第16話 チームリーダー

 リンとヒースがこれからの話をしている時、天志達はギルドに向かっていた。


「へぇーコレがこの町のギルドか、ハパールより全然でかいな」

 ハパールの町のギルドも大きかったが、グリーフのギルドは更に二回り以上大きかった。


 エレクシアで一番一般的な職業は冒険者だ、飲食店や武器屋など自営業の人、兵士など城に努めている人などもいるが、たいていの人はギルドからクエストを受けて、それで生計を立てている。

 自営の人でも、冒険者時代の貯えをもとに何かお店を出す人が多い。


 ギルドはエレクシア最大の金持ち企業だ、上の人間はかなりの金と権力を持っている、コレが私企業だったらとっくにエレクシアはギルドの物になっていただろう。

 幸いギルドは公企業なので、ギルドが潤えば国が潤う、その為、その国のお抱え冒険者がいる、国家直属冒険者、国冒(コクボウ)などとよばれる、そういった冒険者はクエストなどをこなさなくても、国からお金が支給される、その代わり国からの要請には絶対参加しなければならない。


 国冒は国同士の力の見せあいにもつかわれ、危険度の高いクエストを五大陸同時に出し、どの国の国冒がクリアしたかなどで力を見せ合ったりしている。

 自分の国にどれだけ有能な冒険者を引き入れられるかも、その国のギルドの力量が試される仕事の一つだ。

 その為ギルドにはスカウトマンが数名いるらしい、たまに他の国の国冒を引き抜いたりするが、あまり何度も国を変えていると信用を失い、どの国からも相手にされなくなるので、国冒は一度決めた国からはほとんど動かない。


「すいません、パーティー登録したいんですが」


「こんばんわ、こちらのギルドは初めてですよね?」


「はい、俺は初めてです」


「受付のティアと申します今後宜しくお願いします」

 受付だけでも十人はいる。


「お願いします」


「パーティー登録ですね、それではパーティーを組むかた全員の血を一滴こちらにいただきたいのですがよろしいですか?」


 天志以外は皆二つ返事で返したが、天志だけは嫌そうだ。


「どうしても、血は必要なんですか?」


「はい、血は偽造防止のため絶対です」


「テンテンこわいんだよね」


「恐くねぇよ、痛みにちょっと弱いだけだ」


「あら、これからの戦いが心配ね、大丈夫かしら」


「やるよ、やればいいんだろ、チャチャっとお願いします」

 他の四人はすでに、血を一滴スキルブックの時と同じお椀状の物、後からリンが天(アマ)の調べという器具だと教えてくれた物に垂らしていた。


「では失礼します、チク」


「いってぇーーー」

 四人が笑っている、ホントに痛いんだよチクショウ。


「それではパーティー名はどうしますか?」


 名前が必要とは知らなかった五人がどうするかと悩みだす


「コダマン戦隊は?」


「駄目だ」

天志に即却下された


「チーム天志でどうだ」


「却下ね」「センスないねぇ天志君は」「ダサダサだねテンテン」「師匠と変わらねぇよそれじゃ」

 全員に否定された、菊之助の師匠って誰?と皆が思ったが誰もふれない。

 その後も男達が自分大好きな名前を挙げるが一向に決まらない。


「もう、全然決まらないわね、私達は皆悪魔との契約者なのだから、黒(クロ)の契約者って言うのはどうかしら?」


「悪そうでいいなソレ」


「かなも咲ねぇに賛成」


「俺は咲が決めたことには反対しない主義だ」


「黒の契約者戦隊がいいけど、仕方ないからいいよ」


「なら決まりね」

 全員が頷き、天志がティアに伝える。


「えっと、黒の契約者でお願いします」


「黒の契約者ですね、パーティーリーダーはどなたがなられますか」


「えっと」「天志君」「天志ね」「テンテン」「天志だな」


「ちょっ」「かしこまりました」

 決まった、一瞬で天志がリーダーに決まった、ティアが光る紙のようなものに何か書き込んでいく。


「お待たせしました、パーティー登録は完了です、念の為スキルブックを確認していただけますか?」


 天志は自分のスキルブックを見る。

 天草天志 17歳 黒の契約者☆ ギルドランクC レベル10 HP116 MP1

 パーティー名が追加されている。

 

「パーティー名入ってました」


「大丈夫そうですね、パーティー名の後ろに☆マークが付いてる方がリーダーになっております、他には何かございますか?」


「他はないです」


「そうですか、それではまたよろしくお願いいたします、お気をつけて」


「どもっ」


 天志達はギルドで想像以上に時間がかかり、最後の自由と言われた時間はほとんどなくなっていた、その日は咲達の泊まっている宿屋で一泊することにした。


「なぁ、リンちゃんとヒースのおっちゃんはどぉするんだ?」

 菊之助がギルドを出るときに聞いてきたが、誰も知らない。


「そうね、ギルドでパーティー登録しろしか言われてないものね」


「リンは大丈夫だろ、あいつ何でも知ってるから、適当にやってればそのうち現れるさ」

 天志の何の根拠もない一言で五人は咲達の泊まっている宿屋百合の花に向かう。


「部屋は男と女で分けるわね」


「ああ、そうしてくれ」


「俺は今まで通り咲達と一緒がいいんだけど、仕方ねぇな」


「あっリンは頭数に入れなくていいと思う」


「あら、そうなの?私達の部屋は三人分払ってあるからどうしようかしら」

 菊之助が咲の元に行こうとするが


「樹神ちゃん、かな達の部屋に泊まる?」


「うん」


「咲ねぇいい?」「もちろんよ、樹神一緒にお風呂入りましょ」


「うん、お風呂入る、コダマンが咲あらってあげるね」


「あら、優しいのね樹神は、お願いするわ」


「うん」

 男二人がうらやましそうだ。


「それじゃまた明日」


「はいよっ」

 こうして二部屋に別れて天志達は眠りにつく、明日から本格的な修行が始まる。

 言うまでもないが、別れ際樹神は、天志達に向けてグフフと笑って咲達の部屋に入っていった。






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