第17話 キングゴブリン討伐クエスト

 天志達は宿屋百合の花の前でヒースからクエストの説明を受けている。


 ヒースの持ってきたクエストはキングゴブリン討伐クエストだ、今いるグリーフ城から西に少し行った所に森があり、そこにキングゴブリンが居座っているらしい、キングゴブリン一匹ならそこまで大したことはないが、キングゴブリンは群れを作る、ゴブリンも群れる習性はあるが、キングゴブリンがいると統率がとれていてより厄介な集団になる。

 今回はキングゴブリンを倒し、回りのゴブリンも一掃すると言うものだ。


 ちなみにリンは天志達が寝静まったころ、ヘトヘトになって天志の部屋に帰ってきた、天志が根拠もなく大丈夫と言ったが大丈夫じゃなかったらしい、そう迷子だ。

 リンは天志にヒドイとむくれていたが、そもそも何時にどこに集合などの決め事もなく、酒場で別れたのでどうしようもない、ヒースはというと、何食わぬ顔で天志達の部屋で眠っていた。


「今日は五人でこのクエストをやってもらう、俺も一応ついては行くが手を出すつもりはないからな、そのつもりでいてくれ、他に何か質問あるか?・・・なさそうだなじゃ行くか、天志これクエストカード、お前が持ってろ、お前の名前で受注してあるからな」


「人の名前で受けれるのかよ?」


「普通は無理だな、俺はこう見えて顔がきくし、そこそこ信用もあるわけ」


「へぇー結構すげーんだな、よしそれじゃ行くか」

 天志達は六人と一匹で西の森に向かう、30分も歩けば目的地の森が見えてきた。

 リンは寝不足のせいか天志の頭の上で眠っている。


「それじゃここにいるゴブリン全滅させちゃって」

 ヒースの軽い感じの合図でクエスト開始だ、そんなに大きくはない森だが、それでも5㌶はある、何処にいるかもわからないゴブリンを探すのも大変そうだ。


「おっちゃん見てろよ俺がドバーとやってやるからよ」「ヒーちん見ててねコダマン強いから」

 菊之助と樹神がヒースに意気込む。


「おっちゃん、ヒーちん」

 はぁ~、とヒースがため息をはく、すると天志が


「菊、樹神少しは年配の人に敬意を払えよ、さんぐれぇはつけろ、なぁオッサン」


「はぁ~~、どれも変わらねぇよ、好きに呼んでくれ」


「天志、俺にも敬意を払え年上だぞ」「ヒーちんでいいって」


「低レベルな争いね、行くわよ」

 咲の一言で皆駆け出す、リンが天志の頭から飛び降りる。


「お~いまとまって動けよっ」「みんな頑張ってね~」


「わかってるよ」

 五人で森の中心部に向かって走る。


「早速いるわよ、うじゃうじゃと」

 かなめがそう言うと皆武器を呼ぶ、かなめは察知能力が高いようだ、20mは離れた場所に樹神サイズ110㎝位のゴブリンが何匹もいる、手には皆木の棒だったり、鉄の棒を持っている、中には剣を持った奴までいる、森の中で肌の色が緑色なので見つけずらい。


 天志が掌に力を込めて呼ぶ

「来いよ黒(コク)」


 樹神が右手を腰の辺りにまわし呼ブ

「いでよ美雷(ミカズチ)」


 菊之助が左肩に手を当て呼ぶ

「出ろっ斬紅(ザンク)」

 菊之助の武器は片刃の斧だ、刃先が真っ赤な色をしている、先端は尖っている為突くこともできそうだ。


 かなめが左胸に手を当て呼ぶ

「おいで虚空(コクウ)」

かなめの武器は弓だ、70㎝位の小さな弓、羽のような綺麗な装飾がされているが特に変わったところはない。


 咲が左手を腰の辺りにまわして呼ぶ

「来なさい孔雀(クジャク)」

咲の武器は扇子、鉄扇だ、戦えるんですかそれで?ただ扇子の持ち手の部分には鞭のような長い紐が垂れていて、その先端に丸い球がついている。


「まずはかなから行くよ」

 かなが弓を弾くとヒュ~っと風が集まり矢ができた、風で出来た矢だ、かなめが手を離すと風の矢が飛んでいき一匹のゴブリンの眉間に突き刺さり霧にした。


「かなカッコいいねそれ」

 樹神が目を輝かせている。


「きゃ樹神ちゃんに誉められた」

 かなは本当にうれしそうだ。


「俺らも行くぞ天志」

 菊之助に促され天志も一緒に走り出す、菊之助はとにかく力で斧を振り回しゴブリンを霧にしていく、一方天志はコツをつかんだのか綺麗な太刀筋でゴブリンを霧にしていった。


「あの二人で全部やれそうね、勝手にレベルも上がってるわ」


「かなも上がったよ、楽でいいね」「キク肉マンも強いね」


「あっ!」

 かなめが声をあげた、一匹のゴブリンが鉄の棒を菊之助の後ろから投げつけようとしている、菊之助はそれに気づいていないようだ。


「菊は誉めたそばからこれねっ、注意力が足りないのよ」

 そう言うと咲は扇子を一振りする、するとゴブリンが投げた鉄の棒が手を離した瞬間に地面に落ちた、咲が扇子の風で鉄の棒を落としたみたいだ、そのまま扇子に付いている鞭でゴブリンの頭をバチンと叩き霧にする。


「咲もカッコいいね」

 樹神が扇子をシュシュッとふる真似をする。


「ありがとっ」


 その後も、天志と菊之助で次々とゴブリンを霧にしていく、その後を樹神達が歩いてゆっくりついていく、しばらくすると森の中心部に開けた場所を見つけた。

 真ん中に木や草で作った大きな椅子があり、そこに一際でかい、縦にも横にもでかいゴブリンが座っている、石で作ったでかい棒を左手で持ち、「ギィギィー」と言いながら右手でゴブリンに指示をだしている、あれがキングゴブリンみたいだ、天志達の襲撃に慌てているようだ。


「どうする天志?、このまま突っ込むか?」


「ああ、余裕だろ」


「はぁ~脳筋が一人増えたのかしら」

 咲が二人を止める。


「二人でも何とかなると思うけど、もう少し効率ってものを考えなさい、それにあのキングゴブリンが想像以上に強かったらどうするつもり?少し作戦立てるわよ」


 天志達は咲の言うことに従い、キングゴブリンがいる丸く開けた場所から少し離れた位置で身を隠す、キングゴブリンを中心にゴブリン達が周りを取り囲んでいる、簡単な陣形だが他のただのゴブリンよりは頭を使っているのがわかる。


「この作戦でいくわよ、わかった?」


「了解」「おう」「任せて咲ねぇ」「コダマン了解」


 作戦は決まった。


「それじゃ皆位置について、私の攻撃が合図よ」

 咲の作戦に従いそれぞれが指定の位置に着く、そして咲の合図を待つ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る