第25話 タタラ盗賊団討伐クエスト3
お婆さんが落ちた!かなりのスピードで走っている為、みるみるお婆さんを置いていく、かなめにお婆さんの所に行くと伝えようと思ったが、樹神はやめた、伝える時間がもったいないと、早く助けに行かないと間に合わないかもしれないと、何も言わずに飛び降りていた。
盗賊に追われていたので通常よりも速いスピードで走行していた馬車から、何の躊躇もなく樹神は跳んでいた、地面に落ちるまでの時間が長い、ダッッ、そして全速力で走ってお婆さんの元へ向かう。
かなめが盗賊を振り切ったと安心したその時、走って戻っていく樹神が視界に入る、かなめはそこで樹神が飛び降りたことを知る「樹神ちゃーーーん」かなめが叫ぶが樹神は振り向かない。
一秒でも、一歩でも早くお婆さんの元に行くために、この時の樹神の行動で、一つでもロスになることをしていたら、樹神は間に合わなかっただろう、おばあちゃんを守る!その一点に集中し全ての無駄を省いた行動をとったからこそ間一髪で間に合った。
盗賊が弓を構えようとした時、樹神は美雷を投げた、お婆さんの前で盾になるように、そしてバカデカいハンマーが五本の矢を弾く、だが最後に放たれた一本の矢だけがハンマーに当たらず、お婆さんの足に刺さる!ところで樹神が小さな腕でかばった、樹神の左腕から血が流れる。
「おばあちゃんに近づくなっ」
「何だぁこのガキは」「なぁ、こんなデケーハンマーどっから飛んできたんだ?」
盗賊たちが辺りを見回すが、子供以外の人影はない
「ババアの孫か」「ガキがババアかばって血ぃ流してるゾっ」「可愛そうだから一緒にヤってやるからな」「おっ、お前もいいとこあるじゃねぇか」
ガッハッハー、と盗賊達が笑う
その時、樹神から100mは離れた身を隠せる場所にリンとヒースはいた。
ヒースは腰に下げている剣に手をかけ物凄い形相だが、リンに止められて動かないでいる。
「ヒース、もう少し待ってて、ここからならあのくらいの敵、全然間に合うでしょ!」
「それもそうだが、ダ・スルーム、あいつら家(ウチ)の樹神を傷つけやがった、ゼッテェ許さねぇ」
ここにも秘かに、樹神に心奪われたオジサマがいた・・・
樹神は怒っていた、今日知り合ったばかりのお婆さんだが、樹神達に優しくしてくれたお婆さん、その人を傷つけようとしている盗賊に怒っていた。
そしてお婆さんを、自分の深い深いところにある、自分でもハッキリ思い出せない、記憶の中の大事な人に重ねて怒っていた、許さない、おばあちゃんにも、おばあちゃん先生にも手を出す奴は許さない。
「悪者はコダマンが倒すっ」
「俺達悪者だってよ」「間違っちゃいねぇな」「やられちゃう~助けてぇ~」ダッハッハッ
盗賊達は樹神をバカにしながら又笑い出した、その時!「ニードル・ヌードル」盗賊の一人の額に鋭く尖った物が刺さり、そのまま倒れた。
「!おい?、なんだ??、どぉした?!」
盗賊達が慌てだす、回りをきょろきょろ見るが、誰もいない、いるのは先ほど飛んできたバカデカいハンマーを持ち上げている子供が一人だけだ!ん?なんだ?持ち上げている?子供が?!あのデカいハンマーを持ち上げている!盗賊達の思考回路が遅れて情報を拾ってくる。
「おい!」「何だこのガキ」
そう思った時には、もう二人の盗賊が倒れていた、樹神の武器、美雷の平ではないもう片方の、鋭く尖った部分が3mは伸び盗賊の三人を刺し殺していた、残っていた三人が慌てて樹神に矢を撃つが、樹神がニードルと呼んだ場所がクネクネっと器用に動き三本の矢を落とす。
「ばっ化物だ」
三人の盗賊が逃げ出すが樹神のニードルが後ろから一人を刺し、二人目を刺す、三人目も追いかけたが5m程でニードルが止まった、伸びる長さの限界のようだ。
樹神は追いかけようとしたが、天志達が尾行することを思い出し追うのをやめた、お婆さんから離れたくなかったと言いうことも、樹神の足を止めた一つの理由だ。
お婆さんは街道の両脇に生えている長めの草の上に落ちたようで、ほんの少しかすり傷があるだけのように見えるが、落ちた時に頭を打ったのか気を失っているようだ。
「おばあちゃん」
心配そうに樹神が声をかける
「ん、ううぅ」
お婆さんの意識が戻る
「おばあちゃん、大丈夫?どこか痛いとこない?」
「うぅ、こ、樹神君?」
お婆さんは体を起こし周りを見る、盗賊が五人転がっていた
「樹神君が助けてくれたのかい?」
「うん、コダマン強いんだ」
お婆さんはその時、樹神が腕から血を流しているのに気づく
「樹神君!腕、血が出てるじゃないか、私なんかを守るために傷つくんじゃないよ」
「大丈夫だよおばあちゃん、全然痛くないから、へへ、おばあちゃんは痛いところない?」
お婆さんは涙を流しながら樹神を強く抱きしめた。
「ええ、大丈夫よ、こんな老い先短い婆さんの為に、あんたみたいな小さな子が傷を作ってぇ、もし命を落としていたらどするんだい、でも、ありがとぉね、樹神君は本当に優しい子だね」
お婆さんは更に強く樹神を抱きしめた、こんな小さな子が血を流しながら自分を助けてくれた、そのことが矢で刺されるより痛かった、あんなに血を流しながら、それでも自分を心配してくれる、優しい言葉が嬉しかった。
「泣かないでおばあちゃん、女の人はねっ、男の子が守ってあげなきゃいけないんだっ」
お婆さんの涙はとまらなかった・・・
そこにかなめが走ってやってきた、「樹神ちゃん大丈夫?ケガは!」樹神の血に気づき慌ててかなめがヒールをかける、お婆さんは?多少の擦り傷、念の為お婆さんにもヒールをかける。
「かなありがとねっ」「かなめちゃん、ありがとうね」
「二人とも大丈夫?」
二人が頷く
「それじゃあお婆さんもいるし、かな達は一回歩いてグリーフ城に戻ろっか、大丈夫だとは思うけど、もう一度傷の確認もしたいし」
「うん、おばあちゃんバックは大丈夫?」
お婆さんが近くに転がっていたバックを拾い、中を確認する。
「ええ、大丈夫よ、本当に優しい子だね」
樹神達のいる場所は、キングゴブリンを倒した森よりもグリーフ城に近い位置だ、歩いて15分か20分で着くだろう、樹神とかなめは一先ず自分達の役目は果たし、グリーフ城へと戻っていくのだった。
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