第20話 国冒専用ダンジョン2

 天志達がダンジョンの中に入る、中は石で作った20畳位の薄暗い部屋になっていた、奥に扉が一つ付いている、それだけの部屋だ。


「コンニチハ、訓練生の皆さん、ここは初めてのようですねパーティーリーダーの方はドナタですか?」

 どこからともなくロボットが喋っているような声が聞こえてきた、天志がそれに答える。


「俺がリーダーだ」


「ソウデスカ、私はグリーと申します、お名前と、チーム名をオシエテいただけますか?ソシテ入り口に置いてある天の調べに血を一滴お願いします」


「はっ?また血かよ、俺はやだぞ」

 周りの目が冷たい


「イテェの嫌いなの」

 周りの目は冷たいまま誰も何も言わない


「ああぁ、もうわかったよ、やるよやる、天草天志、黒の契約者のリーダーだ」

 ぶっきらぼうにそう言うと天の調べの前まで行き、咲に手を差し出す。


「私にやってくれってこと?」


「優しくやってくれ」


「ふふ、天志も可愛いところあるじゃない、いくわよ」

 チク、咲は天の調べの横に置いてあった針で天志の指を軽く刺した。


「いってぇー、だめだやっぱりいてぇ、リーダーになんてなるんじゃなかった、なる気はなかったけど」

 そう言いながら天志は一滴血を落とす。


「確認完了シマシタ、ヒース様からのご紹介の方ですね、1階からのご案内にナリマス、奥のドアからご入場クダサイ、地下1階から5階までの制限時間はワンフロア3時間になっております、制限時間を過ぎますと救助プログラムにより強制的に地上に戻されますのでアラカジメご了承ください、それではお気をつけていってらっしゃ~い」


 天志達は最後だけやけにフレンドリーに送り出された、樹神が奥の扉を開くとすぐに地下への階段があり、五人は下へと下っていく、5mほど下るとまた扉がありⅠと印がある、その扉を開くと石造りの幅5m位の道が先が見えないほど続いていた。


「とにかく先に進めってことだよな」

菊之助がそう言いながら歩きだし、皆が菊之助についていこうとするがかなめが声をかける


「みんなちょっと待って、スキャン・・・先に何体か魔物っぽいのいるよ」

 かなめは先ほどヒースから中に入ったら一回スキャンを使えと教わっていた、それを今使ってみたのだ。


「かなめ居るってどこにいるんだよ、全然見えねぇぞ」

 菊之助が目を凝らしても何も見当たらない一本道だ。


「20mくらい先の壁の中かな?何かいるみたいなんだよねっ」


「壁の中ってどうするんだ」

 天志も迷う。


「ふふふ、見ててね、いでよ美雷、コダマン行きまーすっ」

 樹神が軽く走りながら美雷を手に取り、かなめの言った手前辺りで地面を叩いた、すると五本の地雷が壁に延びバチバチィと音を立てた、その音がした五か所から霧がでる。


「気配が消えたよ、多分樹神ちゃん倒しちゃった」

 皆驚いている、天志だけは羨ましそうだ。


「師匠スゲー」


「ふははははっ」

 樹神は両手を腰にあておかしな笑い方をしている。


「壁の中と言うより、壁の色に擬態していたみたいね」

 すぐに咲が分析する。


「どうする?とにかく進むか」


「天志はホント適当ね、とりあえず一列で行くわよ順番は、菊、かな、私、樹神、天志の順番ね、かなはとにかく敵を見つけたらすぐに教えて、菊は壁よ」


「おお、壁を警戒すればいいんだな」


「敵からの攻撃は全てその身で受け止めなさい、天志は後ろを警戒しながらついてきて頂戴」


「わかったよ咲ねぇ」「そっちの壁かよ」「了解」「コダマンは?」


「樹神は私が指示をしたら地雷をお願い」


「うん、わかった」


「皆武器は用意しとくのよ」

 全員が武器を呼び、菊之助を先頭に警戒しながら歩き出す・・・


 歩いても、歩いても、かなめのスキャンに反応はない、それでも警戒しながら1時間ほど歩くと変な模様とⅡの印が書かれた扉が見えてきて、そのまま扉についてしまった、ヒースが言っていた地上に戻る模様とは、扉に書かれているもののようだ。


