第13話 肩車
リンは一人グリーフ城に来ていた、城への検問所からのちゃんとした入城ではない、霊体ということもありお忍び入城だ。
もちろん天志達が来ると言えば、検問所を通り入城するつもりでいたが、リン一人ならその必要もない、逆にその方が色々面倒臭いことになりそうだ。
あれーパウロの部屋どこだったっけ?
そしてリンは迷っていた。
城の上の方だったと思うんだけど、リンは記憶を頼りにパウロ王の部屋を探すが、リンはドジだ、あまりあてにならない、3階まで上がったところで、リンは足を止める。
そこには大きなガラス張りのドアがあり、そこを出ると城下町が見える広いバルコニーがある。
そこに懐かしい気を感じバルコニーへと出る、そこには全部ではないがリンの現状を理解している、数少ない人間が腰かけていた。
「ヒース」
「!誰だ!隠れてないで出てきなよ」
「ここだよヒース」
「な~んてなっ、わかってるよ、ダ・スルーム、懐かしい気を感じたからこの大陸に来てるのかと思ったら、こんなに近くにいたのか、力使ってねぇにしたって、ここまで寄らないとわからねぇとは、随分弱くなっちまったな、それにしばらく見ないうちに猫になったのか?」
ヒースと呼ばれた男が立ち上がり振り返る、身長は180位、肩より少し短いウェーブのかかった赤茶の髪、涼しげな眼には似合わない、こめかみから顎の辺りまで入った深い傷跡、高そうな胸当てのわりに安そうな麻のパンツにロングブーツ、紺色のマントを付けて、腰にはまた高そうな剣を吊るしていた
「猫になったんだよ、それよりヒースがここまで来ないと気付かないのは好都合だね、まだあいつには居場所バレたくないし、で、ヒースは何してるの?日向ぼっこ?」
「ダ・スルーム俺は一応あんたの為に動いてたんだぜ、日向ぼっこ?はないだろっ、一応今日もあんたのことで国王に会いに来たんだが、あいにく明日だか明後日の大穴調査の会議で忙しいみたいでな、国王待ちしてるとこだ」
「そっか、ごめんね」
「で、あんたは何しに来たんだい?」
「パウロに現状の確認と、リンが連れてきた子達の先生がいないかなと思ってね」
「リン?ああぁリンダルスームビシャレトアからのリンか」
「うんカワイイでしょ、リンが連れてきた子の一人が付けてくれたんだ」
「大方あんたの名前が長くて覚えられないとか言う奴だろ」
「うん、間違ってないね、でもリンは気に入ってるんだ、ヒースもリンでいいよ」
「遠慮しときますよ、ダ・スルーム、そうじゃなくてもあんたに対して礼儀がなってないと国王からドヤされてるんだ、リンなどと呼んだら何と言われるか」
「パウロは固いからね」
「あのくらい固くないと国王なんてやってられないんだろ」
「そうかもね、それとヒースがいるなら話を聞くのはパウロじゃなくてもいいね、後ヒース、あの子達の先生もお願い」
「そう言うと思ったよ、どうせあんたにヤダと言っても無駄だからな」
「よろしくねヒース」
「ダ・スルーム、あんたには沢山の借りがある、返しきれるかわからないがお供させていただきます」
「貸しなんかないけどね、あっヒース時計持ってる?今何時」
「14時半になるが待ち合わせか?」
「15時に噴水で待ち合わせなんだ、ヒースはパウロに会ってく?」
「予定してたわけじゃないからな、俺もあんたがいるならまたでいいさ、マーキングはバルコニーにしてあるしテレポでいつでも来れる、あんたも来たけりょ俺に言えばすぐ連れてきてやるよ、今の力なら四人までなら飛ばせるぜ」
「へぇー、まだ強くなってるみたいだね助かるよ、今までテレポ使う必要があんまりなかったから、マーキングしてないんだよね、一人でも来れるようにリンもここにつけとこっ」
「あんたがマーキングはこまめに付けとけって言ったんだぞ、そう言うとこ変わらねぇな」
「そんなこと言ったっけ?」
「ああ、言ったよ、噴水だっけ?ボチボチ行くかい?」
「うん」
リンはヒースと共に噴水へと向かう、世界中飛び回っているヒースが、今どこにいるかもパウロに聞くつもりでいたが、本人と出会うことができたのはリンにとって大収穫だった。
「ダ・スルーム何人見つけたんだい?」
「まだ二人なんだよね、みんなグリーフに向けて送ったつもりなんだけどね」
「そっちじゃなくて十六人見つけられたのか?」
「ううん、九人だけ」
「そうだったか、残念だ」
「うん」
「で、戻ってからここは探したのか?」
「ううん、着いて直ぐにお城に来ちゃったからね」
「なら何人か見つかるかもな」
「そうならいいけどねっ、それと皆にはまだ何も話してないから、そこのところ宜しくね」
「了解」
その頃天志は迷子になっていた。
ヤバいここどこだ?何も考えないで歩き回ったからな、戻り方がわからねぇ。
「テンテンそろそろ戻った方がいいんじゃない?」
「お、おう、そうだな・・」
「ねぇテンテンさぁ、迷子でしょ?」
「はっ!何言ってんだよ樹神ぁ、わかってるよ戻るぞ、こっちだ」
「そっちはお城に行く道だよ」
「あ、そうだったな、こっちだったわ」
「そっちはギルドの方だよ、もぉ連れってってあげる、その代わり肩車してね」
「迷ったわけじゃねぇからな、ちょっと忘れただけだ、ホラよこれでいいか」
天志は言い訳にもならない言い訳をしながら樹神を肩車する、城下町だけあって人の数はすごい、回りには両親と手をつないでる子、おんぶされてる子、肩車されてる子など沢山の家族連れもいる、樹神はまだ六歳だ、それを見て少しうらやましくなったのだろう。
「へへっ、テンテンそこの道左曲がって、しばらく真っすぐ行って」
樹神の指示に従ってしばらく歩くと噴水までたどり着いた。
何だコイツ、ホントに六歳児か?ちょっとハイスペックすぎねぇか、まっ、助かったけど。
「リン見えるか?」
「う~ん、見えないよ」
「このままこうしてれば向こうが気付くだろ、つーかこんだけ人がいる中で、猫探すのは無理だろ」
「コダマンずっとここにいる」
「ああ、そこにいていいぜっ、もし見えたら教えてくれよ」
「わかったぁ」
丁度15時を知らせる鐘が鳴り響いた。
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