第9話 グリーフの大穴
「うわ!でっけー穴だな、落ちたら死亡確定だな」
天志達は魔物を倒しながら、倒しているのは天志だけだが、クエストの目的地、グリーフの大穴についたところだ、そこには直径100mはある大きな穴があいていた、覗きこんでも下は見えない。
「テンテン気を付けてね、コダマンよりテンテンの方が落ちそうで恐いんだけど」
「気を付けてね~」
「俺はリンみたいにドジじゃねぇから大丈夫だよっ」
「ならいいんだけどね、それじゃテンテン魔物駆除よろしくね」
「がんばってね~」
「わかってるよ、穴の回りをきれいにすればいいんだろっ、よしやるかっ」
天志は一人、大穴の回りの魔物を倒し始める、リンと樹神はそれを座って眺めている。
「ハイ次っ、よっ、そりょ、ていっ、まだまだっ、おりゃ、」
天志は倒す、黒を振り下ろし、薙ぎ払い、突き刺す、とにかく目に留まる魔物を片っ端から霧にしていった。
「テンテン結構黒使いこなしてきたねぇ、目に見える成長は楽しいよ」
もうDランク程度じゃ素振りみたいなものだね、まぁ、最初から危なげなかったけど、太刀筋がよくなってるね、このままどんどん強くなってね、他の子達も同じように成長してくれていればいいけど。
「テンテンもなかなかやるね、でもまだコダマンの方が強いけどね」
「コダマン、リンちょっと穴見てくるけど一緒にいく?」
「ううん、コダマンここでお絵かきしてる」
そう言って樹神はパンダリュックから紙とクレヨンを取り出した
「そっか、コダマンなら平気だと思うけど魔物に気を付けてね」
「うん、リンも落ちないようにね」
リンは樹神から少し離れた場所で大穴を覗きこんでいる、思ってたほど進んでなさそうだけど、でもいつ何が起きるかわからないからちょこちょこ見に来た方がよさそうだね、「マーキングだけはしとかないと」そうつぶやくと、足のわりに長い尻尾を起用に使い、何かの模様を記した。
「うおりゃ、はぁはぁはぁ・・結構やったけどまだか?」
天志はクエストカードを見るが、淵の色はまだ白いままだ。
「はぁはぁ、まだかよ、つぎっ」
また切る・バシュ、切る・バシュ、切る・バシュ!ピロリーン、レベルが上がりました、切る・バシュ!シューーーンッ、バシュ!
「ん、何だ今の」
天志が振り下ろして切った魔物の、後ろにいた魔物まで霧になった。
「もう一回やってみるか」
バシュシューーーンバシュ!
「何か出たぞ、ちょっとリンに聞いてみるか」
天志は樹神が座っている所から時計回りに一周しながら魔物を倒していった、そして、もうリンがすぐそこに見える位置まで来ていた。
リンとの間にいる魔物をシュシュっと倒しながらリンの元まで行く。
「おいリン、何か出たぞ」
「あっテンテンおつかれ、で何が出たの?」
「黒から何かシューーンってでたんだよ」
「ちょっとあそこの最後っぽい一匹切ってみてよ」
天志は辺りにはもう一匹しかいなくなっていた魔物を切りつけた、魔物はすぐに霧となったがその後ろを半透明な風の刃が飛んでいき、天志から5mくらいの場所で消失した。
「テンテン風雅(フウガ)出てるじゃん、コダマンもテンテンもすごいね、風雅は奇麗な太刀筋してないと出ないんだよ、どんなに強くても、レベルが高くても太刀筋が綺麗じゃなきゃ出ないんだよ、今日魔物切りまくってたから、疲れで変な力がぬけたのかもね、魔物ももう見当たらないし、どおクエストカードは色変わった」
テンテンまでこんなに早く発動するなんて、やっぱりなくしていても沁みついてるのかな、これなら本当に期待できるよ。
「おお!青に変わってるわ、風雅か、何かいいじゃん、俺強くなってるじゃん」
「強くなってるよテンテン、お疲れ様今日はもう帰ろっか、疲れたでしょ」
「別に疲れてはねぇよ、体がだるくて腹減っただけ」
「そっか、じゃあご飯食べて早く寝よ、ギルドへの報告は明日ってことで」
「そうだな、そうするか、ん!樹神あいつ寝てるじゃねぇか」
「強くてもまだ子供だからねっ」
「そうだな」
もう日が沈みかけ、辺りは少し暗くなってきていた。
その時!いきなり地面の下の方から物凄い負の力、音はしていないが、ドンッと感じた瞬間自分の体が重い、剣を持って間もない天志ですらわかる、絶望的な黒いものを感じた。
「リン何だこれ?」
「テンテン早くコダマンのところ行くよ」
「お、おう」
天志達は樹神の元に駆け寄った、樹神はまだ眠っている。
「樹神抱いて逃げるか?」
「動かないでッもう無理だからッ」
この気はあいつだよね、何で?何でこんな場所にいるの?
徐々に・徐々に、黒い殺気が下の方から上がってくる。
天志はもう逃げろと言われても動けないほど、その気に飲まれていた。
どうする?リンが話せば何とかなる?ううん無理、どうしようもない、ただ時が経つのを待つだけ、今はそれしかできない、お願い・・・
物凄い殺気の正体が穴の中から顔を出した、徐々に上がってくる、黒い髪、黒い肌、黒い瞳、その瞳と天志の目が合う、その男は天志から目をそらさない、天志はそらすことができない・・・
そらしたくてもそらせない、体が恐怖で動かない、声も出せない。
男は天志と目を合わせたまま、なお徐々に上へ上へと上がっていく黒いマント、マントの隙間から真っ赤な鎧がみえる、天志はそれに気づかない、目をそらせないからだ。
リンも何もしゃべらない・・・
天志が男と目を合わせたまま、天志の顔が星を見る角度になったとき、男は一瞬リンの方を見て
次の瞬間!!!
消えた!!!実際には飛び去ったのだが、早すぎて天志には消えたように見えた。
辺りはもう日も沈み夜になっていた。
天志は身構えていた、条件反射で身構えていたが、自分が今どんな格好をしているかもわからず膝から崩れ落ち、深い海の底から酸素を求めて、求めて、上がった時のように息をした。
「ゼノン」リンが一言つぶやいた・・・・
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