「着いたぞ、何もなく着いたぞ」

 菊之助が拍子抜けしているが、菊之助だけではなく全員がそんな感じだ。


「多分警戒を怠るなってことね、ヒースが3階まではレベル10で余裕だって言ってたから、本当に基礎中の基礎の階層みたいね」


「なぁ、さっさっと次行こうぜ、俺早く強くなりてぇんだ」

 天志が急かす。


「そうね、次行きましょうか、でも気を抜かないでこのままの隊形で行くわよ」

 菊之助を先頭に地下2階へと下りていく、もう一度Ⅱと書かれた扉を開けるとまた同じような一本道だ。


「さっきと同じじゃねぇか、チャチャっと行こうぜ」

 菊之助がなにも警戒せずに歩きだす、そして床の石畳の色が少し違う場所をバカみたいに踏む。


「菊っ」

 咲が呼び止めるがもう遅い、5cm程の小さな火の玉が横の壁から飛び出し菊之助の右腕に直撃した。


「うわっちぃ」

 たいしたことはなさそうだ。


「本当に菊はバカね、気を抜くなって言ったでしょ、多分ここはトラップの基礎を覚える為の階層みたいね、実際の戦闘だったら、菊はもう戦線離脱か、さよならだったわね」


「バイバイだねキク肉マン」


「そんなにせめるなよ咲」


「責めてるんじゃないわ、気を抜くなって言ってるのよ、実戦だったら死ぬかもしれないって言ってるの、そう言う立場に私達は居るってことを自覚しなさい、心配してあげてるんだからもう少ししっかりしなさいよ」


「悪かったよ咲、お前を置いて先に逝ったりしねぇから安心しろよ」


「本当にわかってるの?菊は一回逝って戻ってくればいいわ」


「なぁかなめ、敵の反応は?」

 天志が尋ねる。


「全然だよ天志君」


「じゃトラップ警戒しながら進むか」


「そだね」


「一度発動したトラップはもう発動しないみたいね」

 咲が菊之助の踏んだ少し色の違う石畳を調べながらつぶやく。


「トラップはかなのスキャンに反応しないんだよね」


「そぉ、でも二度目はないみたいだから菊に一度発動してもらって、私達はゆっくり行きましょ?逝きなさい菊」


「本気か咲」


「冗談よ、そんなの実戦じゃ使えないでしょ、この階は私が先頭を行くわ、私の後をついてきて」

 咲が先頭でトラップらしきものを避け、また1時間程進むとⅢの扉に着いた、この扉にも先程と同じ模様がある。


「魔物を倒してないのに今レベルが上がったわ、それにトラップスキャンの魔法を覚えたみたい」


「戦わなくてもレベルは経験で上がるってことか」「そうみたいね、それしか考えられないわ」

 天志の言葉に咲が答える。


 そのまま地下3階に下り扉を開ける、また同じ一本道だ、だが今度はかなめのスキャンに反応があった、数体の敵がいるみたいだ、そして咲も覚えたてのトラップスキャンでトラップを見つける。

 地下3階は上の階の応用みたいな階層だ、トラップを警戒しつつ敵を倒し進んでいく。


 五人は今下りてきた中で、一番難易度の高い階層を一番早くクリアする


「今日の目標はこれで達成だな、戻るか」

 天志の言葉に菊之助とかなと咲が同意する。


「コダマンまだまだ行けるよ」


「おっ、樹神は元気だな、俺もまだいけるぞ、行くか?」

 三人が二人を止めて戻ることになった、天志が一番に戻るのはヤダと言うので最初に咲が模様に触れリターンと唱える、すると咲の体がぼやけたと思ったら、ふっっと消えた、地上に転移したようだ他の全員が同じように地上に戻る

 

 天志だけは最後までビビっていたが意を決してリターンと唱えるのだった。


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