゃない…男に見られて興奮される事は嫌じゃないかも…。
と言うか、気持いい…僕の女の魅力で男が性的に興奮する…。
何だろう…まるで、魔法の力を手に入れたみたいだ!
男を性的に興奮させる魔法…凄い…何もしなくて、ただ見られているだけなのに…。
そうか!見られる事は嬉しい事なんだ!
僕は勘違いしていた。
女性は男に見られる事が、嫌な事だと思っていた。
嫌々、水着やヌードでグラビアをしていると思っていた。
違うんだ、男は女を見る事で興奮し、女は男から見られる事で興奮するんだ。
もし、女性が男から見られる事を嫌っていたら、子孫は繁栄せず、ホモサピエンスはとっくの昔に絶滅していただろう。
だから、女物の洋服は、あんなに露出が多いのか…。
もっと見られたい…。
「暑い…」
僕は独り言を呟き、ネクタイを緩めてブラウスの第一ボタンを外した。
ガタッガタッ…。
すると、周りの男子たちが露骨に反応した。
か…可愛い!
まるで、嬉しい事があると尻尾を振る犬みたいだ!
初めて女として登校した僕はナーバスな状態だったが、心に余裕が出てきた。
何とかやっていけそうだ。
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