第11話 愛

 最初に感じたもやもやした感情。あれは間違いだった。私との違いにもやもやしたわけじゃなかった。きっとその時から、私はもう……。

 そんなその子に、私は自分の在り方を初めて人に打ち明けた。私は鏡で、相手に合わせるだけの存在だって。

 なぜ打ち明けたのか分からない。でも、その子に隠したくなかった。これが私だって見てほしかった。大嫌いな私の本当の顔。どうせなら、否定されるなら、この子にされたいって思った。思ったのに。


「鏡は鏡自身が綺麗じゃないと映せない。だからあなたの心は綺麗なんだね。」


 否定するどころか、私を認めてくれた。大嫌いだった鏡の私を。真っ直ぐな瞳で、嘘偽りのない言葉で。

 嘘をついてないのは知っていた。嘘をつく理由がない。この子は、嘘で人をおだてるような事はしない。優しいけど、間違ってる事はハッキリ否定するから、その言葉はこの子の本心。

 深くは考えてないのかもしれないけど、考えずに口にしたからこそ私の心に深く響いた。

 その時気付いた。私の中に芽生えた初めての感情。もやもやの正体。


 私は、この人が好き。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る