第17話 変な夢〜熱烈アプローチ受ける女に?
俺は分析好きな方で、ウェブからだと、いくらでも日本のコミックスが読めるため、最近の無料コミックス、特に女性向けのTLやアダルト系なんかを片っ端から課金せず、読破しました。
「B、俺さあ、女がセックスに持つ幻想を分析するために、ウェブにあった無料公開のコミックスほぼ全部読んだんだけどね、どれもこれも、パターンはほぼ同じだったよ」
Bが笑いました。お前、よほど暇?と。
いや、なんかさ、学ぶところがあるかと思ったんだけど。やたらキュンキュンなストーリーばっかりで、むしろ、なんつーの?気持ち悪い。
実際と違うから、あんまり参考になんねー。セックスのパターンはどれもこれも同じだし。
で、俺、昨日もたまたま、それでもなおかつ、適当にチェックして、明け方まで読んでました。俺、馬鹿かなあ、と思いながら。
で、寝たんですが、見た夢がすごくリアルでした。ゾッとするくらい現実の手触りがあり、俺的には、これはまずい、本物だ、と思いました。
夢の中で、俺はごく普通に女でした。そこそこ綺麗で、まあなんというか、驚くことに、すごく自然に俺、女だった。
起きた時に、Bにその話、しました。俺さあ、ゾッとするくらいリアルな夢見てさあ。
実は、そこに出てくる男、女の俺に、ベタ惚れでした。俺、完全に夢の中では女だから、まんざらでもなくて、すごく、まあ、普通に、素直に嬉しかったです。
それが不思議なんだけど、俺は誰かから好かれると、すごく鬱陶しい。多分、好かれることによって生まれて来るいろんな柵の方の負担が大きい。そう感じるのに、自分が女だと、そうじゃない。そのことにとても驚きました。なんなんだ、この違いは。
俺は前世で女だった時のことも記憶があり、たくさん覚えているんですが、俺、女の時と、男の時は、ほぼ別人のようです。というか、前世自体が、その時々、全くの別人として、別の性格、別の能力、まるっきり新しい魂で転生しているので、同一人物でないのは、ごく当たり前のことなんですが。
とにかく、すごく楽で驚きました。俺のこと、好きって言ってくれる男は、真面目な人で、面白いことに、ガラスを吹く職人で。職人というか、アーティストなのかもしれない。
そして面白いことに、夢の中の俺、女は、作り方についての指摘を、その人にしていました。俺、起きて、物理的に可能なのかどうか、ちょっと分からないんですが、考えた。それというのも吹きガラスのテクニックは、作業工程、ずっと熱いから、そんなことが可能なのかどうか。
夢では、二重に薄いガラスを吹いた中に、何か煙のようなものを閉じ込めていました。
ちょうど、大きな風船の中に小さな風船が入ってるような感じの構造。
俺の持ってる知識では、それって、シャボン玉とか、子供の玩具でならできると思います。ガムみたいに伸びる透明な素材とか。シャボン玉に煙草の煙を閉じ込める手法に近い。それはガラスではできるような気がしない。だいたい、薄く二重にガラス吹くのは難しい。
ガラスは焼き戻しの工程があり、そこまで薄く吹くと、焼き戻しで必ずへしゃげる。特に二重になってるなら、外と中を焼かないといけないから、不可能なんじゃないかな。均一の熱を入れてから徐冷炉に入れないと、歪みが生じて、冷めた時に割れてしまう。
一個吹いて、一回逆側にポンテを取り、吹き竿についた玉をその切り口の穴から入れて、もう一度吹けば、そんな形状も可能かもしれないけど……
グローリーホールで焼き戻しする際、最も外側部分と中の玉の間の空気をそのままに保つ方法がない。
夢の中で見た、あの薄さだと、ガラスじゃなく別素材しか不可能。
何か新しいものを作ろうとしている様子は、面白そうだったけど、ああ、そういや、最近、制作の現場と全く縁がないから。やっぱり今みたいな生活ダメですね。出会いが欲しい、と思いました。
友人のデザイナーが言ってたけど、物作りの職人とは、かなり付き合いが難しい、と。
彼は俺の知ってる中でも、本当に美しい男で、あまりに美しいと、すごい嫉妬を受けて、囲まれて理由もなくタコ殴りとかの目によく合ってました。
男って、女が見ていないところでは、他の男を蹴落とすために必死で、めちゃめちゃにモテる美しい男は、存在だけで邪魔。最近どうしてるのか知りませんが、あまり職人と組まなくてもいいようなジャンルを選択した模様。
まあ、俺が夢で見た形状も、不可能じゃないかもしれないけど、当たり前ですが、煙は消えます。シャボン玉くらいの時間なら、残るかもしれないけど。
