第4話 世界経済とのデート
というわけで——
最初は冗談か何かとしか思えなかったエコの正体だが、政府やら政治家やらが次々にかけてくる圧力に負けた親からはなんだかわからんが言う通りにしろと言われ、学校からも内申の点があがるとか、大学の推薦もできるかもとか甘言をろうされて——
そういえば、そもそもゴールデンウィークに一緒に遊ぶ彼女もいないで肩身狭い思いをしていた僕は、まあなにか騙されているのかと思いつつも、こんな可愛い女の子と知り合う機会はもう一生ないかと——
まあ、キョウコさんの言う通りに、エコと付き合って見ることにしたのだった。
でも、付き合うなんて言っても——僕でいいの?
こんな美人が?
そんな思いで、最初は恐る恐るあってみたのだが。
「エコです。こんにちは。仲良くしてくれると嬉しいです」
政府の特別予算でプロデュースされた、外資系ホテル最上階のレストランの初デートで、あっさりと気に入られ、まあ少なくとも友達以上の感情は持ってもらった僕なのであった。
でもなんで?
正直、僕は、めだった欠点はないと思うが、大きな取り柄もない平々凡々な男だ。
容姿も優れているわけでもないし、教養が豊かなわけでもないし、スポーツも普通だし、会話だってそんな面白くもないと思う。
でも、エコはそんな僕のことを会ってすぐに気に入ってくれたようだ。
なんで?
「それは、君がエコの好みだからだ。君がエコに求められている男だからだ」
キョウコさんの説明は——説明になっているようでどこか足りない感じがする。
なぜ僕が求められているかその理由がわからない。
「いや、疑問に思わなくても良い。エコが求める男、その要素の最大公約数を探していたら君を見つけたんだよ。なぜ君が——という問いには意味はない。君がそうであったことが重要だ」
なんでも、一ヶ月間にこの日本に存在の確認された世界経済の化身——エコには、超イケメンやらスポーツ万能やら天才科学者とか……非凡な才をもつ男子を散々あてがって見たようなのだが、彼女は誰一人として気に入らなかったとのことだった。
そしてその結果がこの一ヶ月の世界同時不景気。実のところ、このままでは早々に世界恐慌に陥ってもおかしくないと言う状況だそうである。キョウコさんの語るところによると。
「しかし、我々政府の優秀なスタッフ、外部シンクタンク、人工知能解析によるビッグデータ解析など、今の日本でつかえるあらゆる手段をつかって得た結論が——エコの好みは平々凡々男子であるということなのだ!」
そして、僕がそうであると言うのだった。何も取り柄もないが、大きく欠点もなくて、無難に地道に今後生きていくのが良さそうな、平々凡々男子。
そんなばかな!
エコが、世界経済そのもの、ということの意味は僕にはまだよくつかみかねるのだが、彼女が何か超自然的といえる力により、世界の好不況に左右するのは信じたとして……でもなんで僕を選ぶ?
「だから、なぜと問うたらだめと言ったはずだ。君がそうであった。その事実だけが重要で——意味がある。君が信じられないほどに特徴のない平均的な高校生であった、それが彼女——エコに君が選ばれた理由であって、平凡なのになぜ選ばれたのかと疑問に思うのはまったく意味のないことなのだ」
……? んん、やっぱりなんかすっきりこないキョウコさんの説明だが、ともかくエコに僕が気にいいられたのは事実。
ゴールデンウィーク前半の連休をデートの定番。遊園地や水族館、お台場で観光とかで無難にしかし楽しく過ごし、彼女の機嫌も上々。世界経済、そのなかでも日本経済は爆上がり。
僕に任されたミッションはとても好調な滑り出しを見せたのだった。
しかし、連休の中日の学校を経て始まる連休後半。ついにはじまるゴールデンウィーク本番に浮かれる日本の中にエコと一緒に放り出した僕は、平々凡々な高校男子の限界を無様にもさらすことなる。
「ネタ切れだ……」
彼女どころか、親しく一緒に遊んくれる女性もいない(せいぜい幼馴染のマルコくらいか)僕はデートなんてしたこともなく、聞きかじりの知識だけでは限界があり、今日の原宿デートで午後の半ばとなったあたりで、これ以上何をしたら良いのか本気でわからなくなってしまったのだった。
そして、ブルブルと震えるスマホ。キョウコさんからの怒りのSMSなのは間違いないが、「もうさすがに甘いものは十分よ」とエコに言われたばかりだぞ。ならなんで機嫌を取れば良いのか? みるみるつまらなそうな顔になるエコ。ならば、だだ下がりの株価。危機の世界経済。
とりあえず行く場所も思いつかず、代々木公園に入って森の中のベンチに座り途方にくれる僕。
どうしたら? こんな時に女の子の扱いをどうしたらいいのかわからずに焦りばかりがつのる僕なのであったが……
「あ、やっぱりケイ、噂通り女の子と一緒になんかいた!」
最悪の状況を上回る最悪があることを知る僕。
ああ、偶然なのか、必然なのか、ストーカーなのかわからない……というか最後が多分正解だけど、僕の腐れ縁の幼馴染、マルコがベンチでうなだれる僕とエコの前に現れたのだった。
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