大きな背中



頑張れ、頑張れ。


頑張っている背中に何度もそう言葉を送った。声にはならない、音のない言葉を。視線を。恋心を。


何度挫けそうになっても立ち上がり、食らいつく。大きな壁に立ち向かうその背中は、誰よりも輝いて見えた。その眩い背中に、君自身に、私は恋をしていた。


けれど、挫けそうになるあなたを支えるのは私の役目じゃない。その落ち込んだ肩に手をかけるのは、震えるあなたの体を包み込むのは、私じゃない。私よりも何倍も綺麗で大人びたあの子。



悔しい、なんて思わない。私は声をかけることすらしなかった。大きな大きな何かに向かって走っていくあなたの背中を見つめていた。ただそれだけ。



"願うことや祈ることしか出来ない自分の無力さは、何よりも、君に届かないこの気持ちが教えてくれる。"

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