プロの職人の男に、女の俺が、何かを教えてあげようとしているのも面白いな、と思ったんですが、俺は夢の中で、そいつ、実際に知ってる人なのか、頭のどこかで、記憶を探していました。実際に会ったことがある、知っている人なのか、と考えていたってことは、夢の中で、これは夢、現実ではないという自覚が、どこかあったことになります。そういう夢は結構珍しい。
その男は、ごく普通の男で、目立たないようなタイプの男でしたが、女の俺は、むしろすごくその男に好感を持ったようでした。わからないんですが、自分が好かれると、女ってそういうふうな気持ちになるみたいですね。俺は、夢の中では完全な女だったので、そいつのこと、ちょっと気に入ったみたいで。
でも面白いのは夢の中で、Bに気兼ねをしていました。言葉にしていませんが、Bのこと、考えて。Bがいるのに、どうしよう、と。
わからないんですが、Bは夢の中で、彼氏とか、夫とか、なんかそういうすごい重要なポジションだったみたいで。違うな。うーん。そうじゃない。今みたいなポジションかな?はっきりしない関係。別に何かあるわけじゃないんだけど、気兼ねするような。
俺起きてから、俺が女なら、俺ってBと結婚とかしたいわけか???
自分で目覚めて、まだ寝ぼけてましたが、すごく自問自答しました。前もそれって、出てきたかもしれないけど、もしも俺が女なら、俺とBは上手くいったんだろうか?ハッピー・エンドだったんだろうか?
俺は正直、そんなの実は、言えないことだけど、夢の中ですごく、その人に熱烈に好かれて、こんなに好かれるのだったら、と思いました。ちょっと揺らいでる感じです。
俺ね、女の気持ちって、わかんねえ!
起きてから、うーん、なんとも思ってないやつに好かれて、何となく好きになっちゃうものなのか、女って。
すっごいそれが驚きというか、えええ、それって結局、なんだかんだ言って、「流されてる」というか、「行き当たりばったり」というか、言葉がうまく見つからないけど、「雨降って地固まる」的。あ、それはちょっと違うか。
女っていいよなあ。そんなでいいなら、「楽」っぽいじゃねーか。すごく好きになってくれた人を好きになれるなら、うまく行くよなあ。
しかも、ちょっとした「ときめき」を楽しんでる気配があって。俺みたいに固く「鬱陶しい」とか「迫られたら嫌だ」とか思ってない。なんか楽しそう。ある意味、もっと恋愛に対して、ノリが軽い。深刻感が薄い。
で、俺はBに言いました。
B、俺さあ、昨日、変な夢見たわけ。
俺、女でさあ、すごい熱烈に俺のこと好きな人がいて。俺さあ、なんかまんざらでもなさそうっていうか、正直、ちょっと嬉しかったんだけどさあ……
Bは「お前、綺麗だから、好かれて当たり前だよなあ」
あまりにストレートにBが言うので、俺は一瞬、虚を突かれました。
B、何、素直じゃん。
俺はあまりにポケらっとしてたんで、Bが俺の手を取って、俺の手の甲にキスしたんですが「うわ、やめろ、汚ねえ!」というような、普段の反応は無しで、ぼーっとしてました。なんつーか、俺。
え?反応し忘れてた。
……俺さあ、女だったら良かったのかなあ。なんつーか、すごい自然だった。
人から好かれてもさあ、それって嫌じゃなかった。生きてて、自然。
すごい自然にさあ、その男のことが、いい人、みたいにポジティブに思えてさあ。
でもね、俺、Bのことが頭に浮かんだの。
B……俺さあ、女だったらお前と結婚とか、考えるのかなあ。
Bは運転しながら、笑いました。「お前さあ、なんでそんな当然のことで悩めるワケ?」
俺は赤面しながら「当然って、当然かどうか、そんなの、わかんないだろうが」
「B、お前なあ、女の趣味悪いくせに、俺と結婚したい??俺が女だったら俺と結婚したい??」
そうは言わなかったけど、俺的には「じゃあ、変な女に引っかかるなよ!俺とその女って、同列じゃねえぞ」と心の中で思いました。この辺は、アテナイ読んでください。まだこの回、公開してないけど。
馬鹿みたいな露出で、サンバ踊る銀色のオカマみたいな女。B、もうちょっと普通の女選んでくれよ。不倫にしても。
俺はすごく複雑な気分になりました。俺、女だったら、楽だったのかなあ。だって、人から好かれても、すんなりそれを受け入れられる。綺麗、可愛いと言われても、舐められてるとか、ウザいと思わず、自然体で居られる。
俺は夢の中で、ごく普通の男に熱烈に好かれている自分というものに安心してました。こんなの現実の俺じゃありえない。
俺、誰かに好かれるの、すごく嫌です。外見だけで寄ってこられて、俺の中身は見ていない。すごくムッとする。
好かれても、素直に喜べない。その辺がよくわからない。なぜなのか。好かれて、追いかけ回されて、迫られて、責任取らなきゃいけなくなって。自由じゃなくなる。
牢獄のように一人の女に捕まったら、ずっと一緒にいないといけないって窮屈じゃないですか?
