第23話 タタラ盗賊団討伐クエスト

 夜の海辺に天志は立っていた、人の笑い声や話し声、周りには何人かの人がいる、その日は満月で、夜なのにかなり明るい「天志~」女の人に呼ばれて、波打ち際に立つ女性の方に視線を移す、天志が視線を移した時、水平線に何かが光った気がした・・・・


 天志は目を覚ます「夢か」でも何か見覚えのある景色に、聞いたことのある声だったような気がする・・・

 いや、呼ばれた気がしただけか、よくわからない、でも何か懐かしい感じのする、胸に残る夢だった・・・


 寝返りをうつと目の前には丸まって寝ているリンの顔があった



 天志達はヤドリギで朝食を食べながら、ヒースの話を聞いている。

「お前らに今日やってもらうクエストはこれ、タタラ盗賊団討伐クエストだ、グリーフ城からセルタに向かう街道で盗賊団が最近暴れてるらしい、前からちょこちょこ馬車を襲っていたみたいだが、最近は手あたり次第になってきて、放置できないレベルになってきたらしくてな、クエスト依頼が出たようだ、国が動き出す前にお前達でかたづけろよ」


「対人クエストって言うのは初ね」

 天志達はあれから数日、ヒースの持ってきたクエストと国冒専用ダンジョンを毎日こなしていた、ダンジョンは5階までクリアしている。


「そうだな、対人になると場所の特定、地形や人数の把握など魔物に比べて難易度が高くなる、今なら五人でAランクの魔物を一体倒す方がもしかしたら楽かもな」


「そんなに難しいのかよ」


「特にお前や菊之助には厄介なクエストになると思うぞ、イノシシにはな、ははっ」


「テンテンとキク肉マンには難しいと思うぞ、はっはっはっ」

 特に樹神には難しい気がするが、誰もそこには触れない、いや他の人は本当に樹神より天志と菊之助の方が難しいと思っているのかもしれない。


「このクエストを二日でやってもらう、ダンジョンも忘れるなよ、とは今回は言わないから安心しろ、今日と明日はこのクエストに集中してもらう、一応俺もついていくが、俺が手を出すようならダンジョンは1階から再スタートしてもらうからな」

 

 国冒専用ダンジョンは一度クリアしている階はとばしていくことができる。

 同じ階層を何度行ってもいいが天志達は通常では考えられない、一月でレベル50、地下10階クリアという難題を突き付けられているので、そんな無駄な時間はない。

 1階から3階までは一時間程でクリアした天志達だが、4階は時間ギリギリ、5階に至っては何度かタイムオーバーで外に戻され、昨日やっとクリアしたフロアだ、戦闘力やレベルの問題というよりは、経験不足からくるタイムオーバーだ。

 

 もう一度やり直せと言われればできなくはないが、かなりのタイムロスになることは確実だった。

 ヒースはそれがわかっていたため、あえてダンジョンにはいかせず、経験不足を補う為の依頼を受けた、そして二日間はクエストに集中させることにした。


「とにかくタタラってのを倒せばいいのか?」

 天志が聞く?


「盗賊団とあるから、タタラってのを捕まえるくらいじゃダメだろうな、盗賊団のアジトを見つけ、そこを潰し、頭のタタラと何人いるかわからないが、それに続く幹部を捕まえるくらいしないとな」


「先ずはアジトの特定と、人数、主要メンバーの割り出しと言った所かしら」


「さすが咲、説明しなくてもわかってくれる奴が居るって言うのは助かるな、いいかお前ら今日は情報収集、アジトの特定は最低条件だ、最悪一日くらいは伸びてもいいと思っている、ケツは変えないけどな」


「どの道後が大変になるなら、急いだほうがよさそうだね」


「かなめ、だからと言って焦って急ぐと痛い目に合うからな」


「うんわかってるよ」


「よし皆食べ終わったな、いつも通り天志、咲、菊之助は俺が、樹神はかなめが連れてくからな」


 テレポは魔力によって、一緒に転移できる人数が違う、以前かなめの魔力なら二人はいけそうだとヒースは言ったが、試してみたら樹神は安定して飛べるが、他の人だと無駄な力を使ってしまっているらしい、大きさの違い、質量の違いで安定しないんだろうなとヒースは言っていたが、今のところテレポでの移動は今ヒースの言ったグループに固定されている、リンは自分で移動だ。


 天志達はテレポでグリーフの街まで移動し、ヒースに後は自分たちで考えろと言われ、作戦を立てる。


「先ずはアジトの特定からね、誰かいい案あるかしら?」


「五人でバラバラに探すっていうのはどうだ」

 菊之助が案を出す。


「敵に見つかった時に一人で対処できるかが問題ね」


「咲ねぇは何か考えあるの?」


「ええ、一応はあるわ」


「どうするんだ?」

 天志が尋ねる


「皆の意見を聞いてからにするわ、私の意見が絶対というわけでもないし、もっといい作戦があるかもしれない、それにもし私が居なくなった時に、作戦一つ立てられなければ後で困るのは皆だから」


「そうだな、咲に頼りっぱなしって言うのも問題だよな」

 天志の言葉で皆真剣に考える。


「コダマンおとり作戦は?」


「どうするのかしら?」


「えっとね、コダマン一人で道歩いてくでしょ、ワルモノ出てきて捕まるんだ、アジトに着いたらコダマン変身、どお?」


「何か、樹神ならできてしまいそうだけど、樹神を囮にするのは気が引けるわね、それに樹神みたいな子供を襲うメリットがあると相手が思うかどうかが問題ね、他に何かあるかしら」


「樹神じゃない囮を使えばいいんじゃねぇか、囮っていうとちょっと違うけど」


「どういうこと天志君」


「馬車を手当たり次第に襲ってるんだろ、なら馬車を見張ってれば盗賊団が顔を出すってことだよな、襲って来たところを捕まえてアジト吐かせればいいんじゃねぇか」


「それもいいわね、でも何人で来るかがわからないわ、一人でも逃がせば報告されて、逃げられてしまうかもしれないわ」


「じゃあ捕まえなきゃいいってことだな」


「あら、意外と頭の回転はやいのね天志は、私も天志と同じことを考えていたのよ、ただ補足すると、三人が見張りで、二人は馬車を守るために馬車に乗ってもらおうと思っていたの、馬車に乗っている人達をできる限り助けられればと思って」


「その作戦よさそうだな」「うん、いいと思う」「いいともぉ~」


 天志と咲の意見に全員が賛成し細かい作戦を立てる。

 馬車の護衛役は樹神とかなめだ、盗賊が現れた時に遠距離攻撃ができるかなめと、馬車が襲われた時の為に、現在一番戦闘力の高いと思われる樹神で対処する、最悪の場合この二人なら、かなめのテレポで逃走できるというのもこのペアになった理由の一つだ。

 上手く馬車を守り切れれば、かなめと樹神はそのままセルタの町まで行ってもらって構わない。


 盗賊を上手く撃退できれば、馬車を尾行していた天志達が、尾行対象を盗賊にチェンジするという計画だ、そのままアジトまで尾行し、できる限りの情報を集め、ヤドリギに集合する、それが今日の最低目標だ。


 そして天志達はセルタへと向かう馬車の出発を待つ、初めての対人クエストが始まる。



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