4話 最近同居しはじめた自称【神】が、強制的に反省を強いてくる件について!
4話-①
嗚呼、やっと見つけました!
我らが主上の神に仇なす邪神を! 私を辺鄙な『社』に閉じ込めた、あの邪神を!
前回居た辺鄙な『社』とは打って変わり、今は守りの強固なヒトの家に住みついているようですが……良いでしょう。準備が整い次第、すぐにでも引きずり出してまた貴方を殺してあげます。そうすれば我らが主上たる神も私の実力を認め、前線に復帰させてくれるに違いありません。
嗚呼憎い、私を出し抜いたあの邪神が憎い! 私から職務を奪い、前線から離脱するよう謀った元部下であり現上司である彼らが憎い! 敬虔なる『彼女』を殺したヒト共が憎――嗚呼いけませんね。そんな激情を抱いてしまっては。
何故なら我らが主上の神の御手により創られた私たち【御使い】は、感情を備え付けられてはいますが、その垣根を越えた激情を抱かないはずなのですから。
故に――例えあの邪神に何度も煮え湯を飲まされようとも。怒るべきではないのです。
故に――元部下たちの謀りに苛まれようとも。悲しむべきではないのです。
故に――私の声を聞き届けてしまっただけにすぎない少女が、同士であったヒト共に守られることなく火あぶりの刑に処され、その遺体を見世物にされようとも。迷うべきではないのです。
だというのに、私の頭はそのことばかりを延々に考え続けてしまうのです。
それもあの邪神によって辺鄙な『社』に閉じ込められた時は、ずっとそればかりを考え続けさせられました。ええ、勿論あの邪神が私の思考を捻じ曲げ、そうさせたわけではありません。けれども、あの邪神の謀りによって『社』に閉じ込められ、思考する時間を与えられた私はそのことばかりを考える羽目になったのです! 嗚呼、今思い返しても、忌々しい!
嗚呼、それにしても何故あの邪神は生きているのでしょう! 何故あの邪神は悩まないのでしょう! 何故あの邪神は私たちに復讐しないのでしょう!
あの邪神の首を、私たちは一度刎ねたというのに! あの邪神の悩みとなるだろう行いを、そして復讐されてもおかしくない所業を私たちはしたというのに、何故!
嗚呼、抱いてはならぬ激情が、湧いては成らぬ苛立ちが募ってゆく!
「邪神、イーヴァ・ニーヴァ。……私は貴方を、再び殺します!」
そうすればきっと、この苛立ちも、悩みも、すべてが無に帰し、私自身もまたあるべき私へと戻るはずなのですから。
自身の背に生える白の翼を大きく広げ、邪神であるイーヴァ・ニーヴァを見下ろすために居た民家の屋根から空へと飛び立ちます。
あの邪神の感情を揺さぶり、尚且つその神格を更に落とす。そのための目星は既についているのですから、早々に行動に移すべきでしょう。
「まずは、あの家に住まうヒトを探すとしましょう」
手始めに、あの邪神が住みつく家の子に手を出しましょう。
そうすれば如何なる時も無表情を貫き、平然とした態度をし続けていたあの邪神も、取り乱すに違いありません。
「楽しみです。ええ本当に、楽しみでなりません」
あの、何の感情も抱いていない無の表情が。自分の信者を、信者であった者たちに殺されて尚平然とし続けていたあの態度が。私の前で崩れ、崩壊する。そんな夢物語のような光景を思い抱きながら、私は翼を羽ばたかせ、目当てとなるヒトの子を探しはじめました。
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