夢の中の俺は女でしたが、好かれてもそこまで、なんというのか嫌がってなかった。もっとほんのりした世界に住んでて、セックスとか、もちろん全く考えてない。ぼんやりした世界に住んでる。
むしろ、何それ?ってくらい、純粋で綺麗。俺、なんというか感動したっていうか、性欲とか、そんなの、なさそうで。
とにかく夢の中の俺は自然でした。
寝て起きて、俺、女だったら良かったのかなあ、と考えて。だって絶対、セックスのテクニックのことなんて、考えたこともないような、清らかさだった、女の俺。
もちろん、なんというか、変なプライドとか、そういう、無理してる感じが全くなくて、俺、よくわかんないけど、自分でありながら、起こってくる外界の事象についての反応が全く自分のものじゃないことについて、軽くショック受けて。
夢の続き見て、一体、どんな恋愛をするのかな、とちょっと実は、興味を持った。俺なんだけど、全く俺じゃないし。
女の俺、絶対あの男と喋ってて、「付き合ったらセックスになる」って考えてない。そこまで考えてない。
俺だったら、ついそっちの方へ思考が行っちゃう。え、ヤバい、と。好かれた時点で。
好き=セックス=責任。相手が女であれ、男であれ、なんか意識してしまうというか、実際、迫られてきたから。
力づくで男に迫られたら、逃げ切れないかもしれないのが、物理的に怖い。違います、俺は違うので、ご理解、ご了承の程宜しくお願いします。
寝る前に実は俺、たまたまね、精神医学関連の検索をしていた。
「前世」とかね、「体外離脱」とかキーワード出すと、必ず相手の医者に精神医学的な病理を想起させるからさあ。
他の人とコミュニケーションの不全が起こるようになると、完全にまずいことになるから。普通に通常のコミュニケーション取れる状態にしておかないと、入院させられる。
で、まさか「解離性同一性障害」とかじゃないよなあ、と。俺、昔、離人感覚がひどくって。まあ、俺が経験した数々のトラウマのことを思えば、当たり前だ。普通の感覚じゃ受け入れられないことに直面すると、そんなふうになる。
当たり前の反応。で、その離人感覚はかなり消えたわけだけど、記憶とかは常にちゃんとあったよ、体外離脱の時は、完全に外に離脱してしまったけど。拒食が始まったのは、かなり後の話。
なんか俺、バラエティに富んだ精神病理を体験しているね。
で、これ、まずいのかなあ、と、昨日調べてみた。随分前の話で、なんで今更と思ったんだけど、あんまり別人格が自分の中にあるのは、まずいのではないか、と。制御できなくなるとまずいらしい。
少なくとも、個々の過去生では、俺、統一された人格を保ってないからね。当たり前だけど。その時々で「別人」で。
今その記憶が全てあるとおかしい。その別人格の誰かに、俺自身が支配されることはないけれど、ちょっと危ないよね。俺、全く別人格に支配されたことはないけど、この体を共有って意味ではあり得ることだから。
普段の俺は、攻撃的でもないし、社交的で温厚、面倒見が良く人見知りしないタイプのわけだけど、最近は、攻撃的すぎるし、人嫌いで社交的じゃなくなってるから。徐々に別人に移行してるみたいで怖い、と感じて。
多分、すごいストレスがかかって、性格が変わっていっている。
俺は、強いストレス下にいるせいだ、とは思ったけれど、「離人症」のような症状がまた出ないとも限らない。かなり俺、今、追い詰められてるから。それは簡単な問題じゃなく、I先生に言わせれば、問題を一度に解決しようとするな、ということなんだけど。I先生にも詳細は話してない。話せないようなことだ。
俺は分析して、あらゆる解決の可能性を探ったんだけど。大抵の問題の場合、価値観を壊せば解決できる。河合先生の本を読んで、ある意味、成長の機会なのかもな、とは思った。俺はユングとフライトなら、自分にとって共感度が高いのはユングだろうと思っていたけど。
突き当たった壁を乗り越えるため、古い価値観を壊そうとして、自分の人格を壊す可能性の方が大きくなり、今ここの段階だね。俺がめちゃめちゃに攻撃的になったのは、我慢できないようなことを我慢し続けてきたからだろう。人間ってあまり無理するとダメだね。
