第5話 女の子になって…一日目
月曜日の朝がやって来た。
僕は緊張していた。
学校に行くのは一週間ぶりだ。
それに、女として初めての登校だ…。
僕は早起きをしてシャワーを浴び、新しいブラジャーを手にとった。
まず、肩紐に腕を通して、前屈みの姿勢で胸の膨らみをカップに合わせ…ブラのホックを留める。
そして、カップを少し浮かせて脇の下のお肉をカップの中に押し込み、最後に体を起こして肩紐の長さを調節する。
僕は、昨日下着屋さんで教えて貰った手順でブラジャーを装着した。
洗面所の鏡に、ブラジャーを装着した女の子が映る。
お風呂上りで少し紅潮した肌に、白いブラジャーが生々しい。
なるべくシンプルなデザインのブラジャーを選んだ筈なのに、小さなリボンやフリルの縁取りが女物の下着である事を主張していた。
僕は、その場で少しジャンプしてみると、Dカップのブラジャーに収まった僕の乳房は揺れる事はなかったが、替わりに剥き出しのペニスが上下に動いて僕の下腹部を叩いた。
これを見ると自分が男だと実感する…。
僕はベージュのガードルを穿き、ペニスを股の下に折り畳んだ。
うん、これで男っぽさがなくなった。
僕はパイル地の部屋着を着て、母にメイクをして貰った。
勿論、メイクと言ってもナチュラルメイクで、鈍感なクラスメイトたちは、僕がメイクをしている事に気が付かないだろう。
メイクも一人で出来るようにならないと…。
自分の部屋に戻った僕は、昨日父にプレゼントされたドレッサーの前で、前髪を整えながら笑顔を作った。
うん!可愛い…本物の女の子に見える。
でも、どうしよう…。
僕は着ていく制服に迷っていた。
僕の学校の制服はブレザータイプで、この季節は半袖のシャツだけを着用し、ネクタイもしなくて良い事になっていた。
しかし、僕はなるべく体を見せたくなかったので、長袖のブラウスを着てみた。
ダメだ…ブラジャーが透けてる…。
白いブラウスに、白のブラジャーなのに、なんでブラジャーが目立つのだろう…。
取り敢えず、ネクタイをしてみよう…うーん…少しは胸が隠れるけど…。
僕は白のブラウスの上からベストを着てみた。
うわっ…胸の膨らみが強調される…。
ニットのベストは僕の上半身に張り付き、Dカップの胸の膨らみを強調していた。
どうしよう…。
悩んだ僕はベストを脱いで、買ってもらったばかりの、女物のブレザーを着る事にした。
これなら、ブラジャーが透けないし、胸の膨らみも分かりにくい。
それにしても、登校前に、こんなに時間が掛かるなんて…。
僕は、外出前の母の気持ちが分かった。
僕は改めて全身を確認した。
女物のブレザーが僕の細いウエストと大きなお尻を強調していた。
ネクタイのせいなのか、女の子が男装してるみたいだ…。
うわっ…やっぱり僕って、お尻が大きいんだ…。
女物のスラックスはタイトなデザインになっていて、僕の下半身の形状を露わにしていた。
でも、ガードルのお陰で、股間の形がすっきりしていて、本物の女の子に見える。
ガードルの補正効果は女性の崩れた体形以外に、男性器を女の子の股間と同じ形にする効果もあった。
これなら、誰が見ても女にしか見えない。
僕はドレッサーの大きな鏡の前で女の子らしいポーズをとった。
僕は小学生の頃、同じ歳の従姉弟と女性アイドルの振り真似をして遊んでいたので、女らしい仕草やポーズは得意だった。
アイドルの振り付けには、女の子が可愛く見える仕草やポーズが詰め込まれていたからだ。
僕が一階のリビングに降りると、父は既に出勤していて、キッチンから出てきた母が
「可愛い!すごく似合ってる!」
と言ってくれたが、弟たちは僕を見ているだけで何も言って来なかった。
えっ、人見知りをしているの?
僕の「女装」を初めて見た弟たちは、どこか余所余所しく、少し緊張しているように思えた。
仕方ないか…突然、兄が姉になったら誰だって戸惑うよな…。
僕は気まずいダイニングで朝食を済ませ家を出る事にした。
やっぱり、どうしよう…。
僕は靴を履いた状態で、玄関で立ち止まった。
この格好を皆に見られる…恥ずかしい…。
「早くしないと、遅刻するよ!」
僕は母の言葉に背中を押され玄関を出た。
眩しい…。
これから僕は女として生きて行くんだ。
僕は新しい一歩を踏み出した。
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