第21話 動き出す者

 天志達は最初に入った20畳ほどの部屋に戻ってきた、そして全員外に出る、辺りはもう真っ暗だ

外に出るとヒースとリンが待っていた。


「みんなお疲れ~想像以上に早かったね」


「あんなのは余裕だな、俺はまだまだ行けたぞ」「コダマンも~」

 天志と樹神は全然元気そうだが、他の三人はかなり疲れている様子だ。


「まだ21時前だからワンフロア1時間程度でクリアしてきたってことか、地下3階までだったとしても初めてにしては上出来だな、この調子でガンガンいってくれ、俺の方は天志から頼まれたハパールの宿屋予約入れといたからな」


「オッサンも仕事が早いな」


「ふっ、このオジサマもなかなか使えるだろ、で、どうする、すぐに移動するか?」


「俺は何でもいいぞ、まだなんかあるならやれる」「コダマンもやれる」

 他の三人は宿に戻りたそうだ。


「よし、一回ハパール行くか、ヤドリギで飯食ってその後動ける奴は、俺と一緒にお前らのお仲間探しにいくぞ、かなめが大分へばってるから、今日は俺が往復する、元気な天志と樹神はちょっと待ってろ、先にかなめと菊之助と咲連れてくから」


「はいよっ」「わかった~」

 ヒースは三人を連れ転移した。


「リン仲間探しってどこに行くんだ?」


「今日はギザの村かな」


「ああ、お前が最初に言ってたとこか」


「ん?言ったっけ?」


「言ったよ」


「まっいっか、でねギザの村は超狭いから、酒場に行けば終わりだね、知らない顔が来たらすぐに噂になって、大抵の人は知ってるから、誰かがギザに寄ってれば、そこに居ても居なくても足取りはすぐつかめると思うよ」


「そっかなら余裕だな」

 天志とリンが話していると、ヒースが戻ってきてそのまま天志達を連れて転移する。


「女将さんただいま」「ただいま~」「ただいま~」


「天志ちゃん、樹神ちゃん、リンちゃんお帰りなさい、いつの間にか大所帯になったわね」


「コダマンの仲間だよ、いいでしょ~」


「ええ、いいわね樹神ちゃん」


「へへへ」


「ほら、お腹空いたでしょ、いっぱい食べなさい」

 ダンジョンに潜っていた天志達は、お腹が空いていたようであっという間に食べつくす、食べるとすぐに咲が席を立つ。


「今日は先に休ませてもらうわ、早くシャワーを浴びたいの汗でもうビショビショよ」


「かなも今日は寝るねっ、ヘトヘトだよおやすみ~」


「俺もだめだ寝る、また明日な」

 三人は疲れた体を引きずって部屋に戻っていった。


 天志達は三人が部屋に戻った後すぐにテレポでギザに転移する、村の回りを簡単な柵で囲っているだけの、海辺にある小さな村ギザ、すぐに酒場に着いてマスターに話を聞く、マスターと言ったが、そんな洒落たものではなく、どこにでもいる酒好きのオジサンだ。

 オジサンの話では何日か前に一人の女の人が来て、大きな町はないかと尋ねてきたらしい、オジサンはハパールの町と、海沿いに南へ行った場所にあるセルタの港町を教えたらしい。


「マスターありがとよ」

 ヒースが酒場のオジサンにお礼を言ってハパールに戻る。


「ダ・スルーム明日はセルタに飛んでみるか」


「そうだね、でも皆がダンジョン潜ってる間に行ってきた方が効率よさそうだね」


「そうだな、時間が遅くなりすぎるのも問題だな、ダンジョンには俺はついていけないから、天志達がよければその間に行ってくるが」


「俺は構わないぞ、何か魔法も思ってたのと違ったし、一回やればもういいや、樹神はこの通りだしな」

 樹神は天志の背中で眠っている、元気よくギザに行ったがすぐに「眠いテンテンおんぶ」と言って、ギザに着いてから天志の背中で眠っている。


「よし、それじゃあ明日からはクエストやって、昼飯食ったら別行動だ、細かいことは明日の昼にでも説明するから、今日は休め」


 天志は樹神をベットに寝かせ、シャワーを浴びて眠りにつく、リンはいつも通り天志のベットで一緒に眠る天志の長い一日が終わった・・・




 ここは砂の大地サバールの首都ラムール、砂の大地に一か所だけ緑が生い茂り、花が咲く場所、高さ2m位のレンガの壁から一歩足を踏み入れれば、そこが砂漠のど真ん中だということは忘れてしまいそうだ、その中心部に位置するのがラムール城だ。


 そんなラムール城の一室に居るのはサバール国の現在の王、ラムカ王だ、その王の部屋に突如一人の男が転移した。

 男は身長200cmの大きな男、髪は金色の短髪、鋭い目つきで瞳は緑色、だが左目には眼帯をしている、服装は黄色がかった布のダボっとしたパンツに草履のような履物、上は裸に白い布を巻きつけている、そして背中からは大きな白い翼が一翼生えている、片翼だ。

 その男は座って何か書き事をしているラムカ王の方に歩を進める、大きな体には似合わない流れるような歩き方で近づき、そして声をかける。


「久しぶりだなラムカ」


 男の存在に全く気付いていなかった王は、驚き顔を上げ、その人物を見上げる。

「はっ!驚かさないでください、これはレオファルハーム・スルーム、東の天使様ではございませんか、傷の方は癒えましたか?」


「この目だけは治りそうもないが、他は問題なさそうだ、かなりの時間を要したがな」


「そうですか、それで今日はどのようなご用件で?」


「あいつの体はどうなったかと思ってな、それと南の奴に動きはあったか?」


「天使様に言われた通り、北の地に人を使って封印しておきました、火の国には何も動きはないとの報告がきております」


「うまくいったか、他に何か変わったことなどなかったか?」


「はい、特にこれと言って報告するようなことはないかと」


「そうか、引き続き南の動きは警戒しておけ」


「はい」


「それとラムカ、そのうちグリーフ城を落としてもらうかもしれぬ、また連絡するがその時は任せたぞ」


「わかりました、いつでも出れるよう準備は進めておきます」


「また顔を出す」

 そう言って東の天使と呼ばれた男は消えた。


「ぷはぁ~何度会ってもあの方と話すのは息が詰まる」

 だがあの方についていればワシは安泰だな、このままエレクシアの王まで上り詰めてやるわ。

 先ずはグリーフか、グリーフ城を落とすということは、あの緑の大地を奪うということ、これはいいぞわしにもどんどんツキが回ってくるわ。

 こうしてはおれん、早速準備に取り掛からねば、ラムカ王は太った体で自分の部屋から嫌らしい顔で出ていくのだった。

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