俺は平気だと思ってきたけど、チリも積もれば山となり、心身症状に出てきて、それは複合的な問題が原因だから。
そう思って寝たら、全く別人で夢を見た。
B、俺さあ、もし女だったら、お前でなく、そっちのもっと温厚で平凡で、俺のこと、熱烈に愛してくれるごく普通のやつの方に行ってしまうかもなあ。
俺はそれはとても口に出せなかった。Bに言えなかった。
なんで言えないのかなあ。わからないが、俺はBのことを好きなんだろうか。
好きだから一緒にいるんだろうが、当たり前だが、それは恋愛感情じゃないだろう。恋とか愛とか、そういうなんだろうな、そういうのじゃないよな。何より俺にとってのセックスというのが、これまたややこしい。
まともな感覚でないことだけがわかる。まあ、過去生をはっきり覚えてて、嫌悪してるというのもあるが、もともと、過去生などなくて、記憶の捏造なんていう考え方もある。記憶というのは勝手に捏造されることが実験でわかってるんだけど、俺の場合、子供の頃からの感覚の違和感なんかがあって、長い。過去生の体験を無意識が覚えてて、それに影響されている、と説明したら、本当に腑に落ちる。
過去生に体験していて、既によく知ってるから、自然にそんなふうに体が勝手に反応して意思決定している、と言えば、いろんな疑問の説明がうまくついてしまう。
夢の中で「女だった俺」が重視していたのは、どっちの男が真剣に自分のことを命賭けて一生愛してくれるのかな?どっちが自分を大切にしてくれるのかな?ということだった。Bはそこまで、「女の俺」に必死じゃなかった。それは、長い付き合いのせいもあっただろうと思うけど、俺、正直、そっちのごく普通の日本人の男の方にこのままじゃ、行ってしまうかもしれんな。だってそっちのやつ、なんかすごくピュアで熱烈だったから。
会ったこともない男なんだが、どうも、俺はそいつのことも、よく知ってるような気がして仕方なかった。誰かの生まれ変わりなのかもしれない。実際には会ったことないはずだが、もしかして急に思い出すかもしれない。
実はBは、パラレルワールドでそっくりなやつに出会ったことが以前にあった。
この話はまた機会があれば。Bと俺が一緒にいるのって、そういう意味ではほぼ運命に近い。ある意味、運命的だった。たくさんの可能性、パラレルに動いていく世界の中から、選ばれて存在する現実。
とにかく、この夢でわかったことは「女の俺は相手が自分を愛してくれていたら、情にほだされてごくごく平凡な男でも、好きになってしまいそうだった」ってことだな、うん。
うーん、女の俺、性格良いよなあ。今の俺となぜここまで違うんだろう?狩る方と、狩られる側の違いなんだろうか。
まあもう一回寝て、夢の続きが見られたら、また報告する。
俺としては、Bと長い付き合いなんだから、Bの方を優先させてあげて欲しい。
でもそれには、Bの愛は足りないらしい。B、気づいてくれよ。でないとお前、平凡なぽっと出てきたやつに、「女の俺」を略奪されるぞ。パラレル・ワールドで。
現実の俺は、そんなに簡単じゃないし、単純でもない。でも、この今、俺が生きている世界、現実より、夢で見たパラレル・ワールドの方が楽そうだし、楽しそうだった。
なんか知らないが、俺の今の現実、変えた方がいい気がしてきた。もしかしてそっちの方が生きるの簡単じゃねーか。
自己同一性、自己保持の法則。
人間というのは、言動を一致させようとする癖がある。前に自分が言ったことにものすごく縛られる。
俺、思ったんだけど、BやJさんと一緒に居すぎて、自分が変えられなくなってしまってる。そんな気がする。
軍の規律の中で生活していたら、それ、その感覚が普通になるみたいに。もはや、何が普通で何が普通でないのか、わからなくなってる俺。なんというか、今の俺をすごく不自由にしてるものって、俺自身の中にある「俺の価値観」なんだよな。
〜
追記
解離性同一性障害には幸いにもあまり当てはまってなく、むしろ驚いたのは、他の項目。
過敏性大腸炎まで診断されたことがあった。ストレスやトラウマの威力、すごいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます