――作品紹介―― 悔しい思いをしているあなた

奏「中学生になった~ら♪ 高校生になった~ら♪ 友達百人できますか?」


祥「できませんね」


奏「夕陽の土手トワイライトヒルでの殴り愛は?」


祥「いつの時代の話ですか……あるわけないでしょ」


奏「ガーン……ですね。出鼻をくじかれました」


ヒュパティア「世知辛い世の中よね」


(スタッフの笑い声)



――――今回のゲスト!――――


エル「では、この度のゲストを紹介しよう。大臣 様:著『正義の味方と僕』より、

浅井 祥あざい しょう君が来てくれた」


祥「えっと、浅井 祥です。三月学園中等部3年生です」


カズミ「学生か。部活とかしてるの?」


祥「特にやってないけど、学級委員は………って、なんか面接みたいなんだけど」


エル「そうだな……こんなところで変に根掘り葉掘り聞いても仕方あるまい。ところで、さっきは奏と何を話していた? 奏が若干落ち込んでるぞ」


祥「この人……竜舞さんが、なんか学生に変な幻想を持ってるみたいだから、きちんと否定してたところ。友達百人なんてどんなに顔が広い奴でも無理だよ」


カズミ「えっ! 今の学生は友達百人出来ないの!?」


祥「いやいや、あなた方本当にいつの時代の人間なの!?」


エル「交友ある人間なら、他国を含めて300人以上いる」


カズミ「士官学校時代だったら、学年内ほぼ全員顔見知りだった」


祥「モノホンの軍人さんに比べられても…………」


奏「私だって……輝く青春を送りたかった。お嬢様学校とかに入って、ゆりめくる日々を送りたかったんですからね」


ヒュパティア「この子、大学に入る前の学歴がほぼ小卒みたいなものだったから、中高生に変な憧れ持ってるのよね。じゃあ、今回のお題いってみましょうか」



――――今回のテーマ――――


『アットホーム アサシン』

オノダ 竜太朗 様:著

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886065808



奏「今回ご紹介するのは、アットホームアサシン。ジャンルは現代ドラマですね」


祥「おっと、まさかの暗殺者の話か。暗殺者一家みたいな?」


ヒュパティア「ちょっと違うわね。『アットホームな雰囲気の』暗殺請負会社のお話ね」


カズミ「まさに二重の意味でブラック企業!」


(スタッフの笑い声)


エル「違うだろ、まじめに説明しろ。この作品は、主人公の中堅サラリーマン「浅野真一」が、殺し屋家業に勧誘され、紆余曲折を経て殺し屋家業の仲間たちとかかわっていく話だ。優柔不断な主人公は、周りの濃いキャラクターたちに振り回されながら、それでも徐々に彼らと打ち解けて、暗殺任務『執行』にも携わることになる。そんな主人公を待つ、驚愕の真実とは……」


祥「なるほど、これはあらすじを見ただけでもわくわくするな! こんな感じの、ちょっとしたひっかけみたいなのがあるの、僕は好きだよ」


奏「気に入っていただけたようですね。この作品の特徴は何といっても、伊坂幸太郎作品のような、日常の中の非日常、もしこんなことがあったら、のようなリアルさよりも痛快さを求めたストーリーですね」


ヒュパティア「かなり都合のいい展開が多いけれども、逆にそれが魅力的なの」


祥「確かに、そもそも現代日本で殺し屋をやろうと思っても、ほぼ不可能だからね。そういうのはあり得ないだろって突っ込むのは、野暮ってものさ」


カズミ「浅井君は中学3年なのに、なかなかの見方がわかってるね。ふつうこの年頃だと「殺し屋△」か「殺し屋とか現実的じゃない」って拗らせそうなものなのに」


エル「それはそれで極端すぎると思うがな」


祥「昔からこういう小説……特に推理小説みたいなのはたくさん読んできたから、そんなことでいちいち嫌になんかならないよ」


ヒュパティア「そう。君とは本の話題で1週間は語れそうね」


奏「いい心がけじゃない。うちのハルも推理小説が好きだけど、その理由が「読んでると頭がよくなった気になれる」っていう」


カズミ「それは……逆に聞いてて悲しくなってくるよ」


(スタッフの笑い声)


ヒュパティア「また話が脱線したわね。この作品のそのほかの魅力としては、登場キャラクターの濃さがあるわね」


奏「なにしろ、殺し屋家業の人々は『所長』をはじめとして、誰もかれも一筋縄ではいかない個性派ぞろい。その上さらに、仇名付け大好きな『Mr,ブラック』こと所長が、部下にアレなニックネームをつけまくるものだから、そのインパクトは強烈の一言に尽きますね」


エル「あまりにも回りが個性的過ぎて、相対的に主人公の影が薄く見えるという。かといって、どこぞのアニメのように主人公が周りに埋没することがない、絶妙なバランスで成り立っている」


