第26話 タタラ盗賊団討伐クエスト4

 天志達は樹神達が乗った馬車を距離をとって尾行していた。


「今回は現れてくれよ、これで現れなかったら俺死んじゃうかもしれねぇ」


「今回だけは私も菊と同じ意見よ」


「なぁ菊、あの呼吸法もう一回やってくれよ、あそこからどんな神技がでるのか見てぇんだ」


「達人の呼吸法じゃねぇわ」


「ふふ、あれは私も期待したわ」


「咲まで乗っかるんじゃねぇよ」

 天志達が菊之助をからかっていると前で動きがあった、森から盗賊が出現し馬車を追いかけていく。


「やっぱりあの森ね」


「そうだな、後は樹神達が上手く追い払ってくれれば第一目標は達成だな」


「そこからは私達の番よ、気を抜かないで」


「おおう」「了解」

 盗賊が一人落馬した、他にも何人かが傷をおいスピードが落ちていく、負傷した盗賊達は追うのを諦め、落馬して馬に逃げられた仲間を回収する、そして四人の盗賊が森の方へ戻っていく。


「あれを尾行するわよ、馬車を追って行った仲間が帰ってくるかもしれないから、後ろの警戒も忘れないで」

 二人が頷き後をつける、森の中に入れば隠れやすく尾行もしやすかった。

 盗賊達は前回天志達がキングゴブリンと戦った森の中心部に、小さな小屋と柵を立て馬小屋のようにしていた、全部で二十頭くらいの馬がいる、決して広くはないその場所で馬は窮屈そうだ。


 盗賊達は小屋にいた仲間と少し話し、更に森の奥へと移動する、そして森を抜けるとそこには岩山があった、その岩山を背に小屋があり、小屋の回りを簡単な柵でかこっている、盗賊の仲間が数人外にいて、傷ついた仲間に手を貸して小屋の中へと入っていった。


「ここがアジトか」


「間違いなさそうね」

 天志のつぶやきに咲が答える、天志達は盗賊のアジトを発見し、更に情報を集める。


「タタラって奴はどこにいるんだ?」


「菊、それを今から探すのよ、でも、何でこんなにお粗末な盗賊がいきなり暴れだしたのかしら、馬車を襲撃するにしても、あんなやり方じゃ成功率は低そうだし、アジトに帰るにしても尾行を気に掛ける素振りもなかったわ、三流以下の盗賊に見えるんだけど」


「このまま突っ込んでも案外いけんじゃねぇか」


「だから天志はヒースにイノシシって言われるのよ、簡単に突っ込むんじゃないわよ」


「ちょっと言ってみただけだよ」




 その頃、樹神から一人だけ逃げられた盗賊が、森に入ろうとしていた。


「何だったんだよあのガキは、化物じゃねぇか」


「家のかわいい樹神を化物呼ばわりしないでくれるかなっ」

 盗賊の後ろにヒースが立っていた。


「!だっ、誰だてめー」


「俺か?俺はそうだなぁ~・・・うん、そう辻斬り、俺は通りすがりの辻斬りだ」


「てめー何わけのわからねぇ事言ってんだ、この俺をタタ、タッタッ、ら~・・・」

 ヒースは何もしていないようだが、盗賊の体が右と左に別れて倒れた。


「手を出す気はなかったんだけな、何かイラついたからわりぃなっ、ほら俺辻斬りだから、それに最初に許さねぇって言っといたよな」

 ヒースはまだ怒りが収まらないという顔をしながらリンの元に戻る。


「手は出さないんじゃなかったっけ?」


「手は出してねぇだろ?何か見えたのかい?」


「ヒースさぁ、リン力を失ってるからって目まで悪くなってないんだよ」


「なんだよ、見えてたのか」


「リンも結構すごいでしょ」


「はっ、昔のあんたは凄いを超えてたよ、まったく、天志達には俺が一人やったってこと内緒にしてくれよ」


「うん、わかったよ」




 ドカーン!盗賊の一人がドアを蹴って出てきた。


「残りの奴らはまだ戻ってこねぇのかっ」


「まだ戻りません、もしかしたらやられちまったのかも」


「あああぁ、もう、また人数減っちゃったの、今何人いんだよ」


「二十は居るかと」


「正確なっ、数字がっ、知りたいのっ、ばかっ」

 バカはコイツだ、天志達に見られていることも知らずに点呼を始めやがった。


「いち、にぃ、さん、しぃ、よん、ごぉ、ろく、なな、・・・・・・・・にじゅうに」


「なぁ、咲、天志、何かおかしかったよな今」「多分、いや絶対あいつらバカなのよ」「だな」

 陰から天志達が盗賊団のバカに気付いた


「頭(カシラ)、今全員で二十二人です」


「全然少ないじゃん、この前まで五十人はいただろうが」

 頭と呼ばれた男、こいつがタタラだ、黒い髪を頭頂部だけ残し三つ編みにしていて、回りは全部反り上げている、左側頭部には、たったら~と刺青が入っていた、バカだ、上半身は裸にベスト、下はピッチピチッのスパッツみたいなズボンをはいていた。


「あいつがタタラね、天志、もうこのままヤッテ頂戴」「俺も今そう思ってたところだ」

「待てっ、あいつは手強そうだ、何か匂いが違う気がするぜ」

 バカがバカに共感したらしい、とにかく、ある程度の情報を入手し、あの程度の敵なら大丈夫だろうと、一度グリーフ城に戻ることにした。

 その時にヒースから、どこか目立たず隠れられる場所に貼ってきてくれと頼まれた紙を、咲が貼りつける。


「帰りましょうか」

 咲の言葉で天志達はグリーフ城に帰る、誰もテレポが使えないので三人は歩いて帰るしかなかった、転移での移動に慣れてしまったことと、想定外のマラソンで疲れていたことが、そうさせたのか、それともタタラ盗賊団のバカすぎる行動がそうさせたのかわからないが、普段の咲ならもう少し相手の情報を得ようとしただろう、だが今回はそれをしなかった・・・




 タタラが蹴って出てきた扉から一人の人物が出てくる。


「大分人数減っちゃったんですねぇ、でも僕が居れば大丈夫ですよ、タタラン」

 髪は左半分が赤色、右半分が青色、赤い髪の方は短髪、青い髪の方は耳より長いアシンメトリーな髪型だ、目は鋭く細いのか、閉じているのかわからない左目、右半分はピエロの様なお面を付けていてもっとよくわからない、服装も左が赤のタイトな感じ、右が青でゆったりしている、靴だけは両方先のとがった白い靴だ。


「おお、何かあったら頼むぜ」


「任せてください、それとっ」

 不意に盗賊団の一人が倒れた!倒れて地面にぶつかった衝撃で、頭と体が離れた!


「これで二十二人ですよ、クククっ」

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