第27話 タタラ盗賊団討伐クエスト5

 天志達はグリーフ城に戻り、着いたところでラインを使って自分達の到着を、先に戻っていた樹神達に知らせ合流し、どうせつけていただろうリンとヒースが来たところで、ヤドリギに戻った。


 そしてヤドリギで夕食を食べながら今日の報告と、明日の計画を立てる。


「タタラって奴は多分、頭が弱いから、たいしたことはないと思うわ」


「俺も咲と同意見だ、今日終わらせたいくらいだったからな」


「俺は何かヤバい感じがしたんだけどな~」

 菊之助の感じたものは、普段みんなが菊之助から感じているものだった。


「アジトの回りにも罠のようなものは何もなかったわ」


「そうなんだね、何か思ったより簡単に終わりそうだね、こっちは想像以上に大変だったの、樹神ちゃんも怪我しちゃったし」

 別行動の三人の顔色が変わる。


「かなが直してくれたから大丈夫だよ」

 樹神の言葉で少し安心したようだが、三人は盗賊団を一人も逃さないことを、誰も口には出さないが三人が心で誓う。


「いつでも直すけど、もう怪我はしないでね、かなが今日感じたことは馬車の上だと弓が全然ダメなこと、もっと練習しないと全然当たらなかった、それと誰かを守りながらは想像以上に大変だと感じたよ」


「私も作戦を立てる上で、もっと先にできたことがたくさんあったと感じたわ、グリーフ城の酒場でもセルタと同じような情報は得られたはずだし、先に街道を下見しておけばもっと違う作戦も立てられたと思うわ、あんなマラソンもしなくてよかったのに」


「でもあのマラソンがなければ、達人の呼吸は見れなかったけどな」

 菊之助以外の全員が笑う


「天志、今度お前にもあの呼吸させてやるからな」


「俺は達人じゃなくて凡人でいいから遠慮するわ」


「いつかゼッテェにコホらせてやる」


「一つ気になることは、なぜあんな三流以下の盗賊団が、ここに来て暴れだしたのかってことね、点呼もできない奴らよ」


「えっ!そんなにひどいの?」「弱い子なんだね~」


「ええ、本当にひどいの、菊以下よ」

 菊之助以外の全員がフリーズし、これからヤバい奴と戦う覚悟を決める。


「ほめんなよ咲、俺以下なんてわかってるぜそんなことは、大抵の奴は俺以下だ」


 天志達は今日の反省点を上げ、次はどうしたらいいかを一人一人が話す、そして明日の作戦を立て全員が納得したところでヒースが話し出す。


「今日一日で大分成長したみたいだな、全員が今日の反省、次への課題が出てくるって言うのはいいことだ、このクエストを受けた甲斐があったな、俺が話そうと思っていたことは、ほとんど自分たちで解決できたみたいだしな、ただどんなに格下だと思っても油断はするな、自分ができることに手を抜くな、できないことはできるように努力すればいいが、できることをやらないってのは単なる手抜きだからな、そこで一つ、咲、お前今日敵のアジトで手抜きしただろ?何でだ?」


「えっ、ああ、いつもならもう少し偵察してたわね、でもあいつら本当にダメダメだったのよ、それで拍子抜けしちゃったって言うか、そんな感じね、反省するわ、次からはどんな雑魚でもやれることは全部やる、一切手は抜かないわ」


「頼んだぞ、俺が咲に作戦関係を期待しすぎちまってるのがいけねぇんだけどな、後咲以外にそういうところに気が回る奴が居ないのも問題だけどな、そこんとこはこれからの課題の一つだな」


「かなもそういうのもっと頑張るよ、戦闘力じゃまだまだ皆に追いつけそうもないし、何かで皆の役に立ちたいから」


「いい心がけだな、でもかなめ、俺が見た感じだとお前の戦闘力だってかなりのものだぞ、魔法だけで言ったら一番お前が強いんじゃないか」


「ヒースさんそれホントっ?」


「ああ、後は自分のイメージをどれだけ魔法として使えるかだな」


「イメージ?」


「ああ、この際だからちょっと説明するとな、魔法ってのは火、水、風、土、雷、の五つが基本だ、そして自分の得意な魔法があるんだが、かなめなら風だな、他のも覚えるかもしれないが今のところは風だ、風魔法の使える奴はウィンドが使える、どこまで強くなっても使える魔法はウィンド一つだ、こっからが本題で、その魔法を自分で色々イメージし形を変えてやるんだ、例えばだが俺は火の魔法を使える、ファイヤだ」

 そう言ってヒースは小さな火の玉を人差し指で作った。


 全員真剣に聞いている、特に天志と樹神は目が輝いていた、だがその二人よりも心で熱くなっていたのがかなめだった。


「これは火の魔法が使える奴の唯一の魔法だ、何もしなければ一生これしかできない、だがイメージで形を変えてやると」

 人差し指の火の玉がリング状に形を変えたと思ったら、今度は棒状になり火の色が濃くなった。


「こんな風に形を変えたり、熱量を変えたりイメージでどうとでもなる、俺がこのヤドリギと同じ火の玉をイメージすればそれも実現可能だ、ただどんなにイメージが膨らんですごい魔法が思いついても、それを形にし維持してやることができなければ意味がない、そこに関係してくるのが魔力とMPだ、これが足りなければ、どんなにすごいの思いついても何にも出ないからな、まっだから魔法は全てオリジナルだと思ってくれればいい、だから皆自分で名前を付ける、イメージを言葉にしてやるってことは結構大事なんだぞ」


「結構奥が深いのね」「かな頑張るよ」「コダマンも」「俺もだっ」「・・・俺は、俺は魔法が使いたい」

 天志だけはどの属性の魔法も使えない、レベルが上がっても、何も覚えられないのだ。


「今日はこんな所にしておくか、魔法は今度一人づつにちゃんと説明してやるから、今は明日のクエストのことに集中しろよ」


 天志達は明日の作戦をもう少し話し合い解散する、タタラ盗賊団の討伐は明日の早朝、日が出る前から開始だ、それぞれが何かを思いながら眠りにつく、天志と一緒のベットで寝ているリンが天使に言う。


「テンテン」


「なんだ?」


「リン最近出番少なくない」


「ああ、ヒース来てから少ないかもな」


「解雇しちゃおっかな」


「何ふざけてんだよ、明日ハエーんだ寝るぞ、おやすみリン」


「おやすみテンテン」

 リンは本気でヒースを解雇しようか悩みながら眠りについた・・・

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