祥「ニックネームって例えばどんな?」


カズミ「まず主人公が「アサシン」。浅野真一だからアサシンさんなんだって」


祥「いや、ちょっとまって、そのまんま過ぎない? ひねりも何もあったものじゃないよね」


ヒュパティア「体操競技ゆか運動で、その場でジャンプするだけくらい何の捻りもないわ。これぞ所長クオリティ」


奏「今思うと、浅井さんと浅野さん、名字が似てますね。浅野さんが「アサシン」さんなら、浅井祥さんは……………「アサショウリュウ」?」


祥「なんでお相撲さん!? 僕はあんなにガタイがよくないよ!?」


エル「ってな具合で、仇名自体は部下にはおおむね不評のようだ」


ヒュパティア「本人の同意なく、勝手に呼んでるだけだしね」


祥「それで、肝心の暗殺についてはどうなってるの?」


カズミ「それなんだけど……依頼殺人が一番説明が難しいんだよね」


奏「彼らは武器をほとんど用いません。一応素手やらなんやらで『執行』するのですが」


エル「こればかりは、実際に読んでくれとしか言いようがないな」


ヒュパティア「一応彼らは、どうしようもない悪人だけしか手を出さないことを矜持としているわ。殺害依頼を受けても、まずは標的を『執行』してもいい人間かそうでない人間か、判断するところから始めるし。けれども、標的の『執行』が妥当と判断したら、彼らはお金がない人の依頼も喜んで引き受けていくわ」


祥「さながら必殺仕事人ってところか。でも、依頼殺人なんてただでさえリスクが高いのに、お金まで受け取れなかったらどうするの」


奏「標的に支払ってもらいます。死人にお金はいりませんからね♪」


カズミ「金に罪はなし!」


祥「ああ、やっぱり。完全に正義の義賊ってわけじゃないんだね」


エル「…………ひとつ聞きたいのだが、君にとっての「正義の味方」とはなんだろうか」


祥「え? えっと、僕なんか変なこと言った?」


エル「いや、そう焦らなくてもいい。ただ、君の親友がまさに「正義の味方」を体現する者だと聞いていてな」


祥「親友……星川のことね。親友……なんだろうか? 正義の味方というか、星川は「正義な方」の味方っていったほうがいいかな。たとえ自分が不利益を被っても、正道を貫き通すんだ」


ヒュパティア「……………正義の味方って、ほんと損よね」


奏「そう考えると、作中に出てくる殺し屋さんたちは、果たして正義の味方なのでしょうか」


エル「彼らはそもそも法律に背いているからな。それでも、依頼者たちからは正義の味方だと慕われている。依頼者たちにとって、標的こそ悪であり、それを成敗する彼らは正義というわけだ」


奏「浅井さんのご友人の星川さんはその逆で、正義を一般常識や法を根拠に置いてますね。ですから、どうしても時折反発されることがあるのですね」


祥「やれやれ、僕には正直どっちが正しいのかわかんないよ」


ヒュパティア「主人公が殺し屋家業にずっと二の足を踏んでいるのはまさにその点なの。相手がどんな人間であれ、日本では殺人はご法度。でも、依頼人に同情もするし、標的があまりにもひどい人間で、害するのもやむなしと思ってしまってもいる」


カズミ「主人公にも大切な家族がいるし、長年会社に勤めてきた実績もある。でも、迷っているうちに時間はどんどん過ぎていくし、どんどん後戻りできなくなってしまっている」


エル「作中主人公は、本当に迷ってばかりいる。どうしても最後の一歩が踏み出せない……ずっとその思いを抱えている。だが、それも見方によっては長所となる。殺し屋の仲間たちは、自分たちの勝つ土井に疑問を抱かなくなって久しいが、一歩引いた立場の主人公には、まだ迷うだけの選択肢があるということだ」


祥「エルさんやカズミさんは軍人さんだけど、人を殺すことに抵抗を覚えたことはないの?」


エル「俺はないな(キッパリ)。何しろ俺は物心ついたころから、幾度も戦場に出ている。わが主君のユリア様と出会わなければ、今頃俺は感情のない殺戮機械になっていたことだろうよ」


カズミ「ん~僕はどっちかというと、殺した後に罪悪感が沸くタイプかな。実際に戦いの場に立つと、迷ってる暇なんてないんだよね」


ヒュパティア「そういった意味では、この作品の主人公は日常にある非日常へ、読者をつなぐ橋渡しをしているのだと思うわ。主人公がいるからこそ、読者は殺し屋たちが繰り広げる非日常を、非日常だと認識できているってわけ」


祥「日常と非日常の橋渡し役か……」





奏「それでは皆さん、今回の作品紹介はいかがだったでしょうか」


祥「結構重い内容紹介だったけど、実際に読んでみると全体的に明るい雰囲気で、ストレスなく読めるのがいいね!」


エル「特にラストの方に凄まじいどんでん返しが待っているから、序盤だけ読んで終わるなんて言うもったいないことはするなよ」


ヒュパティア「二人目のゲストとして感想はどうかしら?」


祥「いや、なんか話していたらあっという間に終わっちゃったって感じ」


カズミ「それだけなじんでくれた証拠だよね」


ヒュパティア「話足りないのね! なら、小生の部屋へいらっしゃい。推理小説の良さについて、カズミ君を含めて1ヶ月ほど話し合いましょう」


祥「ま、まった! 1ヶ月話してたら死ぬ!」


カズミ「さらっと僕を巻き込むのもやめないか」


エル「気が済むまで話し合うといい。では諸君、次回までごきげんよう」



※作者注:

大臣様、キャラクター提供ありがとうございました♪

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