第二章 東から忍びよる白い影

第22話 復讐者

 レイウルフの群れが男を取り囲んでいる、数体は倒しているようだが、残りの数は14、その中の一匹だけ白い毛に青い線が入ったような毛並みをしている、ガレイウルフだ、レイウルフの群れのボス的存在、ランクはレイウルフと同じBだが、同じBでも強さには幅がある。

 もちろんレイウルフよりガレイウルフの方が強い、身体も一回り以上大きい、特に厄介なのが、ガレイウルフは必ず十匹以上の群れで行動することだ、ガレイウルフが居ればそこには十匹以上のレイウルフがいる。


「次から次へとムカつく犬が、消えろっ」

 男は持っていた槍を地面に突き刺し両手を合わせ片膝をつき、左手を雪の積もった地面に当てる「炎陣(エンジン)」男が言葉を発すると左手を中心に赤い円ができ大きく広がる、その円はどんどん広がり、回るく男を取り囲んでいたレイウルフ達の足元まで広がった。

 その瞬間男は地面から手を放し掌を空へと向ける、すると地面から物凄い火柱が円状に上がりレイウルフを霧にした、雪で覆われていた地面に回るく土が顔を出す、だがガレイウルフだけは後ろに跳んで避けたようで無傷だ。


「何自分は特別ですみたいな顔してんだよ」

 ガレイウルフに向かってそう言うと、男は片膝をついたまま刺さっている槍を握る、「ガアァアァ」とガレイウルフが男に向かって跳びかかる、跳びあがった瞬間地面から三本の槍が飛び出しガレイウルフを空中で串刺しにして霧にする、三本飛び出したように見えたが地面から見えているのは一本の槍だけだ。


「ふぅー、まだ三本が限界か、まだまだ弱すぎだな」

 そう言うと立ち上がりスキャンを唱える、西か、いや南の方が数は居るな南に行くか、男は南の方へと歩きだす、俺は復讐者だ、もっともっと強くならないと復讐どころか毛程の傷も付けられねぇ、まだ全然イメージに体がついてこねぇんだよな、せめてアレを使えるくらいにならないとだめだ。

 

 今はあいつの前に立った瞬間終わってる、それじゃ麗奈に会わせる顔がねぇよな、でも腹減ってきたな、南の奴ら狩ったら一回町に戻るか、そんなことを考えながら男は魔物の群れを探し南へ向かう。



「はぁまた犬かよ、俺は猫より犬派だからあんまり犬はやりたくねぇんだよ、でも仕方ねぇよな魔物だし容赦はしねぇよ、時雨(シグレ)」

 男は槍を構えレイウルフを次々串刺しにしていく、八匹いた魔物もあっという間にかたずける、ここは犬しかいねぇのかよ、場所でも変えるか、デストは多分即死だろうから陸伝いに行けるとしたら、グリーフかサバールか、グリーフはここより魔物が弱いからサバールでも行ってみっ!!


 突然上空から3mはある火の玉が飛んでくる、男は左に跳んで回避しながら武器をだす。

「お前か、また会ったな、同じ奴かしらねぇけど、今回は霧にしてやるから下りてこいよ」


 火の玉を撃ってきたのは火竜(カリュウ)だ、前回男が逃走した火竜が上空にいた、男は火竜に下りてこいと言ったがさすがに言うことは聞いてくれない、上空からもう一発火の玉を撃ってきた、今度は1m位の大きさだ、男は難なくかわす、だが火竜は男のかわした先にもう一発の火の玉を撃っていた。


「チッ」

 男は槍で火の玉を弾いた。


「お前頭いいんだな、そういうところムカつくぞ」

 男は火竜に向かって槍を突く、槍は上空の火竜まで一瞬にして伸び羽に穴をあける、火竜はよけるつもりだったみたいだが間に合わなかったようだ、「チッ、意外と速いな」羽に穴をあけそのまま男は槍を横薙ぎに振る、火竜は胸の辺りを深く切られ地上に降りてくる、地上に降りたと同時に火の玉を撃ってきた、火竜は撃った火の玉の後ろから男の方に突っ込んでくる。


「ちょっとイテェけど我慢しろよ俺」

 男は槍を構え火の玉に向かって槍を突く、槍はぐんぐん伸び火の玉を貫き火竜の手前で三本になり、眉間、喉、胸を突き刺した「グギャアァーー」と言う鳴き声と共に火竜は霧となる。

 ただ火竜の撃った火の玉は消えておらず、火竜を突き刺したと同時に男に直撃した、男は目の前を左腕でガードしたがそれでもダメージはある。


「くうぅ、いてぇ、やめとけばよかったぜ」

 深く被っていたフードが飛ばされ、銀色の短めの髪が露になる、目は綺麗な二重で瞳は深い青色、口元は隠れているが整った顔をしているのがわかる、左耳には女の子が付けそうなピアスをしている。

 マントの下は毛皮のコートに革のパンツ、防寒性に優れていそうなブーツを履いていた。


 でもAランクの火竜をやれたってことは、前よりかは強くなってるな、それにあの火の玉の直撃も前よりかは痛くねぇし、今日は一回帰るか腹減ってだめだ。


「テレポ」

 男が唱える、男はコーラリエの町に転移していた、男は慣れた感じで移動し一軒の宿屋の前まで行き、宿屋スイセンに入る。


「お帰りなさい、橘さん」


「ただいまエリカさん、何か食べるものもらえる?お腹空いちゃって」


「ええ、すぐ用意するわね」

 エリカさんと呼ばれた二十代の女性が厨房に行き、5分ほどで料理を運んできた。


「お待たせ」「ありがとっ、後ワインも一杯もらえるかな」


「はいどうぞ」「どうも、いただきます」

 男は余程お腹が空いていたのか無言で黙々と食べ、すぐに料理をキレイに平らげた、最後にワインを一気に飲み、声の届くところにいたエリカさんに声をかける。


「エリカさんご馳走様美味しかったよ」


「もう食べたの、あ、それとそのフードどうしたの?焼けちゃってるみたいだけど」


「ああコレ?火竜に燃やされた、明日でも新しいの買いに行くつもり」


「火竜って、そんなに強いのと戦ってたの?あまり無茶しちゃダメよ、ほら脱いで、私が明日までに直しておいてあげるから」


「ホント?ならお願いしようかな」


「ええ、任せて、他のお客様には内緒よ」


「了解、今日はもう寝るけど、フードおねがいします」


「わかったわ、おやすみなさい」


「おやすみ」


 男は自分の部屋に戻りシャワーを浴びて横になる。


 今日もいくつかレベルが上がったな、スキルブックを手に取り確認する。

 橘零(タチバナレイ)18歳 ギルドランクA レベル41 

HP318 MP198


 昨日から3しか上がってないか、さすがにこのレベルになってくると上がりずらいな、少し何か考えないとな、とりあえず今日は寝る、無理体が重い、おやすみ麗奈・・・


 男はすぐに眠りに落ちた・・・



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