第14話 エスコート

 15時を知らせる鐘の音が鳴り止む。


 それと同時にリンが天志達を見つけ声をかけた。


「テンテン、もう来てたんだ、待った?」


「いや、俺も今来たとこ」


「リン~テンテン迷子になったんだよ~、コダマンが道教えてあげたんだっ」

 天志に肩車してもらっている樹神が速攻リンにばらす。


「おい樹神、迷ってねぇって言っただろ、降ろすぞっ」


「やだっ」

 樹神は天志の頭にしがみつく。


「そっそうなんだ、コダマンすごいね~」

 リンは自分も城で迷子になっていたので何も言えない。


「へへへっ」


「リンが迷っちゃったらコダマンお願いね」


「任せてリン、テンテンより頼りになるよ、ふふ」


「ダ・スルーム俺を紹介してくれないのか」

 少しの間待っていたが一向に紹介する気配がないので、ヒースは自分から切り出した。


「あっごめんごめん、テンテンコダマン紹介するね、この人ヒース、お城で見つけたんだ、みんなの先生になってもらったから宜しくね」


「おいおい、ダ・スルームそれじゃあ拾ってきたみたいじゃねぇか、もう少しまともに紹介してくれよ、何かカッコがつかねぇがまぁいいか、俺はヒース・アレサンドロ、この猫になっちまった悪魔様とは古い付き合いでね、今さっき偶然城の方で会ったんだ、それでお前らに戦闘ほか諸々教えてほしいと頼まれてな、俺に教えられることは全て教えるつもりだ、これから宜しくな、それから最初に言ってお」「あっ!」


 ヒースの自己紹介をリンが遮る。


「どうした?」

 やれやれと言う感じで、ヒースが訪ねる。


「あそこっ、見つけたよ、あそこに居る女の子二人と男の子一人の三人組、リンと契約した子達だよ、テンテンとコダマンの仲間だよ」


「ホントかリン」


「うん、ちょっと行ってテンテン話しかけてみて」


「わかった」


リンに促され、三人と一匹が三人組に近づき声をかける


「ねぇねぇおねぇさん達トレンディだね、コダマンと泥団子作らない?」

 天志の頭の上から樹神が話しかける、いきなり樹神が話しかけてしまったので天志はタイミングを見失う


「きゃ、何この子超かわいいんだけど、ボクそれはナンパかな?」


「うん、ナンパだよ、コダマンマセガキなんだっ、コダマンの彼女にならない?」


「やだ~ホントカワイイんですけど~」

 樹神に食いついたのはかなめと呼ばれていた女の子だ。

 黒髪のショートカット、目はぱっちりとしていて可愛らしい、身長は155㎝、ブレザーの様な服を腕まくりしている、下はかなり短いスカートでニーハイにヒールの低い靴を履いている。


「あの~すいません、最近自分のこと悪魔とか言ってる奴と契約なんかしました?」

 出鼻をくじかれ天志が変な質問をする。


「うおっ悪魔ってあんた達、俺らと同類か?!」

 質問に答えたのは菊と呼ばれていた男だ。

 モヒカン頭で髪の毛は染めているのか真っ赤だ、目は鋭く細い、身長は193㎝、裸ベストに麻っぽいパンツ、ベストからはすごい筋肉が見えている、足元は!えっ!裸足です。

 

樹神、こういうのをトレンディって言うんだぞ。


「そうみたいね、ねぇもしかして、その頭の上の子も私達のお仲間かしら?」

 最後に質問してきたのが咲と呼ばれていた女性。

 少し茶色い長い髪を後ろで一本に縛っている、目は鋭いが奇麗な二重で眼鏡をかけている、身長は166㎝、ブラウスを胸元が見えるくらいはだけて着ている、下はスリットの大きく入った黒のロングスカートにヒールの高い靴、スリットからは網タイツが見えていた。


「ああ、樹神も契約者だ」


「そんな子供なのに戦えるの?戦わせるの?」


「コダマン強いから大丈夫だよ、へへ」


「戦いの中で私は面倒見れる自信がないわ、相手が強くなればなるほどに、それでもその子を連れていくなら、そこのイケメン君、あなたがちゃんと責任を持ちなさい」


「おう、任せろよ咲、俺がちゃんと面倒見るからよ」


「菊、私が言っているのはあなたじゃないわ、幸せな脳みそね、そこの髪を縛ってる子に言ってるの、約束できる?」

 イケメンという言葉に反応した、菊と呼ばれていた男が膝を抱えている。


「ああ、約束する、それに本当に樹神は強ぇんだ、今は俺より強い、今はなっ」


「テンテンよりコダマン強いよ」


「それは俺も約束する、この子に何かあれば俺が必ず守る、それより皆さんよぉ、立ち話もなんだから、自己紹介もかねて、あの店で一杯やらねぇか」

 ヒースの言葉で皆近くの酒場に場所を移すことにした。


「テンテン降ろして」「おお」

 天志が樹神を降ろすと樹神はかなめと咲のところに向かっていった。


「おねぇさん、んっんっ」

 樹神はかなめと咲に手を差し出す。


「えーー手つないでくれるのっ」「かなめの言う通りカワイイ子だね」

 私も出来る限りは守らせてもらうよ。


「うん、エスコートって言うんだっ、ふふふ」

 エスコートしているようには見えないが、樹神は手をつないで酒場に向かうその途中で振り返り天志に向かって「ぐふふ」と笑顔を見せた。


 天志はそれを見て思った、やるな樹神すぐに巻き返すからな。


 そしてもう一人樹神を見ていた男がいた、スゲーなあのチビ、俺が頑張ってもダメだった咲をこの一瞬で、しかも二人落としやがった、師匠と呼ばせてもらいます。


 樹神は知らないうちに弟子ができた。


「ねぇねぇテンテン、リンを早く紹介してよ、例の悪魔ですって猫だけど」


「わかってるよ、樹神のせいでペースが乱れただけだ、酒場に着いたらな」


「うん」


 こうして三人の仲間と、ヒースと言う先生ができた。


 今日は大収穫だね、まずは全員見つけないと、やらなきゃいけないことが山積みだけど、今度ヒースの知恵を借りようかな、大丈夫必ずやれる、ううん必ずやる。



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